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264日目 基礎魔法陣製図:自習

264日目


 お外が猛吹雪。寮全体がギシギシしている。さすがにぶっ壊れはしない……よな?


 外がアレだったからか、起きたのはいつもよりだいぶ早め。とりあえずささっと着替えて室内に異常がないか確認。窓がガタガタしてたものの、損傷は見受けられず。とりあえず安心。


 んで、クラスルームの暖炉に薪をぶち込み、ぬくぬくにしたところで外に異常がないか確認しに行く。動きやすさを考慮してあんまり厚手じゃない防寒着を着込み、その上から防寒結界を張った。


 なのに、扉を開けた瞬間に吹き込んできた風に凍えそうになった。服があるだけマシだけど。


 吹雪の中、とりあえず寮をぐるっと回って被害がないかを確認。早朝で暗いってもあるけど、雪がすごくて視界が悪い。壁伝いになんとか足を進める。一部屋根のところに破損が見られたけど、大きな問題はなさそう。あんまり効果はないかもだけど、火炎魔法と風魔法で屋根の上の雪を払っておいた。


 さて、一通り見終わったしそろそろ戻るか、と思ったら『おーう、お疲れさん!』と久しぶりに聞く声が。かなりの厚着をしたヨキが結界を張りまくって立っていた。歯をガチガチしていたところを見ると、俺に声をかけたときは結構頑張っていたのだろう。


 なんでも、あまりの吹雪だからって急遽先生方で見回りをすることになったらしい。グレイベル先生やシューン先生も他のところへ行ったらしく、ルマルマのほうはヨキの担当になったとか。


 『まさかこの時間に生徒が自発的にやっとるとはなぁ。だが、気持ちはうれしいが危ないから、今後はせめて先生と一緒にするようにしなさい』とはヨキの談。この程度の吹雪にやられるほど俺は弱くない……けど、万が一があるからね。


 ちなみに、ヨキは屋根の破損部に陣魔法ですっげぇ多重結界を張ってくれた。『ま、こんなもんでしょ』って当たり前にやってたけど、あの状況であんだけの結界って結構すごくない?


 そうそう、『あっちのクリスマスツリーも寒そうにしてたから結界を張っておいたで。あいつ、必死になって飾りが飛ばないように頑張ってたで』ってヨキは意外なサービス精神を見せてくれた。


 つーか、俺も怨念樹のことをすっかり忘れていた。まあ、結果オーライだし別にいいか。今度ご褒美にギル・アクアでも与えておこう。


 さて、部屋に戻った後はギルを起こして食堂へ。みんなこの猛吹雪にいくらかのワクワクと不安を隠せないらしく、食堂内もちょっと違う空気が流れていた。『このボロ学校大丈夫かな?』、『いっそ全部壊れてくれた方が建て直しになっていいんじゃないかしら?』といった会話が随所で行われる。ちゃっぴぃも『きゅぅ……?』って不安げに俺のローブに潜り込んだくらい。


 体が冷え切っていたため、朝食はアツアツグラタンをチョイス。チーズの濃厚な味とマカロニの食感が最高。やっぱグラタンはできたての火傷しそうになるくらいの奴がグレートにデリシャス。


 アルテアちゃんとフィルラドは二人してふうふうしてヒナたちにグラタンを与えていた。『もうずいぶん経つのに大きくならない……まさか病気?』、『十分元気だ。もう体は完成している。お前はちょっと心配し過ぎだ』って話してたけど、もちろん気高いほうがアルテアちゃんね。


 書くまでもないけど、ギルは『うめえうめえ!』ってジャガイモを喰ってた。何を思ったか、途中で外に行き、『冷凍ジャガイモもうまかったぜ!』とみんなに自慢しだす始末。もはや何も言うまい。


 さて、こんな猛吹雪でももちろん授業はある。今日の授業はキート先生の基礎魔法陣製図。キート先生も朝の見回り(朝と言うには暗すぎたけど)に参加していたらしく、かなりお疲れの様子。『あと少し遅かったら研究室の屋根が全壊していました……』って愚痴ってた。


 さて、授業が端前る前に例の落書きを確認したところ、



『掃除のおばちゃんを舐めてはいけませんよ? 彼女らは非常に高い能力を持っていますから。大量の魔法廃棄物に紛れたほんのひとかけらの危険指定物を、誤差にもならないような微小要素のそれを、確実に突き止めて文句を言ってきますからね。それも、自分でも気づかないレベルの奴です。それを考えると、あらかじめ仕込むのはかなり難しいかと。位相による隠蔽なら確実に欺く自信がありますが、ううむ』


