27日目 基礎魔法学:水魔法の形態変化実習
27日目
ギルの涙が止まらない。『うめえうめえ!』って飲んでる。なんかもう疲れた。
食堂にて、号泣するギルにみんなが心配したように声をかけるが、うまそうに自分の涙を飲む姿を見てすげえホッとした表情になってた。そこは頭の心配をするべきだと思う。
でも、ロザリィちゃんの慈愛に満ちた母性溢れる表情がもうマーベラスプリティだった。俺もあんな顔で慰めてもらいたい。あわよくばそのまま胸に飛び込みたい。
何かを察したおばちゃんが朝からでっかいケーキを作ってくれた。せっかくなのでギル、フィルラド、ポポル、ロザリィちゃん、ミーシャちゃん、アルテアちゃんとで食べる。なかなか美味。ついでに次の休日の釣りの話を詰めておく。当然のことながら、ギルはジャガイモを『うめえうめえ!』って言いながら貪っていた。今日は塩気がいい感じだったらしい。
授業は我らが天使のステラ先生。基礎魔法学。
今日の内容は水の魔法について。具体的には水魔法の形態変化を触媒を用いて簡単にやりましょうって話だった。杖をコンコンしながら説明するステラ先生が超キュート。俺の頭もコンコンしてほしい。
水魔法は汎用性が高いことが特徴にあげられている。いろんな魔素を組み込めるし、形態の扱いもすごく幅が利く。ステラ先生レベルになると水魔法を発動中に自然に術式を組み替えて(先生は誘ってあげて、と表現していた)氷魔法にしたり風の魔法にしたりできるらしい。
俺たちはそこまでの実力がないから触媒に頼る。濁晶石……魔式名称ナトリナクロリアを魔力的に術式に作用させ、水の魔法の術式の安定性を理想的に不安定にさせるというトンチンカンなことをするのだ。
で、いつものように魔力的密閉空間で水の魔法を発動させ、指示された様に氷塊を作ろうとしたら面白いように氷ができた。マジで氷がざっくざく。ギルの涙もこっちこち。あいつ、そのまま『うめえうめえ!』ってボリボリ噛み砕いていた。砕けた涙の欠片を念のため採取しておく。
ただ、あくまで不安定になったところを無理やり氷魔法側に引き込んでいるようなものなので、失敗はしやすい。結果はすぐに出るから何度も挑戦できるけど、体感で成功率は七割ほど。ちょっと操作をミスしただけですぐに水魔法側に安定するからとっさの判断で使えるようにするにはちょっと慣れがいると思う。
厳密な詳しい原理はもっと上の授業でやるらしい。ステラ先生は小さい頃ピアナ先生と一緒にこうやって涼をとっていたと言っていた。ほっぺに氷を当てているロザリィちゃんがすっげぇキュートだった。
夕飯食って風呂入って今に至る。久しぶりに短めの日記。今日はリチャードスペシャル一号でガチガチにコーティングした氷をイビキのうるさいギルの鼻に詰めて寝る。




