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266日目 メリークリスマス! (魔法造成実習:対人戦闘訓練【VS.ポポル&パレッタちゃん】

266日目


 メリークリスマス! 今年も会えたね♪ サンタさんはちゃあんと──が一年間いい子だったことを知っているよ♪ もちろん、プレゼントだってあげちゃいます。気に入ってくれるとうれしいな。あと、おいしいホットミルクとクッキーをありがとう! 【──のサンタさんより】


 メリークリスマス! よう、一年ぶりだな。ずいぶんとデカくなってびっくりしたぜ。なかなか男らしい顔つきになったじゃねーの。女サンタのやつ、でっかいほうもチビなほうもお前が用意してくれたクッキーをうまそうに食ってた。また来年も頼むぜ! 【イケメンサンタより】


 メリークリスマス! ジャーキーも付けてくれたのはなかなかうれしかった。今年はちょっとサンタ評議会で──にプレゼントを贈るかどうか決めかねたが、送って正解だったようだ。悪い子は八つ裂きにして丸焼きにして食っちまうから精進を怠らないように。【最強無敵絶対王者サンタより】


 メリークリスマス! クッキーうまい。腕を上げたな。もっと量があってもよかった。ささやかだけど、──の美人で可愛くて賢くて最強のおねえちゃんから──が好きなカフェオレの作り方を聞いておいたので作っておく。あと腹出して寝るな。サンタさんとの約束ね。【美人サンタさんより】







 メリークリスマス。ギルがラッピングされていた。このままミーシャちゃんに突き出せば彼女は喜んでくれるだろうか?


 あと、俺の枕元にもプレゼントがあった! 昨日の夜なんとなく気づいたけど、やっぱアレ夢じゃなかった! 今年もサンタさんが来てくれて超うれしい! お話しできなかったのは残念だけど、日記に手紙が書いてある! さすがサンタさん!


 ぎゅっ! てしくれたのもちゅっ! てしてくれたのも現実だったみたい。やわらかい感覚が残っているし、くちびるに懐かしさを覚えるステキな甘い味も残ってる。


 にしてもこれ、どこかで感じたことのあるやつなんだけど、どこだろう? 思い出せそうで思い出せない。まあ、昔からサンタさんはこれをやってくれてたから、その時のだと言われればそれまでなんだけど。


 とりあえず、ナターシャオリジナルを飲んでみた。さすがサンタさん、本家とまったく変わらない味。ちょうおいしい。俺のためにわざわざあいつのところに行って作り方を覚えるなんて、感謝の念を隠せない。


 ……あっ、よく考えりゃナターシャとあのサンタのおねーさんって知り合いなんだっけか? 昔からナターシャがサンタさんにプレゼント伝えてたし。


 地獄の果てのサンタの谷までボロボロになりながらもリクエストしに行ってくれたことだけは、ナターシャたちに感謝している。今年は最強女神ステラ先生が伝えてくれたからよかったけど。サンタの系譜を受け継がないとプレゼント用意しちゃいけないってなんでなんだろうね?


 ギルを起こして食堂へ。ギルのやつ、枕元に置いてあるプレゼントを見て『うっひょぉぉぉぉ! ありがと親友! これは夜のパーティで開けさせてもらうぜ!』とか俺に言ってきやがった。


 全く、プレゼントを用意したのはサンタの系譜を受け継いだ別人だというのに、こいつは何を言っているのだろうか。


 食堂ではみんなが『メリークリスマス!』と声をかけまくっていた。朝食の内容も心なしいつもより豪華。あと、朝からゴージャスなケーキも用意されている。『こんな日でも授業があるんだし、せめて食べるものくらいは豪華にしないとね!』っておばちゃんが二カッって笑ってケーキをデコっていた。本当にお疲れ様です。


 ギルは『うめえうめえ!』とジャガイモを貪る。ミーシャちゃんが『メリークリスマスなの!』ってギルの口にジャガイモを放り込みまくっていた。これでまだ余興だというから恐ろしいものである。