『あっ、俺もそれしょっちゅう言われる。とりあえず、風呂場に仕掛けるのが無理なら直接乗り込む方法しかなさそうだな。揺らめきを考慮した隠蔽魔法を構築すればいけるか? 事前の準備がネックとなるが』


『それなら簡略化法を使えばなんとかなるかも。術式の魔法要素を近似して、疑似的に等価な形に落とし込めば理論上は可能。ちょうどそっち系で活躍している人にツテがあるから、オリジナルで組み終わったものを教えてくれれば解析に回せる』


『なにこれこわい。あとリッチ書きすぎ』


『こいつらガチすぎ。さすがの俺も通報を考えるレベル』


『俺さ、今まで論文集とか他分野の研究とか意味ないって思ってたけど、違ったんだな。こういう日常の些細な出来事を解決するためにああいうのはあったんだな。だからこそ、いろんなことを学ばなきゃいけないんだよな。俺、リッチとジンとインに感謝したい』


『ロリコン、お前今までなにやってたんだよ……。あと、ゼミや報告会レベルの話が出てるのに内容がすっげえくだらないっていうね! ホントお前ら愛してるぜ!』



 ……と書かれていた。なんかニューフェイスのキャラが濃すぎてラドやクゼがかすんでいる。つーかこいつらマジで何者なんだろう? よくわかんないけど、結構ガチな技術のこと話してるよね?


 とりあえず、



『では、新人三人が大枠を考えてください。僕たちは第三者の視点で評価し、全体のブラッシュアップをしていくという方針で』



 ……と書いておいた。下手に素人が口を出すより、こっちのほうがより素晴らしい成果を期待できるだろう。出来れば春休み前までに手法を確立してほしいものだ。


 さて、本日の授業内容だけど、『みんな進んでいますし、今日は自習とします。私は仕事に集中しているので、もしみなさんが席を外れてどこかへ行っても、気づかないことでしょう』とキート先生が言い出したため、そういうことになった。


 なんでも、ただでさえ学会発表が近く、その上年末だからって学校に回された仕事も多い中、今朝の猛吹雪でまたまた仕事が増えてしまったらしい。


 『シキラ先生にも、ルマルマは優秀だからクリスマス前くらい休ませてもいいんじゃね? って言われたんですよね』とはキート先生の談。『ですから、何か問題あったら全部シキラ先生のせいです。雪合戦でも雪だるまづくりでも、存分に遊んでよろしい』って言ってた。あの人、とうとう染めちゃいけないところまで染めてしまったようだ。


 そんなわけで、今日は早々に切り上げクラスルームでゆったりすることに。どうせ外には行けないし、各々クリスマスを演出したりゴロゴロしたりと実に平和な時間だった。


 そうそう、午後は煉獄ケーキを進めていく。一応は明日納品だから、あとは最終仕上げと魔導封印だけってところまでやった。あんまり日持ちがしないとはいえ、俺のケーキ用に調整した魔導封印なら三日は何とかなるしね。


 夕飯食って風呂入って雑談して今に至る。雑談中、パレッタちゃんが『奴が入ってきたときに……こう……!』ってヴィヴィディナにサンタ捕獲のための指導をしていた。天井をカサカサ這い回るヴィヴィディナはやる気に満ちた鱗粉を飛ばし、液状化して奇妙な蜘蛛の巣状のトラップを暖炉の煙突に張っていた。


 気絶しそうになったロザリィちゃんが抱き付いてきて超幸せ。『うぇぇぇ……!』って泣きそうだったので、『大丈夫、俺が守るよ』って抱きしめてちゅっ! ってしておいた。ロザリィちゃんのくちびるはいつも通りぷるぷるで甘くて最高だった。


 ギルは今日も大きなイビキをかいている。今日は外に行けなかったからか、あいつは室内用のツリーを担いで筋トレをしていた。ロフトからクラスルームの飾りつけをしていたジオルドが『サンタが来なくなるからやめとけ』って言ったらピタッとやめたけど。


 ギルはスヤスヤとイビキをかいている。こいつのプレゼントはジャガイモ……だと芸がないから、ジャガイモの専用袋でも送ろう。名前とアップリケでも縫い付けてやればきっと大喜びするはずだ。


 今日はちゃっぴぃが俺のベッドにもぐりこんでいる。クッション完備で舞踊衣装も装備済み。ギルの鼻には虚空の闇を詰め、ちゃっぴぃにしっかり毛布を掛けてぎゅってして寝ることにする。おやすみなさい。

20151225 誤字修正

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