340日目 男のジャスティス
340日目
なんかすんげえヤバそげに変質した小さな丸薬を発見。あとでナターシャの毒杯に入れてみようと思う。
とりあえずギルを起こして食堂へ。ぶっちゃけまだかなり早い時間だったけど、ギル相手に遠慮なんていらない。マデラさんからは仕事の指示として『いつも通りで。事前にその旨を伝えるならば、仕事を休んで友達と遊んでよろしい』と来たものの、やらないと落ち着かないので風呂掃除等いつものやつだけはやった。
あ、ちなみに、俺が朝の仕事をしている間、ギルは『ちょっと筋トレしてくる』って星空の下を駆けだしていったよ。いったいどこに行ったのかわからんけど、人様に迷惑をかけなかったことを信じたい。
そうそう、昨日は手伝ってくれたみんなだけど、今日はミーシャちゃんとお話でもしていたのか、割とお寝坊さんだった。『ご……ごめん!』って寝癖を直すのも忘れて慌ててかけてきたロザリィちゃんがマジプリティだった。
で、朝食。ミーシャちゃん、『とってもよく眠れたの! ウチの硬いベッドとは大違いなの!』ってご満悦だった。『ギルの筋肉とどっちが硬い?』って聞いたら、めっちゃ悩んだあげくに『……おなかのほうはギルのほうが固いの』って答えてくれた。ミーシャちゃんがそう言うのならそうなんだろう。
もちろん、ギルは『うめえうめえ!』ってジャガイモを貪っていた。『これだけおいしそうに食べてもらえると、こちらもうれしくなりますわぁ!』ってマデラさんもにこにこしていたけど、こいつはたぶんジャガイモならドブで蒸かしたやつでもうまそうに食べると思う。
さて、忘れちゃいけない朝の日課としてナターシャへの毒杯作りもやった。朝の丸薬をぶち込んでみる。『きゅーっ♪』ってちゃっぴぃがご機嫌だったため、ついでにあいつがチョイスした毒も追加しておいた。
なお、それをラッパ飲みしたナターシャは『なんかこれだけ食べちゃダメなやつ』と、んべって器用に舌の上にヤバそげな丸薬だけを取り除いていた。あいつの危機察知能力どうなってんだ?
午前中はいつもと同じように過ごす。冒険者どもの大半は出かけ、ミーシャちゃんやポポルなんかは日向ぼっこしてのんびり過ごしていた。マデラさんも何かの用事で出かけていたし、リアはベッドメイキング、ちゃっぴぃはロザリィちゃんと戯れていた。
ジオルドとクーラスものんびりしていたといえば、どれだけみんなだらけていたかわかるだろうか。いや、マジで学校での休日みたいな感じで書くことが全然ない。
午後の時間、冒険から帰ってきたルフ老が『やっぱり若い女子が待っている宿に戻るのは気分がいいのう……!』ってめっちゃ感動していた。よくよく考えてみれば、前まではリアしかいなかったのに、今ではリア、ちゃっぴぃ、ロザリィちゃん、アルテアちゃん、パレッタちゃん、ミーシャちゃん、エッグ婦人と女子率が凄まじいことになっている。
『ここは天国か……!』と装備すら解かずに見とれるルフ老。コレが巷じゃ大賢者とか呼ばれているってんだから泣けてくる。
『小さい子もよし、強気な子もよし、不思議な子もよし、そしてもちろん、ムチムチな子もよし……ああ、今からでも教師を目指すべきじゃろうか』って言いだした時、本気でこのクソジジイはここで始末するべきだと思ったね。こんな不健全すぎる理由で教師を目指そうとするとか、他の全ての教師の卵に土下座しなきゃいけなくね?
しかし、この言葉に妙にフィルラドが反応した。『……あんた、あんたのジャスティスは?』と、ルフ老に食って掛かる。ルフ老、一瞬のためらいもなく『尻』とだけ答えた。
二人して固い握手をしだした。こいつらマジで終わってんな。
その後も俺が掃除をする傍ら、フィルラドとルフ老は熱く熱く尻について語っていた。形がどうだとか、柔らかさがどうだとか、健康的な肉付きはたまらないだとか、ともかくそんな感じだ。
帰ってきたミニリカとナターシャが汚物を見るような目で……っていうか汚物を見ながら『あのクソどもを始末しろ』って言ってきたのが印象的。あと、マデラさんも『これだからあのクソジジイは夏季講師に行かせられなかったんだ』って言っていた。
よく考えてみれば、ルフ老はテッドやおっさんよりも知識面でははるかに上だ。でも、テッドもおっさんもクズだけど、少なくとも最低限の社会常識はある。ルフ老みたいに女子の尻をまじまじと見つめたり、撫でて尻の性格を言い当てたりなどはしない。
なお、『フィル、お前は止める側だろうが!』ってフィルラドはアルテアちゃんに思いっきり顔面をケツビンタされていた。
あの二人、学校で別れるときはすごくいい感じだったけど、あの後結局どうなったんだろ? いつのまにやら愛称呼びになっていたし、進展がなかったわけじゃないんだろうけど。『ごめんよ、アティ』って、アルテアちゃんがあんな風に呼ばれてるのなんかすごく違和感ある。
そうそう、『常識を考えろクソジジイ!』ってルフ老もマデラさんに腹部をケツビンタされていた。ルフ老、『ごフぅ……ッ!?』ってうずくまって悶絶していた。とても痛そうだった。
宴会して飲み食いしてる風呂入って今に至る。本当はもっと書くことはいっぱいあるけど、全部書いているときりがないのでこの辺にしておこう。
あ、仕事終わりにロザリィちゃんが『きょうもよく頑張りました!』ってお疲れ様のキスをしてくれたよ。本当に、ロザリィちゃんは俺を際限なく幸せにしてくれるから困る。いったいどうやってこれを返せばいいのか、まるで見当がつかないっていう。
ギルは今日も大きなイビキをかいている。なんだかんだでこいつも学校での一日と大して変わらない一日を過ごしていた。まあ、筋トレ以外をするギルなんて想像つかないんだけどさ。
明日も早起きしないと。とりあえず、ルフ老の抜け毛(たぶんあごひげ)をギルの鼻に詰めてみた。おやすみなさい。
あなたのジャスティスを語ってください。