 書くまでもないけど、『メリークリスマス♪』って朝からロザリィちゃんにぎゅっ! ってしてもらって超幸せ。『サンタさんよりも、──くんに会える方がうれしいな♪』と腰が砕けそうになる幸せな呪文を耳元で囁いてくれた。


 マジで気絶しそう。もしかしたらロザリィちゃんは俺限定で幸せを振りまく幸せのサンタさんなのかもしれない。


 ちゃっぴぃも『きゅーっ!』ってご機嫌。枕元のプレゼントにしっかり気づいたようだ。早速開けそうになったけど、『夜のパーティの時までとっておけ』って言ったら、嬉しそうな、もどかしそうな顔をして室内ツリーの下に置いていた。なんだかんだでお楽しみはみんなと共有したいらしい。成長したものだ。


 今日は聖夜の女神ステラ先生の魔法造成実習と言う名の対人戦闘訓練。『メリークリスマス! ちゃんとサンタさんからプレゼントを預かっているから、夜のパーティで渡します!』ってニコニコしながら杖をコンコンしつつ出欠を取るステラ先生がエクセレントプリティ。


 しかも、『今日はさっと授業を終わらせて盛大に遊ぶぞーっ!』って『おーっ!』ってやる姿なんて可愛すぎて言葉にできない。なんでステラ先生って何してもあんなにかわいいのだろう。


 さて、今日の対人訓練はタッグバトル。秒速で終わらせるには誰と組めばいいかな……とあたりを見回したところでギルと目が合う。


 親友同士、心がつながった。これはもう組むしかない。物理最強と魔法最強が合わさって最強を超えた最強が今ここに誕生する。『俺親友とならどんな奴が相手でも負ける気がしねえや!』ってギルは言ってたけど、奇遇にも俺も同じことを思っていた。


 肝心の対戦相手はポポル&パレッタちゃん。何か知らんけどみんな俺たちと戦いたがらなかったんだよね。で、二人してハブられて悲しい思いをしていたところで、『こいつらとだけは絶対嫌だ!』、『物理と魔法が合わさって最強になる……が、筋肉とナニカが合わさって頭おかしくなって身を亡ぼす。やるなら今』とパレッタちゃんがやってきたってわけだ。


 早速試合開始。俺は杖を、ギルは拳を構えて攻撃態勢に。つーか、開始の合図の直後に神速の筋肉が地面をけり、シャレを聞かせて俺も連射魔法(の早撃ちアレンジ)で奴らを攻撃した。


 が、意外なことにポポル&パレッタちゃんはこれを華麗に避ける。『もうどうにでもなりやがれ!』と、なんとポポルはパレッタちゃんの傀儡の呪を受け入れ、文字通り精神を一体化して肉体制御を外部に委託していた。


 パレッタちゃん自身も『抗うな。受け入れろ』って自身に傀儡の呪をかけた。自分たちの肉体を呪いで強制的に動かすとか、やっぱあいつらクレイジーだ。


 何が厄介かって、あくまで呪による強制行動だから、現実的にありえない動きが可能なうえ、いつもの何倍以上もの身体能力になるし、ついでに呪で操られている最中は本体の意識が第三者視点になるから、視界がいつも以上に広がってるってところ。


 分かりやすく言うと、奴らは神の視点で自分たちと言う操り人形を自在に操っているわけだ。呪をこういう風に使う人って俺初めて見た。


 もともとポポルがすばしっこいことと、パレッタちゃんとポポルの二つの意識の感知範囲があるから、ギルでさえポポルの動きについていくのがやっと。俺も罠魔法をはってみたけど、悉く見破られた。


 しかも、『ヴィヴィディナ感謝祭の開幕でございます!』ってトリップしたパレッタちゃんが、ポポルの連射魔法を使ってやたらめったら呪を連射してきた。


 さすがにこれにはビビる。呪って一発がデカい分連射性能最悪なのが特徴なのに、デメリットだけをぶち壊してくるんだもん。


 おまけにさ、傀儡の呪って本来術者が対象の精神を追い出し、支配的にすることで成り立つ呪なのに、今回はどちらともがそれを受け入れているせいで意識も肉体も共有状態になっているぽかったんだよね。


