302日目 帰り支度
302日目
ギルの涙がヨダレ。意味が分からない。
ギルを起こして食堂へ。休日だけど、もうすぐここの朝食も食べられなくなるからか、わりといっぱい人がいた。ついでに、『好きなもんどんどん食べなっ!』っておばちゃんも腕を振るいまくっていた。
せっかくなので、俺も朝からエビフライと言うチャレンジスピリッツを見せてみる。『三本ください』って言ったら、『よし来た任せなっ!』ってマジでおばちゃんがエビフライを作ってくれた。揚げたてサクサクでちょうデリシャス。トーストでサンドしてエビフライサンドにもしてみた。
ちゃっぴぃも『きゅーっ♪』ってエビフライサンドの真ん中の柔らかくて一番うまいところをおいしそうにほおばっていた。最近……というか、けっこう前から俺の膝の上が定位置になりつつあるけど、そろそろ甘えんぼを卒業させるころあいだろうか?
あと、ロザリィちゃんが『テストお疲れさま!』って特製カフェオレを作ってくれた。書くまでもなくマジデリシャス。ロザリィちゃんの愛情がいっぱい詰まっていて最高。『そのかわり、一口ちょーだい♪』って俺の食べかけのエビフライサンドにかじりついてくるところとか、犯罪的な可愛さ。
ギル? あいつは実にうまそうに『うめえうめえ!』ってジャガイモを喰いまくってたよ。エッグ婦人とヒナたちもギルの皿からつつきまくっていた。実に平和な光景である。
さて、なんだかんだで明後日には実家に帰るため、午前中はみんな部屋の荷物のまとめをすることに。二年次もこの部屋をそのまま使うから、大きな荷物は置いておいてもいいんだけど、着替えなんかはトランクに詰めなきゃいけない。
一応、実家に帰らず寮に残ることもできなくはないんだけど、学食はやってないし風呂も沸いていないから(おばちゃんたちも休むため)、素泊まり宿よりかは上等、といった感じらしく、よほどの事情がない限り残る人はいないそうな。
で、こまごまとした荷物を詰め込みまくる。ギルもパンツとか靴下とかそのへんを入れていた。もちろん、俺たち二人とも教科書はそのまま置いていく。あんなもん重くてかさばるだけだし。
ただ、ギル素材や集めた魔法材料が思った以上に多かった。ついでにちゃっぴぃ関連のもの(ぬいぐるみとか服とか)が意外とあったのも予想外。トランクが結構パンパンになっていて焦る。ギルに頼んで無理やり詰め込んだらいくつかの材料がダメになった。所詮はその程度の物だったんだろう。
お昼の時間にはみんな自分の支度を済ませ、なんとなくクラスルームでたむろすることに。『けっこう部屋がすっきりした』、『なんか帰るのすごく寂しいなぁ』ってアルテアちゃんとロザリィちゃんがしゃべっていた。『タペストリーが多すぎて持って帰れねぇ……』、『鉱石コレクションそのままで大丈夫かな?』とはクーラスとポポル。
午後の時間、ステラ先生が『昨日はごめんなさいぃ……!』って半ベソかきながらやってきた。ひゃっほう。
『ごめんなさいぃ……! こんな年上のおばさんが調子乗ってキスなんかしてごめんなさいぃ……! お願いだから嫌いにならないでぇ……!』ってわんわん泣き出す一歩前。そんなステラ先生もマジプリティで心臓がどきどきする。
もちろん、『むしろ先生にキスされたかったですよ』とやさしく微笑む。『……ホントに?』と上目遣いのステラ先生。
『先生にキスされたい人、手ぇあげろ!』ってみんなに声をかけたら、男子全員神速で手を挙げた。その直後にフィルラドはケツビンタされ、ギルは首筋をガジガジされる。ポポルはなぜか呪われていた。
あと、女子も全員手を挙げていたのが印象的。『みんなぁ……!』ってにこって笑うステラ先生が本当にかわいい。ウチの女子、優しい人が本当に多いと思う。
一部、眼がガチで息を荒げていた女子がいたけど、優しい俺は見なかったことにした。目覚めてしまったものはしょうがない。
ちなみに、『ステラ先生、どうして昨日はみんなにキスできたんですか?』と聞いたところ、『手加減しないように自分に暗示魔法をかけたの』との答えが。
なんでも、今の俺たちのレベルに合わせた魔法って(魔力制限の中では)結構強力らしく、普段の自分じゃテストに影響が出るレベルで手加減してしまうと思ったらしい。
ステラ先生、優しすぎるあまりに俺たちにガチな魔法を使うことができなかったわけだ。で、それじゃいけないと自分に暗示魔法をかけた結果、あのキス魔ステラ先生が生まれたのである。
『ほ、本当はあんなお、おとなのちゅーをする気はなかったんだよ……!』ってステラ先生はぷるぷる震えながら言ってたけど、もしかして欲望が解放されるとあそこまで積極的になるのだろうか? なんかすっげえ背筋がぞくぞくするんですけど。
夕飯食って風呂入って雑談して今に至る。今日はなんだかんだでクラスルーム内でゆったりすごした。あと、しばらく会えないからって雑談中にカードゲームをやりまくる。もちろんケツの毛までしっかり毟り取られた。
今日はステラ先生はロザリィちゃんのところで眠るらしい。本当はみんなで雑魚寝したかったらしいんだけど、『お、男の子はいろいろ準備とかあるんでしょ? 先生知ってるよ!』って変に気を使ってくれた。
いったいどんな勘違いをしているのか。ウブなステラ先生だし、きっといろいろアレな想像をしているのだろう。
ギルは今日も大きなイビキをかいている。結局こいつのイビキを直す方法は見つからなかった。ついでに、整理を済ませたため手ごろに詰められるものも見つからない。しょうがないので奴の髪の毛を数本毟って詰めてみた。みすやお。
書き忘れたけど、明日は最後の打ち上げってことでこないだのあそこに行くことになった。ステラ先生が魔法で連絡を入れてくれたらしい。マジ女神だと思う。




