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250日目 基礎魔法陣製図:立体魔法陣の立体分解組立図【2】

250日目


 ギルの瞳が鏡。奴の瞳に写った俺は今日もイケメンだった。


 ギルを起こして食堂へ。妙に寒いと思ったら今日も雪が降っていた。もうすっかり冬になったのだろう。そして、今日もちゃっぴぃが『きゅーっ!』とか言いながら冷え切った手を俺の腹に当ててきやがった。せめてローブに潜り込むだけで我慢してほしいものだ。


 なんとなくそんな気分だったので、朝食にはアツアツのジャガイモをチョイス。ギルとともに『うめえうめえ!』と食べてみた。あ、ポポルも一緒に食べたんだけど、あいつはケチャップをドバドバかけてジャガイモの良さを台無しにしてしまっていた。そういうところが子供だと思う。


 今日の授業はキート先生の基礎魔法陣製図。内容は前回の作業の続きのため、課題の提出も返却もなし。製図の授業でなにもないってなんか新鮮。まあ、それ以上に重い課題に取り掛かっている最中なんだけどね。


 そうそう、例の落書きだけど、



『たしかに俺も熱くなりすぎましたね。エルが何を言っているのかわかりませんが、ここらでやめにしときましょう。……ところで、これは俺の友達の話なんですけど、今度女の子にバラを使った演出と言うか、サプライズをするらしいんです。バラ使うのってなしなんですか?』


『ちっと俺も反省しなきゃな。柄にもなく夢中になりすぎちまったみたいだ。あとエル、何か勘違いしているみたいだが俺膝枕なんてされてないぞ? だいたい、俺は気の強い女が好きつったろ? ロベリアちゃんと一緒に居たってのは別人のはずだ。あの時あそこにはアエルノの組長が暗黒結界で人除けしてたって噂があるし』


『なんでみんなチキってるんですかねえ……? ここは言及するべきでしょう……? 先生方にも教わりませんでしたか? 魔系は死んでも目的を果たせって』


『チキンはみんな再履にしねえとな。俺、伝手があるからエルの正体さえわかれば再履にしてもらうことできるぜ? ルギ、クゼ、ラド、そしてこれからみるだろうロリコン。情けない姿を見せるくらいなら覗きの方法を考案するくらいの気概を見せろや』


『エルが何言ってるのかまるでわかんねえな? 土下座したやつなんていっぱいいるし、周りがみんな許しているんだからもう問題ないんじゃないか? ま、どのみち俺には関係ないけどな。とりあえず、優しい俺は全てをなかったことにしといてやるよ!』


『ふと思ったんだが、もしかしてエルは隠蔽魔法の達人じゃないか? 言葉に偽りがないとすれば、十分にあり得るはずだ。そこまで効果は高くないとはいえ、俺もそんな魔道具に心当たりがある。それを補助とすればあるいは……!』


『なんかお前ら滑稽だな。つーか、生き残った? やつは三人か。あんだけ脅してなお書き込むとかおまえらすげえよ。バレない自信でもあるのか? ま、せっかくだしみんなで覗きの方法でも考えるか!』



 ……と書かれていた。なんか我の強い三人が加わったけど、うまい具合に話が変化してくれて非常にラッキー。あと、ラドとかクゼとか確実にバレたと思う。言い訳するにしてももうちょっとマシなやり方があるだろうに。


 とりあえず、



『では、今後はその方向で。新しい三人は適当に名乗ってください。あと、ギャラリーさんたちは今も見ているんですか? 覚悟が出来たらご自由に書き込んでくださいね。とりあえず、姿を消す魔法だと湯気とかに違和感がでるし、音も消えないからかなり難しいかと』



 ……と、書いておいた。これならどう転んでも俺の不利にはならないし、ついでに覗きの方法もわかる……かもしれないというベストの選択。まったく、自分の知略に驚きが隠せない。


 さて、今日の授業だけど、前回に引き続き立体分解組立図を進めていく。特筆すべきことは特になし。しいて言うなら、クーラスの作業がめっちゃ進んでいたってことくらいだろう。キート先生も『たぶん、この学年で一番早いんじゃないんですか?』って言ってたくらいだし。


 そうそう、授業中、窓から雪を見たキート先生が『そろそろ年末ですか……』って物憂げにため息をついていた。どうしたのかと聞いたら、『いえ、去年は凄まじい目にあったので……』と目を逸らされる。


 なかなか口を割らなかったんだけど、『ハゲプリンとルマルマキャンディ、あとクッキーも付けましょう』って言ったら『しょ、しょうがありませんね……』と口を割ってくれた。キート先生、案外チョロい。


 なんでも、去年の忘年会の際、シキラ先生、キート先生、シューン先生、グレイベル先生、そしてあのミラジフで二次会に行ったらしい。一応は親睦を深める目的だったってのと、シキラ先生が半ば強引に誘ったため、ミラジフもぶすっとしたままついてきたそうな。あ、ヨキは子供と約束があったから捕まる前に逃げたのだとか。


 が、すでにこの段階でシューン先生は完全に出来上がっており、いつもの倍以上にうざったくミラジフに絡んでいたそうな。シキラ先生は酔ってなくてもあのノリだし、まさに最悪の二人がその場にそろってしまったわけだ。


 ただでさえミラジフは不機嫌に酒を飲んでいたんだけど、ここで事件が。『あのとき、シューン先生がふざけてミラジフ先生に抱き付いて、その、そのまま……』と、キート先生は苦しそうに口から舌を出す仕草をした。


 『これ、私が言ったって言わないでくださいよ? あくまで君たちが勝手に想像しただけですからね!?』って言ってたけど、まあ、要はシューン先生がミラジフの頭からゲロったんだろう。冒険者どもが騒いだ時によくみられる光景だ。


 ちなみに、シキラ先生はその姿を見て腹を抱えてゲラゲラ笑い、ミラジフはブチキレ寸前(もうすでにシキラ先生にかなり飲まされてフラフラだったらしい)、グレイベル先生がお店の人に謝り倒し(ぶっちゃけグレイベル先生だと恫喝になるんじゃね?)て吐瀉物の後処理をしたそうな。


 『私はシューン先生を介抱しにそそくさとその場を離れました。内心、めっちゃおっかねぇ~ってビビってましたよ』ってキート先生は苦笑いしていた。


 先生が砕けた物言いするの、初めて見たかもしれない。あ、ちなみにそれ以降、ミラジフはシキラ先生を苦手にしているそうな。


 夕飯食って風呂入って雑談して今に至る。雑談中、ロザリィちゃんが『年末の宴会の後、二人切りで……ね?』とぎゅって抱き付きながら囁いてくれた。真っ赤になった顔が超かわいい。なんでロザリィちゃんはこんなにもプリティなんだろう?


 もちろん、『まかせてくれ』と笑顔で答える。ちゃっぴぃはアルテアちゃんあたりに預け、どこか景色のいいところで腕によりをかけた菓子を振る舞うと心に決めた。防寒結界を施し、初めてキスをしたところで星空を眺めながらパフェを食べるってのもロマンティックでいいかもしれない。よし、そうしよう。


 ギルは相変わらずクソうるさいイビキをかいている。そういや、こいつにプライベートの予定とかってあるのだろうか? まあ、間違いなく筋トレしかないだろう。ミーシャちゃんのためにも、デートの作法の一つや二つ教えておくべきだろうか?


 とりあえず、棚の奥のほうに中途半端に余っていた笑いの爪をやつの鼻に詰めておいた。みすやお。

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