244日目 魔法構築学:裂造速度と魔法刃寿命の関係について
244日目
天井に満天の星空が広がっている。上階は無事。ちょう平和的できれい。こういうのでいいんだよ。
ギルを起こし、しばし星の海に見惚れてから食堂へ。クーラスが大きなピザパンを食べるとのことだったのではんぶんこすることに。トマトの風味と濃厚なチーズ、あとカリカリに焼けた端の部分が最高にデリシャス。ちゃっぴぃも『きゅーっ♪』ってうまそうに食ってた。
なお、クーラスは『ジャガイモちょっと足らないな』って『うめえうめえ!』とジャガイモを貪るギルから一つ失敬し、自分で切って焼いて追加していた。なかなか小粋な技を使いよる。
あと、アルテアちゃん、パレッタちゃん、ミーシャちゃんと同じようにピザパンを食べていたロザリィちゃんのほっぺにトマトソースがついていたので、『慌て過ぎだよ』ってちゅっ! ってやって取ってあげた。
そしたら、『──くんもね♪』ってロザリィちゃんが俺のほっぺにちゅっ♪ ってしてくれたのぉぉぉぉぉ! もうね、マジで朝から超幸せ! ロザリィちゃんがプリティすぎてもう俺どうにかしそう!
なお、朝からケーキを喰いまくってたジオルドが『……わざとつけてただろ?』と俺に舌打ちしてきた。『バレちゃった♪』とロザリィちゃん。微笑みが小悪魔過ぎて秒間一億万回惚れ直した。
あと俺、ガチでほっぺにチーズがついていたことには気づかなかった。そういや、宿屋でもミニリカに『いつまでたっても子供じゃのう』ってちょくちょく口をふかれていた気がする。もうすっかり治ったはずなのに、気が緩んでいたのだろうか。
今日の授業はシューン先生の魔法構築学。ローブは相変わらずズボンにインしていて、出欠取るのがめっちゃ遅い。ローブを解放したらキビキビしてくれるようになるのだろうか?
ちなみにこのスタイル、もう奥さんは口を出すことをあきらめたらしい。『結婚するとき、なぜか「これだけは諦めるしかないわね」って困ったように笑われたんだよな』ってシューン先生が不思議がっていた。
内容は裂造速度と魔法刃寿命の関係について。前々から魔法刃の寿命って言葉が出てきたけど、これ、要は魔法刃がぶっ壊れて使い物にならなくなるまでの時間のことを指している。
当然っちゃ当然だけど、その寿命と裂造速度(どんだけの速さで裂造するか)ってのは密接にかかわってきていて、両者は互いにトレードオフの関係にあるらしい。
以下に、いつも通りそのメモを記す。
【魔法刃寿命を長くすると(裂造速度を低くすると)】
・陣造所要時間が長くなる(能率低下、コスト増)。
・魔法刃にかかるコストは少なくなる(コスト減)。
・魔法刃交換は少なくなる(能率向上)。
【裂造速度を高くすると(魔法刃寿命を短くすると)】
・裂造そのものは高能率化(コスト減、能率向上)
・魔法刃交換の頻度大(コスト増、能率低下)
なんか矛盾しているところもあるけどこんな感じ。どっちもメリットデメリットがあるから適宜使い分けるのが理想らしい。
あ、基本的すぎてすんげえ今更だけど、能率、コスト、品質は陣造という大きな分野において重要な三要素らしい。意味はそのまま。そのまますぎて今まで書くのを忘れていた。
当然のことながら、先達たちはこれらの関係を綺麗に式にまとめ、裂造速度をどのように設定すれば高能率か、ある条件下で魔法刃寿命を保ちつつコストも両立させたいときはどのくらいの裂造速度であるべきかってのを求められるようにしたらしい。
で、説明が終わった後はひたすら練習問題を解く。あるシチュエーションでの陣造条件において、最速、最高能率、最高寿命はどれくらいですかって問題をやった。
久しぶりに演算魔法触媒を使ったからか、術式の入力ミスをする人がいっぱい。かくいう俺も三回も間違えた。やっぱアレ使わないと腕が鈍るよね。しかもうっかり忘れても人の借りられないし。つーか、人の演算魔法触媒ってクセがあるからよほどのことが無い限りまともに動かすことができないし。
シューン先生も『学生時代はどの型の演算魔法触媒を持ってるかで派閥ができた。たとえ同室の奴であっても、違う型をもってるやつはその時だけは敵だった』って言ってた。やっぱ魔系なら演算魔法触媒にはこだわりたいよね。デートの時も持ち歩くくらいだし。
夕飯食って風呂入って雑談して今に至る。就寝前にふと虫篭を見たら、何匹がが越冬の準備を進めていた。代替わりして生命を全うするやつもいるっぽいので、無駄にならないうちにすり潰して接着剤にしてしまおうと思う。時間があったら水槽の点検もしておきたい。
ギルは今日もスヤスヤとうるさいイビキをかいている。今日はいい感じにすっきりまとめられた感じがしてちょっとうれしい。鼻には王の尾を詰めてみた。グッナイ。




