3日目 基礎魔法概論:概要
3日目
結論から言う。ノームの爪は天井に突き刺さっていた。
記念すべき第一回目の授業は基礎魔法概論だった。シューンっていうローブの端をズボンにインする変なオッサンが担当だ。ひらひらして邪魔だからインするらしい。ファッションセンスがだいぶクレイジーだと思う。ちなみに妻子持ちとのこと。奥さん、デートの時恥ずかしいだろうな。
肝心の授業内容だけど、初回ってこともあって割と簡単だった。魔法とは何なのかという概念的なものを説明する授業らしい。最初はさわりで後々に様々な発動法や使用法に言及していくとシューン先生が言ってた。とりあえず、メモしたことの一部をここに書いておく。そうでもしないとマデラさんは俺がサボっていたと決めつけるからな。
『古来より、ヒトと魔法は切っても切り離せない関係にあったと言っても過言ではない。我々は生活、戦闘、生産活動といった様々な場面で魔法を使用しており、魔法に全く触れずに生きていくのは不可能に近いと言ってもよい。
我々の社会を支えているのは魔法学である。魔法学と一口に言っても魔法理論、呪文構築、触媒選定といった数多くの分野があり、単純な魔法の使用においても魔力練成、魔法構築、標的捕捉、術式発動と多くのプロセスが必要となってくる。
また、理論的な魔法学の観点では、実践的な魔法の威力や精度のほかに詠唱時間や魔力的コスト、触媒使用時の経済的コストといった要素も重要になってくる。よって、よりよい魔法を扱うためにはただ訓練するのではなく、様々な視点から魔法を熟知する必要があると言えるだろう』
これが基礎魔法概論の一番重要な話らしい。要は『魔法って奥が深いからいろんなことを覚えてね!』ってことだ。シューン先生はこれだけ言うのにいったいどれだけ時間をかけたのだろう。あの人、ずっと話すばっかりで授業はつまらない。メモを取るこっちの身にでもなってほしい。
当然のことながら、ギルは途中でザントマンの砂にやられてた。何度か起こしたけど無駄だった。他の連中もだいぶ寝ているのがいたからしょうがないのかもしれない。シューン先生の声には眠りの砂が散りばめられているのだと思う。
うとうとするロザリィちゃんがめっちゃ可愛かった。そこだけはあの授業で真面目に起きていてよかったと思えた。
で、必死になってメモを取っていたから手がつかれた。授業の後はちょっと学園の中を探索して夕飯食って風呂入ってクラスルームでぼーっとしてただけだ。名前はまだ覚えきれてないけど何人かと雑談もした。意外と明るくて社交的なやつが多いらしい。
あとで面倒なことになると困るので、今のうちにギルに今日の分のメモを写させておいた。感謝と困惑が半々くらいの表情でメモを取っていた。
そのせいか、あいつのイビキがいつも以上にうるさい。魔法素材を使うのはもったいないので、今日は書き損じのメモを鼻に詰めておくことにする。おやすみ。