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322日目 冒険者の帰宅

322日目


 最高の目覚め。夢の中でロザリィちゃんが『寂しくしたりしてないかなっ?』って頭をポンポンしてくれた。しかも、ぎゅっ! って抱きしめてもくれた。あの蕩けるようなステキな笑顔が未だにまぶたの裏に焼き付いている。


 さらに、『ひとりだけおいしいものを食べるなんてずるいぞっ!』って夢の中で俺が持っていたクッキーを俺の手からぱくっ! って全部食べていった。で、『はい、あーん♪』ってその場でロザリィちゃんが焼いてくれたクッキーを『あーん♪』してくれた。


 もうね、マデラさんのと負けないくらいにおいしかったね。愛情がめっちゃ詰まっているの。もうそれしか書けない。一枚一枚からロザリィちゃんの甘いにおいがして、めっちゃ最高で、天国に来ちゃったかと錯覚したレベル……っていうかあそこが天国だ。


 夢の中でもこんなに俺を幸せにしてくれるなんて、やっぱりロザリィちゃんはマジプリティだ。


 今日も今日とて朝はあんまり人がいない。ひと際うるさいやつらが出かけているから当然と言えば当然。贅沢に三人でデカい机一つを陣取り、マデラさんが作ってくれた朝飯を食べる。ついでにミルクを腰に手を当てて飲んでやった。


 もちろん、リアにも多めにミルクを進めていく。『飲まないとミニリカやお前の母ちゃんみたいになるぞ』って言ったら、リアの奴は全力でミルクをがぶ飲みにした。遺伝に勝ることを強く願うばかりである。


 ……そういや、アレットってミルク嫌いだったっけ。案外信憑性もないわけじゃないのかもしれない。


 午前中はただひたすらダラダラとする。遊び相手がちゃっぴぃしかいないためたいそうヒマ。でも仕事はやりたくないし遊びに行く場所ってのもあんまり思いつかない。


 なお、リアはがぶ飲みしたミルクの影響でトイレにこもってしまった。『子供を煽るんじゃあない!』ってマデラさんにケツビンタされたのが解せぬ。


 そうそう、『週明けからは普通に働いてもらうから、それまで精々休みを楽しみな』とも言われた。なんだかんだで結構長い間休んでいたし、そろそろ働いても悪くはない気分。今すぐ働けって言ったら全力でノーセンキューだけど。


 昼食後もダラダラ。トイレから出てきたリアにケツビンタされたくらいしか特筆するべきことはない。あまりにも暇なのでちょっとばかりの魔法をリアに教えたけど、『まずは体から鍛えたい。魔法はあくまで手段であり、目的じゃないから』と、リアはさわりだけしか覚えようとしなかった。


 『誰の受け売りだ?』って聞いたら、超いい笑顔で『パパ!』と答えやがった。


 それは魔法の下手くそなアレクシスがよく使う言い訳だということを、俺は最後まで教えることができなかった。だって、あいつすんげえキラキラした瞳をしているんだもん。


 なんだかんだで夕方にはちょっと早いかな……くらいの時間に冒険者たちは帰ってきた。見る限り大きな怪我をしたものはいないようで、全員無事。マデラさんのホッとする表情を見られるのはこの瞬間だけだということを、俺だけは知っている。


 ただ、やっぱりチットゥやミニリカなんかに『ただいまのキスはしなくていいのかい?』ってからかわれたのが気にかかる。ちょいと腹が立ったのでちゃっぴぃのデビル・キスをプレゼントしてやった。意外とウブなミニリカは『ふにゅぅぅ……!』って赤面して座り込んでしまった。


 なお、ナターシャにもちゃっぴぃをけしかけたんだけど、『十年早いわ』って完全にレジストされた。逆にちゃっぴぃが赤面して『きゅ、きゅぅぅん……!』って腰を抜かす始末。どうやらちゃっぴぃのキスは相手の魔法耐性が高く、かつアバズレだとそこまでの効果を発揮しないようだ。


 で、旅装を解いたところでマデラさんと共に報告を聞く。なんでも、川の上流でいろんな規模の魔物が争っていたのは事実なんだけど、どの種の魔物も体の一部が中途半端に抉り取られていたそうな。


 生きているものも死んでいるものも、たいていが体を抉り取られていて(ものにより程度は違った模様)、何かに怯えるようにして互いに争っていたとか。


 『真面目な話、聞いたことのない現象じゃ。なんらかの新種の魔物が流入してきた、あるいは魔法現象が発生した可能性はあるが、いずれ推測にすぎん』と珍しくまともで頼れそうな感じがするルフ老が、『奇妙な気配は残っていたけど、それだけしかわからなかった』って相変わらず表情のよくわからないチットゥが教えてくれる。


 この二人でさえわからないとなると、ちょっと大きな事態になるかもしれない。『とりあえず生きてたのは皆殺しにしてきた』、『死体もしっかり処分しておいた』ってナターシャとアレットが言ってたから、当分は大丈夫だと思うけど。


 なお、テッドとヴァルヴァレッドのおっさんはしくしく泣いていた。何があるかわからないからって換金できる部位もナターシャにチリにされたらしい。


 だいたいこんなもんだろう。あ、夕餉の宴会は結構派手なことになっていた。マデラさん、昼間の間にかなり手間をかけて準備をしていたっぽい。言ってくれれば手伝ったのにと思ったけど、どうせ週明けには地獄に戻るから別にいいか。


 酔ったババアロリの相手をするのが非常に面倒くさかったことだけをここに記しておく。あいつ、絡み上戸と泣き上戸が入っているんだよね。あ、チットゥは今日もゲロったけど、幸いにしてテッドの膝の上だったから問題なし。


 寝よう。まともに全部書いていたら学校の宴会の倍以上の文章量になってしまう。今日はリアはアレットたちのところで寝るらしく、俺のベッドにはちゃっぴぃしかいない。おなかを冷やさないように毛布をしっかりかけてやろう。おやすみ。

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