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284日目 発展魔法生物学:後ろの妖怪の生態について

284日目


 ギルが木屑に埋もれている。俺にどうしろと言うのだ。


 ギルを掘り起こして食堂へ。なんか久しぶりにフィルラドがミルクを吹いたらしく(パレッタちゃんがポポルのほっぺを舐めているのを見たらしい。食べ損ねたレモンジャムがついていたそうな)、アルテアちゃんが『まさか同い年の始末をつける羽目になるとは……』ってすっかり母親モードで後始末をしていた。いい加減フィルラドは口の締りをどうにかしたほうが良いと思う。


 朝食はバーニャカウダをチョイス。健康を考えていっぱい野菜を食べる。ちゃっぴぃはいくらか不満そうだったけど、おばちゃん特製のソースのおかげで口に入れてやったら『きゅぅ……?』って不思議そうにいっぱい食べていた。ロザリィちゃんも『あーん♪』って口を開けてきたのであーんした。めっちゃかわいかった。


 ギルはいつも通りジャガイモを『うめえうめえ!』って食ってた。ジャガイモも広義ではバーニャカウダになる……のか?


 今日の授業は天使ピアナ先生と頼れる兄貴グレイベル先生の発展魔法生物学。『まだお休み気分かなっ?』、『…期末も近いから気を引き締めていけ』といつも通りの二人。やっぱいつも通りって最高だよね。


 内容は後ろの妖怪について。実はこいつ、イマイチどんな姿をしているのかわかっていない。と言うのも、常に誰かの後ろにいて、何があっても目でとらえることができないから、誰も確かめることができないそうな。


 とりあえず、以下に授業で言われたことを示す。なんかこれ書くのもだいぶ久しぶりな気がする。



・後ろの妖怪は人の後ろに出現する魔物である。魔物の特性としてそうであるため、どう頑張っても正面に向き直ることはできない。


・後ろの妖怪に憑かれるとなんとなく誰かに見張られているかのような気分になる。そのため、ストーカー被害の真相が後ろの妖怪によるものだった……という例が少なくない。


・後ろの妖怪はイタズラ好きなうえ限度と言うものを知らない。単純な攻撃力こそ低いものの、常に真後ろから全力の不意打ちを仕掛けてくるため、被害は大きくなりやすい。集中力を否応なく削ってしまうため、状況によっては何よりもの強敵になり得る。


・対処法としては、憑かれていると感じたときに、容赦なく後ろを蹴り上げることがあげられる。また、そのまま壁まで後ろ向きに走って押しつぶしたり、誰かと背中合わせになることも効果的と言われている。


・魔物は敵。慈悲はない。



 実際に先生が捕獲したっていう後ろの妖怪が檻から放たれたんだけど、マジで姿が見えなかった。『なんかみられてる!?』、『うわっ、こっち来た!?』ってみんな何かがそこにいて動いているってのはわかるんだけど、奇跡的ともとれる絶妙な動きで常にみんなの視界に入らないで誰かの後ろにいたんだよね。


 なんだろうね、あの感じ。すっげぇじろじろ見られているのに、振り向いても誰もいないの。たぶん、あれ三日も続いたら確実にノイローゼになると思う。


 そんなわけで各々ペアを組んで背中合わせに腕を組むあれをやる。ほら、準備運動で背筋を伸ばす時やるあれね。ギルと組むと足がつかなくなる奴。


 すると、だんだんと『後ろ』がなくなってきたからか、後ろの妖怪の行動範囲(?)が狭まってきているのが確かに感じ取れた。うまく言葉じゃ言えないけど、振り向いたときに向こうに余裕がなくなってきているってのが分かったの。たぶん、監視している人数は変わらないのに後ろだけが極端に減ったせいだと思う。


 で、とうとうパレッタちゃんの後ろに憑いたんだけど、『私の後ろに立つんじゃあないッ!』ってパレッタちゃんは容赦ない呪を躊躇いもなく後ろにぶっ放していた。あとちょっとずれていたらポポルの頭はハゲていたと思う。


 その後、後ろの妖怪は悲鳴を上げながらよりにもよってギルの後ろへ。ギルのやつ、待ってましたと言わんばかりに『うっひょぉぉぉ!』って思いっきり足を後ろに蹴り上げた。なんかヘンなのが断末魔を上げてすっ飛んでいったけど、気にしない。


 ちなみに、『…なんだかんだで面倒なやつではあるが、魔系は基本的に後ろのやつを攻撃する癖がつくから、油断しなければ問題ない』、『むしろ、あんなあからさまに後ろに来たら誰だって反射的に攻撃しちゃうよね!』って先生たちは言っていた。


 クーラスが『味方とか第三者の可能性は考えないんですか? 知恵がある魔物のようですし、自分の特性を活かしたそういう戦法を取らないとは言い切れないと思います』って質問したんだけど、『…とりあえずぶっ放せ。当たってから考えりゃあいい。間違えたらその時はその時だ』、『魔系だったら防げないほうが悪いからね!』って二人とも当たり前のように答えていた。なかなかハードボイルドだと思う。


 夕飯食って風呂入って雑談して今に至る。雑談中、ふと誰かの視線を後ろに感じ、さらにはずしっと全身も重くなったと思ったら、『後ろの彼女の登場です♪』っておぶさってきたロザリィちゃんだった。可愛すぎて気絶しそうになったのはしょうがないことだ。


 ギルは今日も大きなイビキを書いている。授業後に地面に落ちていた後ろの妖怪の耳の欠片(?)を鼻に詰めてみた。グッナイ。

20160113 誤字修正

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