 そう、ポポルの肉体も『きゃはははは!』って笑いながら呪を連射してきたの。もうこれ手に負えねえよ。


 トリップして呪を連射する二人。ポポルに至っては口にヴィヴィディナを含んで(舌に目玉がついていた。冗談抜きにクレイジーだと思った)、こちらを精神的に威嚇しながら突っ込んでくる始末。スイカの種みたいに目玉を吐き出してきたし、見るものが見たらトラウマになっていたことだろう。


 こうなったらもうギル任せ。『ディナーに好きなだけジャガイモを食わせてやるぞ』って囁いたら思った通り、あの野郎は『うっひょぉぉぉぉ!』って大声で叫びやがった。


 それはもう、衝撃波としてあたりのものをぶっ壊すレベル。もちろん俺は吸収魔法でそれらを吸収し、動きを止めたポポル&パレッタちゃんに増幅反射させた。


 いくら呪いでむちゃくちゃになっているとはいえ、さすがに肉体の本能には抗えないのか、あいつらは反射的に耳を押さえる。その隙に俺が近づき、いつぞやステラ先生に教えてもらった光魔法の破邪結界を施した。


 あとはもう、呪いが解けかけて苦しんでいるところをギルに羽交い絞めにしてもらい、俺のミスリルハンドでくすぐり倒して終了。いくら呪で痛覚とか誤魔化していたとしても、体は正直だったってわけだ。


 パレッタちゃんは『ひん……っ! ひん……っ!』、ポポルは『ぜぇ……っ! ぜぇ……っ!』って地面に倒れてビクビクしてた。なんだかんだで今回も完全勝利。親友との熱い友情が勝利に導いたのだ。


 なお、総評としては『一見無敵な呪を肉体的な反射をきっかけに打破するという着眼点は良かったけど、あんまり女の子をくすぐるのは良くないと思うよ? あと、ギルくんは魔法的なアプローチをもっとできるように頑張ろうね』とのこと。


 別にパレッタちゃんの脇腹くらいならもう何度もくすぐり倒しているんだけどね。だってパレッタちゃんつまみ食い常習犯だし。


 ちなみに、ポポルとパレッタちゃんは『互いのメリットを生かした戦法はすごいと思いました。発想もユニークで奇抜さという観点でも評価は高いです。ただ、しょうがないのかもしれないけど冷静さを失い周りが見えていない節があったからそこを対策しよう!』って言われてた。何気にかなりの高評価。


 実際、二人揃ってないとダメとは言え、高威力の呪の連発ができる上に意識共有済みで二つの肉体を動かせるって相当強いと思う。


 さてさて、授業終わりにささっと早めに風呂に入り、最後の支度を済ませて……だいたい夕方ごろからとうとうクリスマスパーティが始まる。


 リースやなんやらで部屋の中は飾りつけされているし、気分を盛り上げるためにみんななんかクリスマスっぽい小物(サンタさんの帽子とか)を身に着けていてなかなか華やかなかんじ。


 もちろん、室内クリスマスツリーの下にはプレゼントが山積み。みんな気分を味わうために一時的にそこに置いたらしく、なかなかの迫力。テーブルの上にはクリスマスディナーがこしらえられていてまさに準備万端。外の怨念樹のツリーも奮発して触媒の光を灯しちゃったりもした。怨念樹自身も悲鳴を上げてステキなクリスマスを演出していた。


 で、『みんな、おまたせ!』とプレゼントを持ってきたステラ先生がやってきたところでパーティの開始。『メリークリスマス!』と大きな声がルマルマ寮に響き渡った。


 もうね、みんなでドンチャン騒いで飲み食いしたよ。でっかいチキンをいくつも食べたし、ローストビーフもミートローフも、そして丹精込めて作ったターキーも食べた。


 ロザリィちゃんも『おいしーっ!』ってすんげえにこにこ。ステラ先生も『こういうクリスマスにあこがれてたんだぁ……!』ってちょう嬉しそう。宿屋の息子としての喜びをかみしめる瞬間だ。


