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279日目 追跡者ピアナ先生

279日目


 ジャガイモが鼻から消失していた。どうやら鼻からそのまま食ったらしい。十分驚くべきことなのに何もないと感じてしまう自分が怖い。最初のほうはピクシーグラスを鼻から食っただけで驚いていたのに。


 ギルを起こして食堂へ。今日は雪こそ降っていないものの、絶妙に地面がぬかるんでいて外に行く気が起きない。とりあえず朝から贅沢にパンにバターをたっぷり塗ってむしゃむしゃしてやった。なんだかんだでバター使い放題のこの食堂ってすごいと思う。


 あ、ちゃっぴぃも食べたそうにしていたので、俺が丁寧に塗ったそれを渡しておいた。『きゅーっ♪』とあいつも実に嬉しそう。いつか自分でやらせようと思うけど、まだ早い。うまくできずに手をべたべたにする未来が見える。


 ギルはもちろんジャガイモ。『うめえうめえ!』と貪り、最高のスマイルをみんなに見せつける。『本当においしそうに食べるの』ってミーシャちゃんがクレイジーリボンを操って食べさせながらしきりに感心していた。最近より細かな制御ができるようになったらしい。


 朝食後はクラスルームへ。特に何もやる気が起きなかったので、ロザリィちゃんとイチャイチャするかちゃっぴぃで遊ぶか……と思っていたら、『ちょ、ちょっと隠れさせて!』とステラ先生がやってきてくれた。ひゃっほう。


 『どうしたんですか?』と用件を聞く暇すらもらえず、ステラ先生は共用毛布とかクッションとかをババっと装備し、ソファの上にごろんと寝転がる。パッと見れば誰かがごちゃっとそこに物をまとめたようにしか見えない。かくれんぼも天才とかさすがステラ先生。


 さて、いったい何から逃げたのかと思案していたら、『どぉーこぉーだぁー!?』と顔を真っ赤にしてピアナ先生がやってきた。ひゃっほう。


 『ねえみんな、ここにステラ先生が来たのはわかっているの。正直に教えてくれない?』と、ピアナ先生は顔を赤くしながらもエンジェルスマイルを浮かべる。とはいえ、俺もみんなもどうしたものかと顔を合わせて固まるばかり。だってどんな行動をとってもどっちかの敵になるってことだし。


 チラッとクッションの山を見たら、微妙にぷるぷる震えていた。そんなところもマジプリティだった。


 さて、俺たちの様子から何かを察したピアナ先生は、『ねえロザリィちゃん、いっつもお料理教えてあげているよね?』とにっこりとほほ笑む。その気迫に負けて思わずロザリィちゃんが口にしそうになるも、慌てて俺が口をふさいだ。手で。


 手のひらをちろっと舐められてちょう幸せ。顔が思わずにやけてしまったのはしょうがないことだ。


 ピアナ先生、今度は『アルテアちゃん。ヒナたちのエサとかいろいろやってあげたよね?』とにっこり笑う。アルテアちゃんは『黙秘を貫きます』と手で口をふさいだ。


 『ミーシャちゃん。確実に効く恋のおまじないと使い魔についてちょっと教えてあげよっか?』とピアナ先生。『本当!?』とミーシャちゃんが目を輝かせるも、『やれ、ギル』と命じた俺のファインプレーにより、ミーシャちゃんはギルから後ろから羽交い絞めにされ、口元を押さえられた。


 傍から見れば強盗に人質に取られる子供のそれだったけど、まあ特別問題はない。


 『ぐぬぬ……!』と悔しそうなピアナ先生。そんなお顔もエンジェルで見とれてしまう。とりあえずクラスルームのどこかにいることだけはわかっているみたいだけど、大っぴらに家探しできないのが痛いようだ。


 しかし、ここで突如ピアナ先生は反撃のアイデアをひらめいたらしい。『教えてくれたら、ぎゅってしてあげちゃうよ!』と天使の提案をしてくれた。男子は一斉に群がる。もちろん俺も先生の前に秒速で駆け付けた。


 我先にと群がってぎゅってしてもらおうと思ったのはいいんだけど、ここでパレッタちゃんが『ねぇヴィヴィディナ、おいしい?』と何かをヴィヴィディナに捧げていた。ヴィヴィディナ(ムカデ形態)はクッションのところから漏れ出る……おそらくステラ先生の恐怖とかを喰らっている。


 『──みつけた』ってピアナ先生がめっちゃ冷え込んだ声を出してマジビビった。でも、なんかいつもと違って背筋がぞくぞくしてちょっとクセになりそう。


 『観念しろぉー!』って声と『いやぁぁぁぁっ!?』って声が響いたのはほぼ同時。ピアナ先生、猛烈にステラ先生のほっぺをむにむにしまくっていた。ステラ先生のほっぺ、思った以上に伸びていてすっげえ気持ちよさそう。俺も触りたかった。


 さて、ピアナ先生がステラ先生に粛清した後に何があったのか事のあらましを聞こうとしたんだけど、なぜか二人とも赤くなって何も話してくれない。『ちょ、ちょっと授業のために練習していただけ……だよ?』、『べ、別に変な事じゃないの。昔はよくやっていたことだし……』と、どうも要領を得ない。


 察するに、何やらステラ先生がピアナ先生にやりすぎてしまったような感じがしたけど、具体的にそれが何かはわからない。『あんなにやるなんて……! 付き合わされるこっちの身になってみてよ……!』って終始ピアナ先生が怒っていたのは印象的。


 夕飯食って風呂入って雑談して今に至る。午後はステラ先生に『おねがい……ね?』って泣きつかれたため、ピアナ先生のご機嫌取りも兼ねてジャムクッキーを焼いた。『こ、これで誤魔化せたとは思わないでよねっ!』ってピアナ先生はめっちゃゆるゆるな表情でステラ先生を叩いていた。めっちゃかわいかった。


 ギルは今日も大きなイビキをかいている。こいつは騒動があった時もひたすらストイックにスクワットして様子をうかがっていた。ある意味すごくまともな行動だと思う。


 とりあえず、ちゃっぴぃがつまみ食いして床に落っことしてしまった齧りかけのクッキーの破片を鼻に詰めておいた。ステラ先生がピアナ先生にいったい何をしたのかがちょう気になる。みすやお。

20160109 誤字修正

20160130 誤字修正

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