26日目 魔法演算学:微解による術式の近似について
26日目
隣の部屋のフィルラドとポポルが血相を変えて飛び込んできた。早朝、何者かが彼らのベッドを狙撃したらしい。うちの部屋の壁も被害にあってると主張したら、無言で枕を顔面にぶち込まれた。なぜだ。
朝食はサラダをチョイス。さすが学園、野菜がすごく新鮮だ。サラダがうまいところは他のサービスも良いとはマデラさんの談。ギルのジャガイモもある意味ではサラダに近いものがあるのかもしれない。
授業はカルブの魔法演算学。今日は『~ね!』を数え忘れた。一生の不覚。
内容は微解を用いた術式の近似について。すんげえ面倒くさい術式だったり無限回の微解が可能だったりする術式の場合、演算魔法触媒を用いたとしても発動した時の結果ってのを算出するのに時間がかかる。だけど、昔の偉い人が発見した法則を用いて微解を行い、術式を近似(あくまで等価変形ではない)をすることで演算しやすくするそうだ。
厳密には元の術式と近似した術式は異なるものだけど、実用上の範囲では充分に妥当性があるからいいんだって。もちろん、精密な術式や魔法陣を組む際にはより細かい部分を考慮して近似する必要があるらしい。当然のことながら、正確性を出そうとすればするほど計算は面倒くさくなっていく。
近似式を真面目に書くとページが明日の分まで埋まってしまうので省く。とりあえず元の術式を微解したりかけたり足したり乗算したりってのを繰り返しまくるやつだった。
で、午後のフリータイム。ギルには釣り用のファットウォームを集めさせ、図書館に行く。そこで魔法植物についての文献を漁っていたら、カミシノについてのアブナイ記述を見つける。
『カミシノは栄養豊富で魔法的効能も強く、古来より、また現代においても広く珍重されている。その汎用性の高い薬効から時の権力者が武力を用いて中央に回収し、反感を抱いた領民に刺殺されたという逸話もある。この故事から死を招く果実と呼ばれるようになり、不幸の象徴として扱われていた時期もある』
そんな事実知らなかった。ただし、これには続きがあった。
『実際のところはそんな魔法的効果はない。が、そのイメージを形作る要因としてカミシノの特異な成長方法が指摘されている。というのも、カミシノの根は強く、土壌および魔法植物の栄養を文字通り根こそぎ奪うため、植えた付近が死の大地となることも珍しくない。また、庭に植えたカミシノの根が成長し、母屋をぶち壊したという報告もある。その高い薬効を求めてカミシノに群がる病人の集団も暗いイメージの一助となったのだろう。まさに死者を呼び寄せる樹に見えたはずだ』
死を呼ぶとかどうでもよくなるヤバい記述があった。俺のカミシノ、普通に栽培スペースに植えている。文字通り根こそぎほかの魔法植物がやられる。ギルのカミシノが俺のカミシノの栄養を奪っているように見えたのはこれが原因だろう。カミシノマジすげえ。
でも植えて20日近く経つのにさっき見に行ったときはなんともなってなかった。んで、ギルのイビキを聞いて思い出したけど、たぶんこないだのギルの汗がいい感じに作用したんだと思う。栄養剤と除草剤のいいとこどりの成分が含まれているに違いない。今度採取して解析にかけよう。
ギルに感謝し、今日はレイニーエッグを鼻に詰めた。おやすみ。