 もちろん、ギルは『うめえうめえうめぇぇぇっ!』って俺特製のフライドポテトを貪り食っていた。『やっぱクリスマスエディションはいつもと違うな!』って言ってたけど、割といつも通りのフライドポテトだったりする。あいつは安上がりで実にいい。


 ポポルとパレッタちゃん、あとフィルラドとアルテアちゃんは肉を貪っていた。それはもう盛大に貪っていた。四人とも食べ方がすごくワイルドなの。こう、両手でガってつかんでそのままブチィッ! って噛みきる感じ。


 『こういうデカい肉を食べられる機会なんてそうそうないからな』、『命を喰らうなれば、原点に戻るべし』って女子二人は言ってた。


 さてさて、机の上の料理がなくなったらいよいよデザートタイム。俺特製の煉獄ケーキやガチハゲプリン、さらにはクッキーが有志の手によりずらりと並んだ。この段階でほとんどの人間が目をキラキラさせており、『ちょうクリスマスじゃん!』と称賛の言葉が自然と溢れ出ていた。


 マジパンとか作るのが地味に大変だったから、すごくうれしかった。実は一個だけみんなを模したマジパンを載せたクリスマスケーキがあったんだけど、こいつがなかなか評判が良く、ステラ先生に『これ食べるのもったいないよ……!』って言われたくらい。


 もちろん味はちょうデリシャス。クリスマスエディションだけあっていつもと一味も二味も違う。でも、たぶんあの特別な空気の中で食べたからこそ、あんなにおいしかったんだと思う。


 当然、ロザリィちゃんにケーキを『あーん♪』ってやってもらった。幸せすぎて言葉にできない。なので、『クリームがついているよ』ってほっぺにちゅっ! ってした。『ホントかな?』ってニコニコ笑いながら脇腹を突いてくるロザリィちゃんが可愛すぎてその場で抱き締めそうになった。


 ジオルドとクーラスも全力でケーキを食べていた。『一年に一度しか食べられないからな』、『俺、昔からクリスマスケーキは好きだったんだ』と実に嬉しそう。


 そんな二人を見て、女子は『男子って好きなようにお菓子を食べられてうらやましいわ……』ってボヤいていた。今日は『あーん♪』ってやってあげないらしい。幸せに没頭できる二人へのささやかな意地悪だとか。


 さて、いい感じに盛り上がってきたところで『それでは、預かっていたプレゼントを渡しちゃいます!』とステラ先生が──


 なんと、サンタさんの服を着てやってきてくれたのぉぉぉぉ! もうね、めっちゃプリティ&キュートで最高にエクセレントだった! 服と同じくらいに真っ赤になって、それでなお必死にお姉さんぶるステラ先生がマジ聖母!


 ちょっと落ち着こう。いくらか興奮しすぎた。ともかく、ステラ先生がすんごくかわいいサンタさんの格好をして俺たちに一つ一つプレゼントを渡してくれた。


 おそらく、ステラ先生はサンタの谷までリクエストに行った後、自分の部屋にまとめて届けてくれるようにお願いしたのだろう。もしかしたらこうして自分で手渡ししたかったのかもしれない。まさかステラ先生がサンタさんの格好をしてくれるとは思わなかった。


 で、『──くん、メリークリスマス!』とプレゼントを受け取る。全員にいきわたったところでみんなで一斉に開けてみた。あ、ツリーの下のプレゼント(ちゃっぴぃのやつとか)もこの時一緒に開けた。


