31日目 基礎魔法概論:陣造の種類 【撃造】について
31日目
炎鬼の指骨が変質し異臭を発していた。魔法廃棄物としてゴミ出ししといた。
朝食はちょっと趣向を変えてフルーツサラダをチョイス。グレイシーグレープ、ホビットレモン、そしてめちゃくちゃうまいリンゴとまさにフルーツのパラダイス。たまにはこういうのもいい。ギルのヤツは『うめえうめえ!』って言いながらいつも通りジャガイモの大皿を平らげていた。ラーヴァベリーをこっそり混ぜたのに気付かず『うめえうめえ!』って食ってた。
あと、クラスの女子の髪と肌が(比喩表現で)輝いていた。なんかみんなすっげえ可愛くなってるの。中でもロザリィちゃんが半端なかった。『さっそくつかってみたよっ!』って笑いかけてきてマジで女神かと思った。ロザリィちゃんマジゴッデスキュート。
授業はシューン先生の基礎魔法概論。やっぱり今日もローブはズボンにイン。インするくらいなら着なければいいのにと思う。あと、昨日久しぶりに湖に釣りに行ったら魚の気が立っていてさっぱりだったとしょんぼりしてた。なんかごめんなさい。
で、代わりに図書館で『オークの瞳に恋してる~ハイエルフの俺がプリンセスオークのあいつと入れ替わってしまったあげくに許嫁になれと脅迫されている件について~』という本を半日ずっと読んでいたらしい。ふざけたタイトルの割になかなか濃くてしっかりした内容の名作だったそうだ。『素直になれよ、オークちゃん?』って決め台詞に痺れたとのこと。
『正気になれよ、先生ちゃん?』って心の中で突っ込んだ。気高きアルテアちゃんが興味を示していたのがちょっとびっくり。
授業内容は陣造の種類について。なんでも、今まで習った陣造や個人で行使する魔法陣は流造という魔力源から直接魔力が流入して陣型を作る方法を前提としていたらしい。つまり、魔力を流して作った魔法陣にさらに魔力を流して魔法を発動していたというわけだ。尤も、陣造の際に使用する魔力はあくまで呼び水のようなもので、指向性を持たせるだけだから消費はごくごく小さい。
今日教えてもらったのは撃造という、魔力の塊に外部的干渉を加えて押し込むことで陣型を作るという陣造方法だ。以下にその概要を示す。
『撃造とは生成された魔力の塊をなんらかの魔力的要因によって等価変形(ここでの等価とは処理後の魔力総量が変わらないことを指す)させることで所定の陣型を作る陣造方法である。撃造は魔力を圧縮するというその性質上、陣形成魔力の改質効果が期待される。すなわち魔力的偏向を一様にしたり、魔隙欠陥を直接押しつぶしたり、魔力密度を均等にすることで魔力そのものを改質し、これらの改質によって成形された陣の魔法的強度の向上を図ることができる。よって高淵性、高魔強度の魔法陣を陣造できるというメリットが挙げられる。
撃造の際には魔度に注意しなくてはならない。撃造魔度が高ければ魔力の変形抵抗が弱まるために撃造しやすくなるが、魔度が高すぎると魔力の過剰活性が起こり、魔法陣崩壊につながってしまう』
シューン先生は粘土の塊をイメージするとわかりやすいって言っていた。魔力と言う粘土を手で押し込んでいくことで魔法陣と言う人形を作るのが撃造らしい。だったら最初からそう言えばいいと思った。
あと、魔度は高ければ高いほど陣造そのものはしやすくなるんだけど、あまりに高いと話に合ったとおり魔法陣崩壊が起こるし、そもそもその前に高魔度に耐え切れず術者が死ぬ。だからこれはどちらかと言うと個人使用の魔法陣と言うよりかは魔道具なんかに刻む魔法陣の陣造の際に重要になるそうだ。
たぶん、その特性から円型魔法陣と相性の良い陣造方法だと思う。思いっきりインドア派のガチガチ研究タイプの魔法使いが多用するような知識だ。
頭がこんがらがって目がぐるぐるになってたロザリィちゃんが可愛いかった。そんなあなたもステキです。
で、夕飯食って風呂入って今に至る。このボロいガタつく机で日記を書くのにもすっかり慣れてしまったけど、ギルのイビキはいつまでたっても慣れそうにない。クラウドファンガスを鼻に詰めた。おやすみ。




