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247日目 入浴剤ちょういいかほり

247日目


 ギルの口からマンドラゴラの腕がコンニチワしていた。とりあえず握手して窓からぶん投げた。


 ギルを起こして食堂へ。昨日の雪が未だに残っており、食堂もすんげえ寒い。使い魔たちが暖炉の前のあったかいところを占拠するもんだから人間たちがちょうぷるぷる震えている。


 エッグ婦人もヒナたちもちゃっぴぃもヴィヴィディナ(サソリ形態)も当然のように暖炉にあたっているし、どっかのクラスのサラマンダーとかドリアードとかも。あ、いつぞやのフェデルタカーネのメリィちゃんとヒキガエルのブチちゃんもいた。どっかで見たクリスタルリッチとベイビードラゴンものほほんと暖炉にあたっていた。


 もちろん、ギルは『うめえうめえ!』と大量のジャガイモを平らげる。あ、ミーシャちゃんがギルの膝に乗って暖を取ってたよ。『すごくぬくぬくなの♪』とちょう幸せそう。蒸かしたてジャガイモとギルの体温でめっちゃ暖かいそうな。


 さて、朝食中、今日こそは機会を失うまいと『今日はみんなで早めに風呂に入ろうぜ!』とティキータ、バルト、そしてアエルノの連中に声をかける。ゼクトが『ようやく入浴剤か!』とうれしそう。あのラフォイドルも『……高級宿屋の息子としてのお前を信じよう』と意外にもノリノリ。


 で、話を聞いていたシャンテちゃんも『どうせいっぱいあるんでしょ? 女子にも一個だけくれない?』と聞いてきた。が、『悪いけど、これは男の友情の結晶だから』と断る。『デート権を付けてあげるよ?』と魅力的な提案をされるも、『そこまで安い男じゃないから』とちゃんと断った。


 別に、にこにこガチ笑顔(眼は笑っていない)のロザリィちゃんにローブを引っ張られたからじゃない。ちゃんとロザリィちゃんには『あんな危険物、ロザリィちゃんも入るお風呂には使えないからね』と真相を話しておいた。『それならいいんだよ♪』ってほっぺにちゅっ! ってしてくれて超幸せ。ロザリィちゃんのぬくもりがホント愛おしい。


 なお、『……聞いちゃいけないことを聞いたの』とミーシャちゃんがつぶやいていたけど、パレッタちゃんが『混沌こそヴィヴィディナの喜び。それに、私たちには関係ないでしょ?』とミーシャちゃんを諭してくれていた。今度ガチハゲプリンでも送ろうと思う。


 さて、なんだかんだで午後の早い時間、みんなで風呂を楽しむことに。あ、ロザリィちゃんには午前中にちょっぱやで作ったマデラさんの宿仕様の入浴剤を渡しておいた。


 『すっごく楽しみ!』って言いながら女湯へ至る道に消えていくロザリィちゃんが超かわいかった。今日は女子たちも早めに風呂入ってリラックスるんだって。


 で、早速湯船に入浴剤を投入。周りの連中、なぜか広域多重結界を張って厳戒態勢だったけど、普通にしゅわしゅわと泡が出ていい匂いが風呂場に広がっていく。あと、お湯がほんのりと紫がかった乳白色に。


 『えっまとも』と驚くクーラス。『しゅわしゅわのとか超贅沢じゃん!』とポポル。『……仕事ならきちんとやるんだな』とラフォイドル。『俺乳白色のって初めてだ!』とゼクト。

 

 とりあえず、クーラスとラフォイドルにはケツビンタをしておいた。あいつら、人を何だと思っているのだろう?


 予想に反して、入浴剤はその後もいい感じにしゅわしゅわしていく。時間が経つにつれ香りが広がっていくし、色もどんどん広がっていく。フィルラドに全身を洗われるエッグ婦人もいつも以上に機嫌が良さげ。ラフォイドルでさえ、『こういうのでいいんだよ……』ってすっごくリラックスしていた。


 しかし、風呂に入ってしばらくしたあたりでとうとう事件は起こる。ぼうっとしゅわしゅわを眺めていたジオルドが、『……なんか、噴き出る泡の量が増えていないか?』と言い出した。


