28日目 魔法生物学:堕鳥草の栽培について
28日目
部屋がすっげえ寒い。息が真っ白。凍死するかと思った。
朝食はあったかいポタージュスープ。お腹の底からぽかぽかしてすっごくホッとした。なんかすっげぇマデラさんに会いたくなってくる。これがホームシックだろうか。ギルのヤツはいつも通りジャガイモ。『うめえうめえ!』って言いながら冷め切ったジャガイモを食ってた。冷めたふかし芋ほどまずいものはない。
クラスのみんなが『なんか寒くね?』ってローブの前をしっかり合わせていた。ミーシャちゃんをぎゅーって抱っこして暖を取るロザリィちゃんが超プリティ。俺も抱っこされたい。むしろ抱っこしたい。
ギルに抱っこされたポポルが歯をガチガチいわせていた。
授業は魔法生物学。ピアナ先生がギルに畑進入禁止を言い渡した。冷気が悪影響を与えるためらしい。しょんぼりするギルに付き添ってグレイベル先生が授業の時間まるまる戦闘訓練に付き合ってあげていた。グレイベル先生マジイケメン。
育て方をレクチャーされたのは堕鳥草。紫色のいい匂いがする花を咲かせるやつ。そのあまりの香りに鳥がうっとりして地面に墜落することからこの名前が付けられたらしい。ナエカと同じように沈静、リラックス効果があるほか、特殊な処理を施すことで魔物や獣に懐かれやすくなる香りを発したり、呪い返しや魔除けとしての効果を期待できるそうだ。使い魔契約を結ぶときなんかに重宝するほか、お守りとして持たせることもあるとか。
以下に簡単な注意点をまとめておく。
・魔法材料として使用する場合は花穂が開いていないものが望ましい。
・採取するときは全体を引き抜くのではなく、花穂のすぐ下を鋏で切る。切り口から新しい芽が出るが、水分が付着した鋏で処理すると傷口から腐る。
・水は少なめに。多くあげると腐る。
・密集させて育てると成長に伴い根元付近が蒸れて腐る。
・日当たりが良くないと花穂が貧弱になる。雨が続くと腐る。
・腐ると異臭を発するほか、異常魔素雰囲気を形成し、腐食液を分泌しながら広がっていく。ナメクジの這ったような痕があるのですぐわかる。早急に処理しないと危険。
・まごころを込めて育てる。込めないと腐る。
・収穫は愛情を込めて行う。
とにもかくにも腐らせないようにしなきゃいけない魔法植物らしい。寒さに強く暑さに弱いが、冷気を感じると活性化してわずかな水分でも腐りやすくなるそうだ。もちろん暑いと腐る。
腐った堕鳥草が広がる際に分泌される液も魔除けとして使えないこともないらしいが、腐食効果や周りへの被害が多すぎるため、だったら普通に花穂を採取して加工したほうがリターンは大きいそうだ。ぶっちゃけリスクが高すぎるだけともいう。
しっかり乾燥させてあるものを植え、また採取の練習もした。香りがマジでいいかんじ。あと、うっとりとしているロザリィちゃんに心がときめく。
ピアナ先生とグレイベル先生にカミシノのことを報告したら、そのまま経過を観察してくれと言われた。結構重要な発見になるかもしれないとのこと。手間賃じゃないが、堕鳥草を譲ってもらう。これでロザリィちゃんへの美容液が完成に近づいた。
でも、堕鳥草を貰うところをアルテアちゃんに見つかった。今度ヒマな時にポプリの作り方を教えてくれと頼まれた。その他の材料を提供してもらうことを条件に引き受ける。
夕飯食って風呂入ってクラスルームでの雑談中、ステラ先生が寝間着姿でやってきた。ひゃっほう。
ピアナ先生からドライフラワーにした堕鳥草をもらったので飾りに来てくれたらしい。ステラ先生もピアナ先生もマジいい人。超可愛い。あと花よりもいい匂いする。
せっかくなのでまたもボードゲームに誘う。今日は五回もつきあってくれた。みんなで超盛り上がった。いやっほう。ステラ先生が大好きすぎてつらい。
ゲームに勝った時のロザリィちゃんの笑顔が最高だった。あと今日はジオルドとポポルがケツの毛までむしり取られていた。儲けは全部クラス資金の貯金箱にぶち込まれていた。
明日は休日。そして待ちに待ったロザリィちゃん(とその他)との釣り。超楽しみ。
生活習慣だけは整っている、豪快にイビキをかくギルの鼻にオーガのひげを丸めて突っ込む。明日はいい日になりますように。