 中に入っていたのはすんごく立派な万年筆。シックなデザインがなかなかおしゃれ。耐久性もよさそうな感じで、デザイン面と実用性を兼ね備えているのが見ただけで分かる。


 『うふふ、一番良く使うかなって思ったの!』ってにっこり笑うステラ先生が最高に聖母だった。もしかしなくても、この日記を書くためにってことなんだろう。実際、今も万年筆で書いているし。書き心地も最高だよ。


 ちなみに、ロザリィちゃんが料理道具、ミーシャちゃんが釣り道具、アルテアちゃんがナイフとかの狩りの道具、パレッタちゃんが蟲取りセット、クーラスが裁縫セット、ジオルドが大工道具、フィルラドが毛繕いセット、ポポルが採掘セット、ギルが筋トレセットだった。


 みんななかなか実用的なチョイス。でも、やっぱりどれもがかなりの高級品だったらしく、『ほ、本当にいいんですか!?』って喜びを隠し切れずにいた。ステラ先生、『せ、先生じゃなくてサンタさんに感謝しようね!?』ってわたわたしてた。そんな姿もマジプリティだった。


 ちなみに、俺がちゃっぴぃに送ったのは大きめのウサギのぬいぐるみ。ちゃっぴぃのやつ、『きゅーっ♪』っとぎゅって抱き締めて終始ご機嫌だった。どうやらうまく気に入ってくれたらしい。ぬいぐるみが擦り切れるんじゃないかってレベルでずっとほおずりしていた。


 ああ、ギルにあげたズタ袋、あいつすっげえ喜んでたよ。『これでジャガイモ食べ放題だぜ!』って言ってたけど、あいつほどチョロいやつもいないと思う。


 そうそう、ツリーの下に積まれているプレゼントの中に、とてもステキでゴージャスでエレガントなプレゼントボックスがあると思ったら、なんとステラ先生宛のプレゼントだった。


 中にあったのはこれまた選び手のセンスの良さが感じられるストール。温かそうであり、デザインもよくてステラ先生にすごく似合う。特にほぼ失われている特殊な裁縫技術があしらわれた模様のところなんて惚れ惚れする。そんじょそこらのストールとは比べ物にならないほどそのものの質が良い。


 ステラ先生、『うわぁ……っ!』ってすっげぇ目をキラキラして何度もそれを羽織ったりヒラヒラしたりしていた。『身内以外の男の人からプレゼントもらうの、初めて……!』とどことなくうっとりした表情。そんなステラ先生の表情に俺がうっとりした。


 で、『ありがとね、──くん! 一生大事にするから!』って微笑んでくれた。アレを贈ったのはサンタさんなのに、どうして先生は俺にお礼を言ったのだろう? まあ、悪い子な俺はサンタさんの手柄をかすめ取ってしまったけど。


 さて、いくらか落ち着いてきたところで、『ところで、僕がお願いした先生のダンスはまだですか?』と聞いてみた。そう、俺は(おそらくステラ先生が俺のためにわざわざリクエストした)万年筆はもらっても、本命のダンスはもらってなかったりする。


 『……えっと、やっぱり本気、なんだよ、ね?』とぎこちない笑みを返すステラ先生。『本気も何も、今までサンタさんが僕を裏切ったことなんてありませんから』と紳士的にほほ笑む。なぜかみんなが発狂したヴィヴィディナを見るかのような目でこちらを見てきたけど、一体どうしてだろうか。


 しかも、『さすがにおふざけが過ぎるの』、『ウブな先生にそんなことさせるな』、『楽しいクリスマスパーティーだった……それで終わらせたいでしょ? ねぇパパ?』と女子に言われ、絶望しそうになる。俺、それを楽しみにこの一週間頑張ってきたのに。


 しかし、『ううん、先生はもう覚悟を決めたから』とステラ先生はにっこりと(何かをあきらめたかのように)ほほ笑み、ババっとサンタの衣装を脱ぎ捨てた。


 その下にはこないだの舞踊衣装。メリハリのあるステラ先生の美しい体の魅力が何倍にもなっており、まぶしすぎてまともに見つめられないレベル。


 もうね、マジでかわいかった。スケスケヴェールもラメラメな布もステラ先生のために存在しているんだって確信したくらい。ロザリィちゃんの時とはまた違った素晴らしさがあって、やっぱりミニリカの体つきがいかに貧相だったかを思い知る。つーか、ステラ先生の照れる姿を見るとミニリカの衣装姿がむしろ滑稽にさえ思えてくる。


