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29日目 アエルノ見たら潰せ、そしておさかなカーニバル

29日目


 爆音で飛び起きる。ギルの声が怒轟鬼みたいになっていた。マジうるせえ。


 食堂にてロザリィちゃんほか数名と合流。ギルの自然な怒声にみんながすくみ上っていた。あいつはいつも以上の大声で怒鳴りながら『うめえうめえ!』ってジャガイモを貪っていた。そのまま俺も頭から喰われるんじゃないかと内心ヒヤヒヤする。


 ギルの怒声のせいか、食堂はいつも以上に人が少ない。そして、うるせえってギル以上の怒声を出したおばちゃんが怖かった。悪気はないんだと説得したらなんとか納得してもらえた。


 学生部にロザリィちゃんとアルテアちゃん用の釣り具を借りに行ったときに事件が起こった。なんと、釣竿が全部貸し出されてしまっているという。まだ結構早い時間だし、そもそも釣竿が全部貸し出される事態なんて今までに起こったことがないのに。


 どういうことかと詰め寄ったら、受付開始直後にアエルノチュッチュの連中が一斉に借りていったそうだ。学生部は特に拒む理由もなかったのでそのまま貸し出したのだという。そしてふと、一昨日くらいに食堂で釣りの話をしていたことを思い出した。たしかに、ルール上は何の問題もない。


 アエルノチュッチュぶっ潰す。ロザリィちゃんに悲しそうな顔をさせておいてタダで済むと思うな。絶対にぶっ潰す。ギルの使用済みタオルを舐めさせるまで俺は止まらない。


 湖に到着。アエルノチュッチュの連中が場所を占めている。ゴブリン並みにうざい。景気づけにギルに元気よく挨拶してもらった。爆音にビビって何人かが湖に落ちる。ざまーみろ。


 そのまま連中のいないところで釣りを開始。ミーシャちゃんがやる気満々。ポポルは今日も小型の魚を狙って数を稼ぐつもりだ。フィルラドは釣竿のないアルテアちゃんと一緒にのんびりと。ミルク吹きの残念イケメンだけど、あいつはあれで紳士的。ギルは笑顔で棍棒を装備。おまけのように俺が作ったカミシノの釣竿を持ってた。


 俺はロザリィちゃんといちゃいちゃしながら釣りの準備をした。ファットウォームを怖がるロザリィちゃんがマジプリティ。いじわるしたくなっちゃう。


 開始直後、ギルの気合の雄たけびで水面が揺れる。普通の魚があっという間に逃げ去り、感覚器官の鋭敏な魔法生物が失神して水面に浮かぶ。網で大量にすくった。エンゼルフィンとムーンフィッシュ、あと雷髭魚をゲット。なかなかいい滑り出し。


 ロザリィちゃんときゃっきゃしながら普通の魚を七匹。二人の愛の共同作業の成果だ。一生懸命竿をひっぱるロザリィちゃんが超キュートだった。


 フィルラドとアルテアちゃんは三匹。フィルラドがへたくそなんじゃなくて、アルテアちゃんがせっかちだった。でも、俺の様に紳士的にふるまって実力をカバーするのがいい男ってもんだ。


 ポポルは二十匹。相変わらず腕が良い。やっぱりフィッシュ&チップスもどきにするのだそうだ。


 ミーシャちゃんはかなりでっかいのを三匹。釣り好きなだけはある。たぶん俺たちの中で誰よりも釣りのテクニックがあるのだろう。でもギルはそれ以上に大きい、こないだのと同じ種類の魚と格闘し、友情を築いたうえで撲殺してた。おまけにもう二匹ほど、今度は直接大声を浴びせるという荒業で気絶させて取ってた。ギルの野生化が止まらない。もちろん釣竿は使っていない。


 悔しがるミーシャちゃんを引きずって帰路に。ギルの大声のせいで魚が逃げてアエルノチュッチュの連中はボウズが多かったらしい。あと、怒り狂った雷髭大魚に襲われたそうだ。傷の治療に使った薬がノーム臭くて胆石の味がしたとかで道端で吐いている奴がいた。


 夕飯はもちろんおさかなフルコース。大物が五匹もいたのでティキータ・ティキータの連中とさらにはバルトラムイスの連中も招き、おばちゃんに腕を振るってもらった。『みんなで食べるとおいしいねっ!』って笑いかけてくるロザリィちゃんがマジ天使。


 あと、ジオルドとクーラスが休日にしか出ない数量限定のレアードゼリーを確保してくれていた。夕食の時間になった直後にクラスの有志を募って取りに行ったらしい。ちゃんとティキータ・ティキータの連中もバルトラムイスの連中もいたからクラス独占ではない。なぜかアエルノチュッチュの連中が食べられなくてもルール違反ではない。


 たまたま偶然、なんとなくそんな気分になったのでこれ見よがしにアエルノチュッチュの連中の前でジオルド、クーラスとハイタッチを交わした。


 レアードゼリーはいっぱいあったけど、残ったのはギルがまとめて『うめえうめえ!』って食ってくれた。


 それと、ティキータ・ティキータのゼクトがバルトラムイスの代表のシャンテちゃんを紹介してくれた。なんでも二人とも、今日は楽しみにしていた釣りにいけなくてムシャクシャしていたらしい。あと、シャンテちゃんが雷髭魚のひげを譲ってほしいと言ってきたので、クラスの了承を得たうえでティキータ・ティキータと同じ条件で譲る。


 余ったエンゼルフィンや雷髭魚はクラスの水槽にぶちこんだ。早いところ処理しないと水槽がいっぱいになりかねない。誰か魔法薬の材料にでも使えばいいのに。


 コップの水面が揺れるほどギルのイビキがすごいが、今日はすこぶる気分が良い。明日も休みとかマジ最高。湖畔で拾ったブラックアイズの貝殻を鼻に詰めた。グッナイ。

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