表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
249/368

248日目 基礎魔法材料学:相律と魔自由度

248日目


 ギルの筋肉がしゅわしゅわしている。何を言ってるのかわからないだろうが、俺にもわからない。


 しゅわしゅわ筋肉のギルを引き連れ食堂へ。ある意味予想通り、ミーシャちゃん、パレッタちゃん、ポポル、ヴィヴィディナ、ちゃっぴぃ、エッグ婦人、ヒナたちがしゅわしゅわするギルの筋肉を触って遊んでいた。俺もちょっと触ってみたけど、ぷにぷにだったりカチコチだったりでうまく表現できない触感。あいつの筋肉どうなってんだろ?


 朝食はあったかオニオンスープをチョイス。どっしりと贅沢にオニオンが使われており、見た目以上にボリュームがすごい。おなかの底からぽっかぽか。もちろん、書くまでもなく超デリシャス。やっぱ冬ってこれだよね。


 ギルは今日も『うめえうめえ!』ってジャガイモを食べていた。『ジャガイモばかりだと栄養偏るぞ』ってオニオンスープを用意してやったら、『サンキュー親友!』とお礼にジャガイモをいっぱいもらった。


 正直対処に困る。ちゃっぴぃにも手伝ってもらったけど、『きゅぅ……!』ってあいつは三つでダウンしやがった。あと、『さ、さすがにキツイかも……』って俺と一緒にジャガイモを食べてくれるロザリィちゃんが最高にプリティでした。


 今日の授業はシキラ先生の基礎魔法材料学。今日も出欠を取るのがめっちゃはやい……のはよかったんだけど、『──、こないだのレポートはいつ提出するんだ? 俺ずっと待っているんだけど』と返事をした時に言われてしまった。


 シキラ先生、マジであれをレポート課題として出していたつもりだったらしい。名も知らぬ上級生が『あきらめろ、俺も【カルボナーラレポート】を作らされたことがある』って肩ポンしてくれた。


 なんでも、町のレストランで出るカルボナーラのお値段と使用材料から推測される材料費を比較し、どのレストランのカルボナーラが一番お得か、あるいはぼったくりかを調査しろと言うものだったそうな。


 『カルボナーラがうまい店はだいたいアタリだ』とはシキラ先生の談。もともと先生が長期休暇中に暇つぶしでやった調査を学生に引き継いで研究として纏めさせたらしい。意外なことに、味はそこそこ、量はちょっと大目が売りの路地裏レストランのカルボナーラがコスパ最強だったとか。


 とりあえず、『来週にまとめて提出します』とだけ言っておいた。割とガチっぽいレポートを作る羽目になったことに驚きを隠せない。どうせなら俺もカルボナーラレポートが良かった。


 肝心の授業内容だけど、前回に続き状態平衡魔図……の相律について学んだ。これ、ちょっと難しい話でよくわかんなかったけど、とりあえず『ここメモっとけばなんとかなるんじゃね?』ってシキラ先生が言っていたところを写しておくことにする。



『魔法材料の状態は、魔度、魔応力、成分という状態変数により定まる。一般的な魔法水は一成分であり、魔度と魔応力の関係により気相、液相、固相となることは周知の事実である。多くの固体的魔法材料、例えば黄穂鉱ではカプラとジクノの二成分となり、これらの組成により固溶魔体や魔法化合物のような成分の材料とは異なった層が現れ、より複雑な系を扱うことになる。このような、状態変数の関係を示したそれを相律と呼ぶ。


 これはあくまで平衡状態の場合に性質する関係であり、このとき魔法材料を構成する相の数をα、独立な成分の数をβとすると、



γ=α-β+2



 で表すことができる。γは互いに独立に変化させることのできる魔度、魔応力、および組成の条件の数で、特に魔自由度と呼ばれる』



 うん、もう何言ってるかわかんないよね。前回までは普通にすんなり頭に入ってきたけど、今回は飲み込むのにかなり時間がかかった。再履が多いってのも、だぶんこの魔平衡状態図のところでつまずくやつが多いからなんだろうと思う。


 しかもこれ、あくまで魔平衡状態図の説明と言うか前提に成り立っている理論の話だから、これそのものがメインってわけじゃない。『ま、これくらい楽勝過ぎてあくびが出るだろ?』って猛烈な勢いでチョークを振るうシキラ先生に誰もが戦慄した。


 当然のことながら、ギルやミーシャちゃん、ポポルは途中で理解するのをあきらめてノートに落書きをしていた。アルテアちゃんも意味がまるで分らなかったらしく、ずっとしかめっ面してノートをとっていた。なんだかんだでちゃんとできたのって俺とクーラスくらいだと思う。


 ロザリィちゃん? 『もう無理ですぅ……!』って俺に抱き付いてきたよ。涙目かついい匂いがして今日も最高にプリティ。あと、柔らかいのがめっちゃ当たっている。なんでこうもかわいいのか、それを理解する方がよっぽと難しいと思ったのは俺だけじゃないはずだ。


 なお、『魔自由度が大きいと実験としてはラッキーだ。だっていろいろ弄れるからな。魔自由度が小さいと解析としてはハッピーだ。だって条件指定が少なくて解析しやすいからな。だから、魔自由度の大小で実験屋と解析屋はケンカばっかしてるんだぜ!』ってシキラ先生が言ってた。


 『解析のこと考えろやコラァ!』、『現実的にありえない条件で実験しても意味ないだろうがコラァ!』って日々ハートフルに罵り合いながら共同で研究を進めているそうな。ちなみに、シキラ先生は嫌がらせのためだけに敢えて無駄に魔自由度を操作した材料を回したりすることもあるそうな。


 夕飯喰って風呂入って雑談して今に至る。あと二週間くらいで冬休みのはずだけど、果たして無事に楽しいクリスマスを迎えられるのだろうか。何があってもいいように、早めにケーキやプレゼントの準備をしておいたほうが良いかもしれない。


 ギルは今日も大きなイビキをかいている。こいつ、座学は致命的にダメなのにどうしてこうも安らかに眠れるのだろうか。こいつの図太さって才能だと思う。


 とりあえず、ちゃっぴぃがいつの間にか拾ってきてしまったヘルドングリを鼻に詰めてみた。没収したのはいいんだけど、処分に困ってたんだよね。おやすみなさい。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