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254日目 ちょい鬱ステラ先生

254日目


 なにもない……と思ったら、『壁にひっかき傷ができてるんだけど! 怒られないうちになんとかしてよ!』ってポポルがやってきた。……あいつの爪か。


 ギルを起こして食堂へ。今日もちゃっぴぃは『きゅ!』って素直に俺の膝に座り、お行儀よく『あーん♪』されるのを待っていた。どうやらいよいよもって本気でサンタさんを召還しようとしているらしい。あまりの事態にチョイスしたスクランブルエッグの味を感じなかった。あのときのテッドやミニリカもこんな気持ちを味わっていたのだろうか?


 書くまでもないけど、今日もギルは『うめえうめえ!』ってジャガイモを食べていた。で、お行儀よく天井をカサカサ這い回るヴィヴィディナ(わけわからん形態)に『そら!』ってジャガイモを投げていた。


 たぶん、ヴィヴィディナじゃなきゃ天井に穴が開いていたと思う。もちろん、ヴィヴィディナは甲高い笑い声をあげながらジャガイモを喰いつくしたけど。


 午前中はシキラ先生に出されたちゃっぴぃレポートに取り掛かる。天才な俺はゴロゴロしながら書いてたんだけど、途中でちゃっぴぃがこないだのクッションと共用毛布をもって俺の背中でくつろぎ始めた。


 一応は俺を温めるためにやってくれたっぽいんだけど、傍から見れば完璧に俺をベッドにしていたようにしか思えなかったと思う。まあ、あいつ軽いし別にいいんだけどさ。


 で、『きゅ?』とか言って俺の背にまたがったちゃっぴぃが手元を覗き込んできたので、『お前がいかにいい子か書いているんだ』と頬を撫でたら『きゅーっ♪』ってすんごく頬を擦りつけて懐いてきた。


 なんか地味に罪悪感を感じたけど、こいつは叱るよりほめて伸びるタイプだからこれでいいだろう。なんだかんだで躾の効果が出てきている……ような気がしなくもないし。


 なんだかんだで午前中のうちにはレポートを仕上げることに成功する。んで、午後は何をしようか……と、ちゃっぴぃのクッションを使ってごろごろしていたら(あいつが涙目になったので途中で返したけど)、『──くんにお手紙だよ!』とステラ先生がやってきてくれた。ひゃっほう。


 で、どっかで見たような封筒を渡される。今度こそ先生からのデートのお誘いのラブレターかと思ったんだけどやっぱり違う。超残念。とりあえず内容をそのまま記す。






WilruaRontica魔法学園 クラスRumaRuma ──様


・商品の発注について


 お忙しいところ失礼します。いつもお世話になっておりますWilruaRontica魔法学園属性処理研究室室長、クラスPelMelimeroのノエルノです。先日はおいしいお菓子だけでなく、楽しいお菓子パーティーにまで招待していただき、誠にありがとうございます。


 さて、早速ですが、そろそろクリスマスの時期と言うこともあり、──様にクリスマス用のケーキと言った下記の商品を注文させていただきたくご連絡しました。お手数おかけしますが、よろしくお願いします。



1.クリスマスエディション煉獄ケーキ

2.クリスマスエディションクッキーのセット×6ダース

3.クリスマスエディションハゲプリン×6ダース



 基本的には前回の煉獄ケーキと同じ方向でお願いしたいのですが、材料等、なにか必要なものはあるでしょうか。用意できるものはこちらで用意しようと思います。近いうちにご連絡いただけると幸いです。


 なお、今回は属性処理研究室が代表として連絡しましたが、魔法材料研究室も同じ内容で発注をかけたいとのことです。すでにシキラ先生からお話が回っていると聞きましたが、もしそうでなかった場合は、お手数ですが魔法材料研究室のキイラム・レイングスまで連絡してもらえると嬉しいです。


