255日目 基礎魔法材料学:魔平行状態図の反応の種類について
255日目
『ロザリィちゃんとステラ先生と結婚して宿屋のみんなをここに呼んで一生このまま学校生活を送りたい』……って天井に書かれていた。いったい何のことだかよくわからないけど、ギルが起きる前にさっさと消しておこうと思う。
ギルを起こして食堂へ。なんか微妙に食欲がなかったので今日は無難にサラダをチョイス。思えば、冬場でもこの質、この量のサラダを用意するって結構大変だと思う。この学校、設備はボロいくせに食費にだけは金をかけるって本当のようだ。
ちなみに、ちゃっぴぃはちょっと不満げ。『あーん♪』ってやっても『きゅぅ……』ってもそもそと食ってた。それでもきちんと食べるのは、全力でサンタを召還せんとしているためだろう。サラダを残すおこちゃまポポルに見習わせたいものだ。
もちろん、今日もギルは『うめえうめえ!』ってジャガイモを貪っていた。『俺、クリスマスプレゼントはジャガイモが良いんだ……!』ってチラッチラッて周りにアピールしてたけど、間違いなくみんなわかりきっていたと思う。
今日の授業はシキラ先生の基礎魔法材料学。出欠の時にちゃっぴぃレポートを提出したら、『お疲れさん! 総評はいるか? ほしいってんならお前らの普段のレポートの倍以上の量で提出するけど』と超笑顔で言われた。『さすがにこの程度のレポートでそれだけやるのは無理でしょう?』と聞くも、『こんだけ面白そうなのに、むしろ足りないくらいだ!』って返された。
ふと思うんだけど、先生たちが書く論文ってどれだけの文章量があるんだろう? 口ぶりから察するに、きっと俺たちが想像できないくらいの量に違いない。
そんな文章を読むのも面倒なので『気持ちだけ受け取っておきます』と返しておいた。なんかすっげぇガッカリした顔してたけど、もし受けていたらどうなったんだろうか?
内容は魔平衡状態図の反応の種類について。実は対象となる魔法材料によって魔平衡状態図はある程度の分類分けをすることができるらしく、それぞれどんな特徴なのか覚えましょうって話だった。以下にその概要を記す。
・共晶反応
魔度降下の過程で一つの液相から二つ以上の固相が混合した組織へ変化する反応。
・包晶反応
魔度降下の過程で一つの固溶魔体と液相が反応してその固溶魔体の外周に別の固溶魔体を作る反応。
・偏晶反応
魔度降下の過程で一つの液相が反応して固溶魔体と別の成分の液相を作る反応。
・共析反応
魔度降下の過程で一つの固溶魔体から二つ以上の固相が混合した組織へと変化する反応。
なんかよくわからんけどこんなもん。この反応の種類によって魔平衡状態図の形が大まかに決まるほか、その挙動も大体推測できるようになるらしい。ぶっちゃけ図がないとまるで意味が通じないと思う。シキラ先生も『この説明だけで全部理解出来たらもう単位とってるようなもんだぜ』って言ってたし。
ともあれ、詳しいことはまた来週に詰め込んでやるそうな。これ、めちゃくちゃ奥が深いから、学べば学ぶほどドツボにハマって悲惨なことになるらしい。最低限覚えなきゃいけないところだけ覚えて切りのいいところで切り上げるんだって。
そうそう、授業の終わりにクリスマスケーキの話をする。『前回と負けないくらいの材料を用意させる。卒論アブナイやつはそこで救済するってことにしてあるから』とはシキラ先生の談。まあ、全力雑用で卒論の単位がもらえるならまだマシ……なのか?
あと、去年の忘年会についても話を振ってみた。意外なことに、シキラ先生はミラジフのことが嫌いじゃないらしい。『ああいう人がいるから刺激になるんだよ! 今でも挨拶ガン無視されるけどな!』って超笑顔で言ってた。シキラ先生、普段誰かにメンチ切られることもないから、かえって新鮮で楽しいそうな。ホントクレイジーだと思う。
夕飯食って風呂入って雑談して今に至る。夕飯にはエビフライが出たのでついつい全力で食べてしまった。あと、ロザリィちゃんが『いざ、尋常に勝負!』ってエビフライゲームを仕掛けてきたので受けて立つ。
結果? もちろん……あれ、そういやあれって勝敗どうやって決めるんだろう? まあ、盛り上がって三回ほどやったってのだけ書いておくよ。赤い顔したロザリィちゃんがホント可愛くてやめられなかったんだよね。
あと、ロザリィちゃんのくちびるっていつもハートフルピーチっぽい甘い味がしてホント大好き。あの何ともいえない幸せの味を知っているのは俺だけだと思うと、溢れ出る喜びに体が震えそうになる。
どうでもいいけど、ちゃっぴぃのやつ、俺との一回だけじゃ不満だったのか、クーラスにもエビフライゲームを挑んでいた。『おい、これやってもいい……のか?』ってクーラスは困惑してたんだけど、ロザリィちゃんは『ちゃっぴぃがやりたいみたいだし、構ってもらえる?』って認めちゃったんだよね。
どうもちゃっぴぃのやつ、エプロンの影響かクーラスにもそれなりに懐いているようだ。男であれだけ懐かれているってちょっと珍しい。変なことが無いよう、クーラスの動向には注意を払っておこうと思う。
ギルは今日も大きなイビキをかいている。手ごろなものがなかったので、俺の抜け毛(髪)を詰めてみた。最近、唯一まともである俺の常識が崩壊しつつあるけど気にしない。グッナイ。