 そして、『サ、サンタさんにお願いされたからなんだからね! 今回だけの特別なんだからね!』とステラ先生は俺の目の前で魔法舞踊の基礎の基礎であるお尻フリフリダンスを踊ってくれた。腰や手首のキレが凄まじく、ガチ舞踊でもないのに魔力が高まるくらいの完成度。


 不思議なことに、あの型には魅了の効果がないはずなのに、頭がボーッとして周りが見えなくなった。ただ、ステラ先生の慈愛に満ちる谷間とすべてを抱擁するおみ足、そして何より真っ赤になりながらも必死で笑顔を保つその姿だけはっかり見えて、全俺が癒された。


 まさに聖夜にふさわしいダンス。すべてのものを浄化するほど美しく、そして比類なき程プリティだった。もうこれ以上ほめる言葉が見つからない。あとめっちゃ揺れる。ゆさゆさ揺れる。マジ最高。


 ちなみに、途中でちゃっぴぃ、エッグ婦人、ヒナたち、パレッタちゃん、ミーシャちゃんもケツフリフリダンスに参加していた。『クリスマスなんだしみんなで踊るの!』、『みんなで踊れば恥ずかしくない……よね、先生?』とのこと。ちゃっぴぃのケツのキレはまだまだだったけど、ヒナたちのそれは至高の領域に達していたことをここに記しておく。


 なお、ドサクサに紛れて脱ぎ捨てられたステラ先生のサンタ服の回収をちゃっぴぃに命じたんだけど、あの野郎、『きゅぅん?』とか言って回収したそれを俺じゃなくてロザリィちゃんに渡しやがった。解せぬ。


 パーティが終わった後、とうとう本日のハイライトに。保冷庫に隠しておいた特製ブッシュドノエルを手にし、ロザリィちゃんが来る瞬間を今か今かと待ち望む。ちゃんと雰囲気を出すために、玄関ホールのところで待ち合わせしたんだよね。


 しばらくしたら、『おまたせ!』と超かわいいロザリィちゃんがやってきた。うまくちゃっぴぃをアルテアちゃんに預けることができたらしい。温かそうな格好はそうだけど、明らかにおめかしに気合入れまくっている。『やっと二人きりになれたね……♪』って耳元で囁かれたときは、マジで腰が砕けそうになった。


 で、早速【二人が初めてキスした思い出の場所へ行く】愛魔法をロザリィちゃんが発動。いくらかの浮遊感の後、俺たちの目の前に満天の星空が広がった。


 『きれい……!』と感動するロザリィちゃんの顔が凄まじくプリティ。そっと手を握ったら、ぎゅうっ! って握り返してくれた。そのまま無言で互いに見つめあう。かぁっと赤くなるロザリィちゃんがたまらなく愛おしい。


 なんか、自分でもよくわからんけど、気づいたらロザリィちゃんを抱きしめていた。ロザリィちゃんもしっかり抱きしめ返してくれた。うまく言葉にできないあの気持ち、いったい何なのだろう?


 しばしそのぬくもりを楽しんだのち、二人で仲良くブッシュドノエルを食べることに。もちろん『あーん♪』ってやりながら食べたんだけど、なんかいつもよりオトナな雰囲気で、なんだろう……こう、互いにぎこちないんだけど、それすら心地よくて、一瞬一瞬が恥ずかしくてうれしくて心の底から満たされるの。


 言葉にしなくても相手のことがわかるというか、むしろ無言のそれが堪らなく楽しいというか、ああもう、自分で何言っているのかわかんないけどとにかく最高だった。


 自然と甘い雰囲気になって、なんかロザリィちゃんの表情がとろんとしてきて、満天の星空が見えなくなって、ロザリィちゃんの匂いがどんどん強くなって、気づいたらハートフルピーチとチョコの味が口いっぱいに広がっていた。