      属性処理研究室室長 ノエルノ・ルエルノ・ルティアーノ






 どうやら、クリスマスパーティー用の商品の注文らしい。この時期はマデラさんの宿でも結構この手の注文が多かったから特別驚くことはない。それよりも、『もうそんな季節かぁ……』って手紙を覗き込んだステラ先生が耳元で囁いたときの吐息に背筋がゾクッとして大変だった。無意識に女神とか、ステラ先生は歩く女神罪だと思う。


 というか、お菓子パーティーを開いたのってルマルマじゃなくてシキラ先生側だよね? まあ、細かいところはどうでもいいんだけどさ。


 とりあえず、『一週間前には材料をそろえておいてください。見積もりは前回と同じで(意訳)』とだけ書いてステラ先生にあっちに渡してもらうように頼んでおいた。


 ところが、『わかったよぅ……』ってステラ先生は今日も元気が無さそげ。なんかルマルマのクラスルームから離れたくないらしい。『先生、キミたちとずっと一緒にいたいよぉ……』って涙目になりながら女の子たちをまとめてぎゅってしてた。


 あまりの事態にさすがにみんな不審に思う。『つらいことがあるんなら、吐き出したほうが良いですよ』、『あたしたちみんな先生の味方なの!』、『一緒に筋トレしてすっきりしましょうよ!』と、温かい声が上がりまくった。


 先生、『みんなぁ……ありがとぉ……!』って感動して涙目になっていた。そんな姿もマジプリティ。


 で、ジャムクッキーとかでもてなしながら詳しく話を聞いたら、『この時期になるとね、お父さんとお母さんが「帰ってこいー!」ってうるさいの……』と答えてくれた。なんか子供っぽいような大人っぽいような実にステラ先生らしい悩みにちょっとほっこりした。


 『仲が悪いんですか?』ってポポルがすっげぇストレートに切り込んだんだけど、『そうじゃなくて、「そろそろ恋人の一人や二人連れて来い、それが無理ならお見合いの準備もできてるぞ」って言われてて……』と無気力感あふれる声で答えてくれた。


 一瞬絶望しそうになる。ステラ先生がお見合いとか考えられない。お義父様とお義母様はいったい何を考えているのだろうか。


 『先生はずっとみんなの先生でいたいの! だいたい、学校で出会いなんてあるわけないのに!』とはステラ先生の談。言われてみれば、この学校で若いのなんてキート先生かグレイベル先生くらいしかいない。が、いとこのピアナ先生が恋人持ちだけにお義父様たちは全然聞き入れてくれないそうな。


 その後もなんだかんだでステラ先生をみんなで慰める。どうやら思った以上にナーバスになっているらしく、『先生もうルマルマと結婚するもん……』って『ぷーっ!』って口を膨らませていた。そんな姿もマジプリティだった。


 夕飯食って風呂入って雑談して今に至る。結局ステラ先生は最後の最後までクラスルームでグダグダ……と言う態で俺たちと遊んでくれた。とにかく今は何もかも忘れてしまいたかったらしい。イカサマテクも今日はちょっと荒々しい感じがした。


 そういや、俺にとっては好都合だけど、どうして今までステラ先生には恋人ができなかったのだろう? 才色兼備で超女神なのに。あ、俺と言う運命の相手がいたからか。


 関係ないけど、ロザリィちゃんたち女子は『お見合いってなんかすごくオトナ……!』、『こういうシチュエーション、ちょっと憧れちゃうわよね』って話してた。ミニリカの恋愛小説もそうだけど、イマイチ俺には理解できそうにない。


 ギルは今日も大きなイビキをかいている。こいつ、ステラ先生の悩みに『筋肉見せつければ説得なんて一発っすよ!』って無駄に歯をきらめかせてポージングしてアドヴァイスしていた。ステラ先生、『うふふ……それもいいかも……』ってヤバそげな笑みを浮かべていた。先生が筋トレを始めたら全力で止めようと思う。


 とりあえず、ギルの鼻には願いの葉を詰めておいた。ステラ先生と俺とロザリィちゃんとちゃっぴぃと親友とクラスのみんなとついでにナターシャたちが幸せになりますように。


※燃えるゴミは炎と結婚。魔法廃棄物は混沌の愚穴と結婚。末永くお幸せに。

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