342日目 おつかいポポル
342日目
リアが魘されていた。『もうそれ以上筋肉は入らない……!』って言っていた。ジャガイモ形筋肉を食べている夢を見たっぽい。何か割と普通でコメントに困る。
ギルを起こし、リアを盗賊担ぎして厨房へ。俺の肩に担がれている間、リアは全身の倦怠感と手足のしびれがあったらしく、ずっとぐでってしていた。あと地味に重くなってたけど、こいつもしかして太ったのだろうか?
マデラさんの指示はいつも通り。あ、ギルには『出来ればでいいから、薪割りを手伝ってくれないかい?』ってお願いをしていた。ギルのやつ、『いい筋トレになるっす!』って笑顔でポージングしていた。動じないマデラさんマジすごい。
その後は風呂掃除等諸々の仕事を済ませる。アルテアちゃんの風呂掃除っぷりもなかなかのものになってきて、にじみ出るオカンオーラもすごいことになっていた。フィルラド好みの太ももをさらけ出しながら『男湯は備品の扱い方がクソだ』って呟く姿は、なんかいろんな意味ですげえって思った。
ちなみに、今日の入浴剤はピーチ&レモンの奴にするらしい。『これくらいは自分の好きにしていいんだろう?』って聞いてきたので、『明日はオレンジの香りでお願いします』ってリクエストしておいた。
パレッタちゃん……っていうかヴィヴィディナの洗濯もいつも通り。『アレットさんとアレクシスさんの衣服からは、ママと同じくらいの色欲がにじみ出ています。これは大変素晴らしいヴィヴィディナの糧になります』ってパレッタちゃんは言っていた。ヴィヴィディナも狂喜乱舞して天井をカサカサ這い回り、『暴れるのなら外にしな!』ってマデラさんに拳骨を喰らっていた。
もちろん、ロザリィちゃんとイチャイチャしながら皮むきもした。ロザリィちゃん、明らかにナイフの使い方がうまくなっている。『いつか──くんに負けないくらいおいしいお料理を作ってあげるんだから!』ってマーヴェラスプリティスマイルを浮かべていた。そんなところがマジプリティ。
が、『すでに愛情たっぷりで、この世の何よりもおいしいよ』と囁いたところ、『……マデラさんとどっちがおいしい?』と聞かれてしまう。
超困った。さすがの俺でもこの質問には参る。
が、ロザリィちゃんに嘘をつくのは憚られたため、『美味しいのはマデラさんだけど、毎日食べたいのはロザリィちゃん』と正直に答えた。ロザリィちゃん、『……ありがと♪』ってほっぺにキスしてくれた。ちょうしあわせ。
マデラさんは『いったい誰に似たのやら……』ってため息をついていた。ため息をつきながらも手は高速で朝餉の支度をしているからすごい。あと、仕事中にイチャイチャしてるのにゲンコツしないとか、ちょっと丸くなったのだろうか?
朝餉はみんなでとる。ちゃっぴぃを膝に乗せ、久しぶりに『あーん♪』してやった。ちゃっぴぃも『きゅーっ♪』ってうれしそう。
『甘やかし方がそっくりだ』ってチットゥに言われたのでとりあえず呪ったけど、普通に無効化された。マジ残念。
書くまでもないけど、ギルは今日も『うめえうめえ!』ってジャガイモを喰っていた。ジオルドが『おい、ちょっとは遠慮ってもんを……!』ってギルを諌めようとしていたけど、悲しいかな、所詮はジャガイモ、こいつの三食分のジャガイモよりも夕餉の費用のほうが高かったりする。
午前中はいつも通りの仕事を行う。ジオルドとクーラスが自主的に宿屋の前の掃除をしてくれたのはラッキー。フィルラドはぐうたらしながらエッグ婦人のケツをヒナたちと一緒に追いかけていた。あいつマジクズじゃね?
あと、驚くべきことに、『ばーちゃん、俺になんか手伝えることある?』ってポポルが自ら手伝いを申し出ていた。なんか、パレッタちゃんに『世話になってるのに遊びほうけて恥ずかしくないの?』ってガチで煽られたらしい。煽られただけで行動に移すあたり、ポポルって子供だと思う。
ともあれ、『それじゃあ、ちょっとお使いに行ってもらおうかね』ってポポルはマデラさんから何やら言付かって外回りに出かけていた。なんか初めてのお使いに行く孫とそれを見守るグランマって感じがしたけど、優しい俺は何も言わなことにしておく。
午後も特に問題なく業務は進む。掃除も終わって暇だったのか、クーラスはのんびりと日の当たるところで裁縫をしていた。『ちょっとガチな飾り縫いをしてみたくなった』とのこと。実家でママから新しい手法を学んだらしい。
リアはそんなクーラスを俺の後ろに隠れてもじもじしながら見つめていた。マジでクーラスってロリコンの才能があると思う。『若いってだけでズルい……』ってルフ老は血涙を流していたよ。
夕方ごろ、ポポルが外回りから帰ってくる。なんか妙にほっぺが膨らんでいると思ったら、『よくわかんないけどいっぱいお菓子くれた』とのこと。どうやら、お使いに行った先々で飴玉だのなんだのといったお菓子をもらってきたらしい。
『ああ、たぶん、昔の──を思い出したんだろうねぇ……』とはマデラさん。そういや、俺も昔はお使いに行くたびにいろんなものをもらった気がする。ポポルはお子様だし、きっとそういうことなんだろう。
ちなみにお使いの結果だけど、『問題なし、問題なし、ちょっとあるかも、問題なし、ネズミ、あとなんかこれ渡しといてくれって言われた』とのこと。たまに見かける小袋もポポルの手にしっかり握られている。
『ありがとねぇ! 助かったわぁ!』ってマデラさんは笑顔だったけど、まあつまりはそういうことだろう。明日あたりはおそらく特殊業務だ。
宴会して風呂入って最後の見回りをして今に至る。連日連夜宴会をしているからか、フィルラドが『さすがに明日からはなんか手伝うぜ!』って言ってきた。せっかくなのでこき使おうと思う。
あと、今日の宴会芸はちゃっぴぃ&リア&ミーシャちゃん&エッグ婦人&ヒナたちに因るケツフリフリダンスだったことをここに記しておく。人選がいろんな意味で凄まじいことになっているけど、ルフ老の稼ぎの大半を巻き上げられるからやめられない。
ギルは今日も大きなイビキをかいている。ふと思ったけど、なぜ俺の枕が行方不明になっているのだろう。ベッドメイキングはリアのはずなのに。あの野郎、ヘマをこいたのか?
ギルの枕を抜き取ろう……と思ったけどギルの頭はデカくて重い。抜き取るのは割に合わない。夢魔のぬいぐるみも拉致られたままだし、いったいどうなってんだろうか。
まあいい、さっさと寝よう。ギルの鼻にはヒナたちの抜け羽を詰めてみた。おやすみ。




