25日目 触媒反応学:ベルデ結合の計算
25日目
ギルのまつ毛がバッサバサ。枝はもちろん跡形もない。もうゴールしてもいいかな。
朝食はボイルドエッグ。ゆでたまご。それにギルをリスペクトしてジャガイモとハムを。ゆでたまごがちょうど半熟でいい感じに塩気と甘味が混じってた。ハムとジャガイモの相性もグッド。たまにはジャガイモもいい。ギルは相変わらずストレートでジャガイモの山を『うめえうめえ!』って言って貪っている。あいつの味覚がうらやましくもあり悲しくもある。
で、今日はそんなギルを凝視する女の子がいっぱいいた。アルテアちゃんもミーシャちゃんもそのロングまつ毛の秘密を聞いてくる。ヤツは最高の笑顔で『筋肉のおかげだ!』と言い切った。アイツは脳ミソまで筋肉らしい。男子はバサバサまつ毛を見てみんなして腹を抱えてゲラゲラ笑っていた。
アエルノチュッチュ以外の女子はギルのまつ毛を観察しにこっちに来てた。その中にティキータ・ティキータのゼクトもいた。そっちの気があるのかと警戒してたら、『ムーンフェアリーの涙と炎鬼の指骨が入ったけどどうする?』と聞いてきた。なかなかに憎いチョイス。こやつやりおる。
クラスのみんなの了承を得て、相場の七割で譲ってもらう。クラス資金が溜まったと思ったらごっそり減った。でも、ムーンフェアリーの涙は結構ウマい。月光確保手段はなかなかに貴重だ。クラスの連中のカミシノや魔法植物を投資してもらえれば倍にして返してやれる。
授業はヨキの触媒反応学。あいかわらずヨキは胡散臭くて調子が良い。いつも以上に機嫌がいいと思ったら、すすり泣き事件を解決した褒賞として校長からボーナスが出たそうだ。『次の休みに家族で高い飯屋にいっちゃうぜ~♪』と言ってた。俺にも奢れ。
内容はやっぱり魔法陣触媒の計算問題。ただし、今回はベルデによる結合を用いたもの。『ベルデ結合が為された魔法陣のベルデ部分が最大浸食魔力ノルンを受けるとき、結合崩壊を防ぐために必要なベルデ魔深リンセを求めよ。ただし、ベルデの浸食許容魔応力をユリスとし、裂界許容魔応力は浸食許容魔応力の60%とする』ってやつ。
さくっと計算過程を下に示しておく。やっぱ日記帳をノートにした方がいいような気がしてきた。
浸食魔力を受ける部分のベルデ断面積に発生する許容される浸食魔応力は
浸食許容魔応力=浸食魔力/ベルデ断面積
題意より、裂界許容魔応力は
裂界許容魔応力=浸食許容魔応力*0.6
裂界魔力を受ける部分のベルデ断面積に発生する許容される裂界許容魔応力は
裂界許容魔応力=裂界魔力/ベルデ断面積
ここで、裂界魔力を受ける部分のベルデ断面積は星廻率を用いて
ベルデ断面積=星廻率*ベルデ魔深*ベルデ呑深
となる。よって、上式と合わせるとベルデ魔深は
∴ベルデ魔深=裂界魔力/(星廻率*ベルデ呑深*裂界許容魔応力)
これ書いてる時に裂開許容魔応力を二回求めていることに気づく。練習問題中にダミーパラメータを仕込むとかヨキは性格が悪い。
話そのものは単純。計算量が増えたけどやっていること自体はそこまで難しくない。今まで問題で与えられていたパラメータを自分で算出するくらいで計算そのものは公式に当てはめてやっていくだけ。
演習時間中、ポポルが操作に夢中になりすぎて演算魔法触媒を落っことしていた。しかもそのせいで術式展開がリセットされて計算がやり直しになっていた。で、悲鳴を上げながら立ち上がったら、フィルラドとクーラスの机にぶつかって二人も術式展開がリセットされた。舌打ちが重なったのが意外とツボにはまって面白かった。
ギルはまつ毛バサバサして遊んでいたよ。『あたし輝いてる!』とかふざけてたらヨキが調子に乗って『俺と一緒に笑いで天下を取ろうや!』って言ってた。笑いで天下を取るよりギルに授業内容を理解させる方がはるかに難しいと思う。
問題にめげずに取り組むロザリィちゃんがエクセレントプリティ。こっそり解答を見せてあげたかった。でも彼女ならきっと断るんだろうな。そんなところに惚れる。
4週目に入ってから日記が妙に長くなった。インク壺ももうスッカラカンだ。今日は基本に立ち返ってインク壺のコルク栓をギルの鼻に詰めた。さすが鉄板、カミシノ並みの消音効果だ。なんで俺はもっと早くにこいつを試さなかったのだろう? 安眠ライフがプロミスされたかもしれない。ひゃっほう。




