241日目 基礎魔法材料学:魔平衡状態図の概要
241日目
ギルの胸筋がぷるぷる。怒るべきか泣くべきか吐くべきか、もう何も考えたくない。
ギルの胸揺れを見せつけられながら食堂へ。通りすがる連中みんながギルの胸が揺れているのを見て、ぎょっとした表情で二度見してくる。首から上を隠せばかつてないほどの逸材なだけに、絶望感が半端ない。
なお、ミーシャちゃんは『これならいい感じなの!』ってギルの膝に座ってそのたゆんたゆんの胸筋をクッションとして楽しんでいた。一周回って乾いた笑みが漏れ出るレベル。
もちろん、ギルは今日も『うめえうめえ!』とジャガイモを貪る。ジャガイモを食べるたびにそれが震え、ミーシャちゃんの頭に程よい刺激をもたらしていた。触り心地だけはとてもとてもよさそうで、本能に抗えなかったらしきポポルとちゃっぴぃが猛烈な勢いでギルの胸筋をたぷたぷして遊んでいた。
ちなみに、渇欲のパレッタちゃんは今日も本能に忠実。ギルの胸筋をたぷたぷし、その後に自分の胸を見て『……クソがッ!』って盛大な舌打ちをしていた。ギルの胸筋レベルの大きさあるのってウチのクラスでも数人しかいないしね。
さて、今日はシキラ先生の基礎魔法材料学。あのシキラ先生がギルを見て反応しないはずがなく、『俺最近耳遠くなったから、誰か返事したらそれ揺らして教えてくれよ!』とワルノリ。
ギルは当然『おやすいご用っすよ!』とポージングを決めて答える。返事が聞こえるたびにポージングを変え、そのたびに胸筋が揺れる。シキラ先生、腹の底からゲラゲラ笑ってた。
授業内容は魔平衡状態図について。今日からちょっと新しい分野に入るらしく、『ここがガチで再履か否かの分かれ道だから気合入れろ』とのこと。面倒くさくてややこしくて間違えやすいところなのだそうだ。
さて、この魔平衡状態図ってやつだけど、複合魔法材料の組成と魔度の関係を示したものらしい。その複合魔法材料(多くは二成分で構成)の組成比や魔度が変わったとき、全体としてどういう変化が起こるのかを分かりやすくまとめたものだそうだ。
今回はあくまでさわりってことで、単語の確認と概要だけやった。以下にメモを記す。
・系
独立した一つの状態を示す魔法物質の集合。普通の材料って思えば問題なし。
・相
系を構成する均一な部分で、同じ魔法的性質を持つそれ。要は気体的か液体的か固体的かってこと。
・成分
系を構成する魔法的物質。例えばジクノとかカプラとか。
・組成
成分魔法物質の量比。ぶっちゃけ濃度と思ってよし。
このメモだけじゃわかりにくいと思うけど、要は魔法材料が周囲の環境でどんなふうに変化し、私たちはそれをどう利用しましょうかって話。魔系の中では割と重要なところらしく、これができない魔系はモグリかゴミかゴブリンのクソのどれかだってシキラ先生が言ってた。
あと、『来週からガチだから。せいぜい楽しい週末を過ごしとけ』と穏やかな笑顔で宣告される。いつも以上にちびりそうになったのはなぜだろうか?
そうそう、授業後にシキラ先生に呼び止められる。何かと思ったら、『クリスマスにケーキとか注文するからよろしく! 基本は前回と同じ方向で!』とのこと。
ちょっと前にお菓子パーティーをやったのにもう次のイベントとか、時の流れの速さに驚きを隠せない。幸い時間に余裕はあるから、ちょっとずつ準備を進めておこうと思う。
夕飯食って風呂入って雑談して今に至る。雑談中、ミーシャちゃんがとうとう念願のギル枕を堪能していた。ギルもそこはかとなく嬉しそう。『初めて固くない筋肉に喜びを覚えた』って新しい何かに目覚めそうになっていた。
ちょっと短いが今日はこんなもんにしておこう。まだ一週間も始まったばかりだ。日記書くので夜更かししたらマデラさんに地獄の百連ケツビンタされるからね。
ギルは今日も大きなイビキをかいている。そういや、今日はロザリィちゃんとあまり話せなかった。せいぜい、『ギルのあれやってくれない?』って冗談めかして言ったときに『……えっち』ってデコピンされたくらい。『これで我慢するように!』って頭ポンポンしてくれたから別にいいけど。
ちょっと趣向を凝らし、ギルの鼻には空気を詰めてみ……ようとしたけど難しいので、夢見がちな心石を詰めてみた。なぜかヴィヴィディナに浸食されていて捨てるに捨てられなかったんだよね。