 で、改めてよく見ると、明らかにしゅわしゅわが加速している。最初は普通の入浴剤と同じだったのに、煮えたぎるお湯みたいにボコボコしてた。気泡も大きく、ありていに言って爆発しそうな感じ。


 『どうすんだ!?』とポポルが悲鳴を上げるころには、すでに泡は臨界を超えはじめ、湯船からお湯もろともあふれかけていた。


 もうね、焦ったね。『やっぱりこうなるのか!』とラフォイドルが暗黒封印を施し、『マジでシャレになんねえぞ!?』とゼクトがそれに付与魔法をかけて強化する。しかし、杖なしで放った魔法だからか、暗黒にひびが入って中規模の爆発が。


 幸い、この時はゼクトとラフォイドルが全身フローラルになった程度だったけど、『あの入浴剤、入れたときから大きさ変わってないぞ!?』、『これから大規模爆発が起きる! 死にたくなけりゃ全力で封じろッ!』とステキな情報が二人からもたらされた。


 男子の総力を挙げた結界が手のひらにちょこんと乗る程度の入浴剤に仕掛けられる。あの場にいた男子全員がやったから、単純に考えて三十以上積層されていたはず。ポポルは連射魔法で多重に展開していたし、ラフォイドルの暗黒封印もあったし、俺も吸収魔法を支配的にした結界を張ったんだけど、それでなお爆発の予兆(でいいのか? ともかく変な脈動の前座の爆発)だけで全部吹っ飛んだ。


 杖なしの魔法とはいえ、さすがに驚きを隠せない。『あ、こりゃ終わったな』ってクーラスが達観したレベル。


 しかし、最後の最後で『俺に任せろ!』とギルが躍り出た。無駄にたくましい筋肉が輝いている。『魔法でダメなら、力づくで抑え込むまでだ!』と、奴はそれを抑えようと、全力でそれを握りしめた。


 『バカ、やめろ』の一言をなぜあの場で言えなかったのか。みんなそれ見た瞬間に出口にダッシュしたんだよね。


 直後に爆発音。全身を襲う衝撃。お湯と泡が氾濫し、みんなそれに飲まれて流された。流された先はもちろん浴場前のロビー。


 うん、みんな気づいたときさ、お風呂上がりの談笑を楽しむ女子たちの前にいたんだよね。


 もちろん全身泡まみれ。そしてフルチン。女子たち、真っ赤になったり明後日の方向を見たり汚物を見るような眼をしていたよ。あ、でも悲鳴を上げる子が一人もいないあたり、みんな魔系だって思った。


 ここから先はあえてあまり書かないことにする。とりあえず、『その粗末で見苦しいものをどうにかしろ』ってパレッタちゃんが群体ヴィヴィディナを男子の……ねえ?


 ポポルは『さすがにそれはやめてくれえええ!』って泣き叫んでたよ。ヴィヴィディナがいなきゃ全部丸見えだったってのに。


 そうそう、ラフォイドルもゼクトもしくしく泣いていた。『もうお婿にいけない……』、『またこれなのかよぉ……』ってヴィヴィディナをまとったまま呟いていた。もちろん、奴らの嘆きは股間のヴィヴィディナがおいしくいただいていた。


 俺? 俺はこういうこともあろうかとタオルを隠し持ってたからセーフだったよ。ギルはミーシャちゃんがとっさにリボンで隠してくれたから問題なし。なんだかんだで泣いてなかったのって俺とギルだけだったと思う。


 夕飯食って雑談して今に至る。雑談中、ロザリィちゃんが『──くんは私だけのものですからっ!』ってぎゅっ! って抱きしめてくれた。いつになく情熱的。どうしたのかと思ったら、俺の裸(タオル巻いてたからセーフ)をほかの女の子に見られたのがたまらなく悔しいらしい。


 『私とステラ先生だけしか知らなくていいのに……!』って言ってたけど、まさか、ね? あれ、風邪の時だからノーカンだよね? つーかマジでそうなの?


 なんだかんだで動揺しているせいか、全体的に文章にまとまりがない気がする。そして、爆発の原因であるギルはそんなことを気にした様子もなくスヤスヤと大きなイビキをかいている。


 とりあえず、奴の鼻にはどさくさに紛れて回収した入浴剤の欠片を詰めてみた。グッナイ。


※燃えるゴミ→爆発、魔法廃棄物→爆発しない

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