 いつも以上に情熱的。そしてロマンティック。思い出すだけでも心臓がどきどきしてくる。つーか顔が熱い。


 あと、ここだからこそ書くけど、今日はいつもの軽いキスじゃなくてオトナなキスだった。『んふふ♪』って色っぽく笑うロザリィちゃんが小悪魔過ぎる。聖夜の中の小悪魔な聖母とか、俺を幸せ死させる気だろうか。


 続けて、『メリークリスマス。大好きな──くん』ってロザリィちゃんはさっきのキスがかすんで思えるほど気持ちのこもったキスをしてくれた。俺はアレを言葉で表現することができないけど、ともかく俺のできる精いっぱいの気持ちを込めて応えたことだけは確か。それがロザリィちゃんの偉大な愛に報いることができたかどうかは不明だけど。


 気分が盛り上がってきたところで、『メリークリスマス。大好きなキミへ』とプレゼントを差し出す。これはサンタの系譜を受け継いだ俺ではなく、ただのロザリィちゃんの恋人としての俺からのもの。


 『わぁ、ありがと──!?』と、ロザリィちゃんはその箱を開けた瞬間に言葉を失った。さっき以上に顔が蕩け、赤くなり、しかもポロポロと涙を流し始めた。


 めっちゃ慌てた。まさか泣かれるとは思わなかった。『き、気に入らなかったのかな?』と声をかけようとした瞬間に、くちびるでくちびるをふさがれた。


 俺がロザリィちゃんに送ったの、手作りの指輪。しかも小さいとはいえガチな宝石が使われているやつ。昔、ナターシャが『あんたが本当に好きな人ができたときに使いなさい』ってくれて、今までずっと取っておいた秘蔵の宝石。


 『う、うれし、いの……!』ってロザリィちゃんは泣きながら答えてくれた。『ね、付け、て?』とすっと左手を出してくる。『どこがいいかな?』って聞いたら、無言で抱き締められた。小さく『……ばか♪』って呟かれた。


 そして、俺は指輪を付けた。ここから先は俺の心の中だけにしまっておくことにする。あんなステキな思い出、忘れたくたって忘れられない。生涯最高の日だったと、自信を持って言える。


 ここからは書くことが少ない。ロザリィちゃん、クラスルームに戻っても抱き付き、キスをし、そしてまだ抱き付いて……の繰り返しだったから。言葉がうまく出てこないらしく、にこにこ笑いながら、ずっと愛おしそうに指輪を見続け、で、俺の手をぎゅって握り返してくるの。


 でも、これだけは言わせてほしい。ロザリィちゃんが感じたであろう何倍も俺は幸せだった。こんな幸せが訪れるだなんて、本当に想像すらしなかった。あの指輪をはめたときのロザリィちゃんの笑顔とこの幸せを、俺は絶対に忘れない。


 たとえ俺が死んだとしても、俺の記憶が喰われたとしても、俺は絶対にロザリィちゃんを愛し続ける。俺は、ロザリィちゃんがくれたこの最高の幸せを、俺の全力をもって報い続ける。


 だいぶ日記が長くなってしまった。まだドキドキが残っているのか、文章が結構ぐちゃぐちゃになっている気がする。自覚はないけど興奮状態にあるのだろう。


 あ、ロザリィちゃんが俺にくれたのはお揃いのイヤリングだったよ。恋人同士の印なんだって。あと、サンタのおねーさんたちがくれたのはかっこいいローブ。魔法的な性能もさることながら、実に俺好みのデザイン。


 そろそろホントに筆をおこう。一生の記憶に残る最高のクリスマスだった。来年もこうしてみんなでクリスマスを迎えたいものだ。


 ギルはスヤスヤと大きなイビキをかいている。聖夜の祈りを鼻に詰めておいた。おやすみなさい。

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