297日目 基礎魔法材料学:後期期末テスト
297日目
ギルの手が女の子。思わず見とれる。くそっ!
ギルを起こして食堂へ。期末テスト一日目だからか、今日は早起きしているのがちょっとだけ多い。クマを作って死にそうな面をしているやつも多い。万全なコンディションを整えることも重要だと思うけど、なぜあいつらはそれがわからないのだろうか。
朝食はスクランブルエッグをチョイス。ケチャップと塩コショウを半分ずつトッピングしてみた。ポポルの奴は『本気出してやるぜ!』ってケチャップと塩コショウと砂糖と……ともかくすべての調味料をぶっこんでスクランブルしていた。
なお、味のほうはお察しだった模様。途中で喰いきれなくなってヒナたちの口に突っ込んでいた。エッグ婦人がポポルのケツを激しく突いたのは書くまでもない。
ちなみに、カオススクランブルされたそれはヴィヴィディナがおいしくいただいていた。『吐き気を催す遊び心がなかなかに美味』とはパレッタちゃんの談。お行儀悪いのは好きじゃないけど、全部食うなら特別いうこともない。
ギル? 『うめえうめえ!』ってうまそうにジャガイモ食ってたよ。あいつはテスト前でも特に緊張とかしないらしい。危機感が足りないともいう。
そうそう、朝食後にロザリィちゃんが『テスト頑張るおまじない!』って俺の頭をポンポンしてくれて超幸せ。『今回落とすと本格的にまずいからね……!』ってさらにぎゅっ! って抱きしめてくれた。未だにジンクスを信じるロザリィちゃんがちょうかわいい。
今日のテストはシキラ先生の基礎魔法材料学。『よぉお前ら! どうせ落としたって死にゃしねえ! さっさとあきらめろ! 来年もまたよろしくな!』ってシキラ先生は超笑顔。眼が本気だっただけに恐怖を隠せない。なにより受験者の半数が再履と言う生きた証拠だしね。
で、肝心の内容だけどクソ難しかった。最初のほうにちょっとだけ単語の穴埋めがあったけど、次の大問が単語の説明問題。当然のごとく空きスペースが驚きの白さを持っており、ご丁寧にも【汚い字は評価対象外。必要に応じて図を用いても構わない。なお、字の大きさはこの文章と同程度にすること】と書かれている。
そのくせ、一単語当たりの解答欄がポポルの拳くらいある。『魔法材料中の転位について説明せよ』って問題、この日記ですら説明に三行しか使っていないのに、どうやってあの空白を埋めればよかったのだろうか。
苦戦しつつもなんとか表面を終わらせて裏面に。裏面はただ一言。原文そのままここに記す。
『アロン-カボナ系の魔平衡状態図をかけ。なお、指定濃度、魔度における相の模式図も描写せよ』
もうね、紙を裏返した音が聞こえた直後に息をのむ音が聞こえるの。みんながその文章を見て絶望するのが見なくてもわかるの。特にロザリィちゃんの『ひっ……!?』って声は最高にプリティでテスト中なのにくらくらした。
とはいえ、俺はちょうどこないだ日記に書いたばかりだからまだ楽な方だった。大まかな外形と変態のところがだいたいあっていればまず問題ないはず。シキラ先生の性格的に細かい数値は見ないはずだし、要は『ちゃんと頭にこびりつくほど勉強していたか』ってのを見たかっただけなんだろう。
ちょっと解答欄から逆算してみたけど、おそらくあれは細かく記述すればするほど点がもらえるタイプの問題。たぶんある一定の水準を満たしていれば完答扱いで、そのあとはボーナスポイントになるわけだ。
今思ったけど、あの問題って補正とか救済措置のためのものなのだろう。ここで点数を誤魔化し、ギリギリ不合格の人でも授業態度とかを加味して合格にしている……のかもしれない。
ちなみにギルだけど、なんかあいつの席にだけガチっぽい触媒が魔法陣的に配置されていた。明らかに俺のカンニングを疑っている。シキラ先生もにやにやしてこっちを見ていたし、まず間違いない。
最初の単語問題は筋肉反射で解けたっぽい。裏の魔平衡状態図は俺の筋肉の動きのトレースコピーで行ける……と思ったんだけどダメだった。
よくわからんけど、どうも極薄の魔法結界が構築され、刹那の時間に破壊と再生を繰り返していたらしい。だからパッと見何もなさげなんだけど、そこを通ろうとする要素の全てが一瞬全部ぶっ壊れている。
実体とかは平気そうだけど、魔法的要素や非実体は全部だめっぽい。隠密性も考えるとなかなかの性能。さすがはグランウィザードと言ったところか。
どうでもいいけど、問題に詰まってイライラしていたらしきポポルがまた貧乏ゆすりしていた。で、パレッタちゃんにガン! って椅子を蹴飛ばされていた。『ハゲちらかずぞ』ってやっぱり小さく呟かれていた。
なんだかんだでテスト終了。クーラスを除くクラスのメンツはみんな表情が暗い。『時間足りなさすぎ……!』、『最後のアレはねえよ!』、『ジャスティスを語らせろよ……!』と口々に呟く。ギルは『最後はカンで描いたぜ! なかなかに筋肉質ないい仕上がりになった!』って満面の笑み。あいつやっぱ危機感足りなくね?
なお、『どうだった?』って聞いたところ、ロザリィちゃんは無言で抱き付いてきた。で、『これは落ち着くために必要な行為です。決して現実逃避ではありません。今はただ抱き締めれられていてください』って頭をぐしぐし押し付けてきた。もちろん優しく抱き締め返した。
夕飯食って風呂入って雑談して今に至る。なんだかんだで明日の勉強をあまりしていないけどまあどうにかなるだろう。さっさと寝て体力を回復することにする。ギルの鼻には草の肝を詰めた。みすやお。




