24日目 基礎魔法概論:陣造欠陥とその検査方法について
24日目
ギルがアゴヒゲ。もうやだ。
朝食はちょっと重めにミートパイ。味はあっさりめで意外と入る。さすがはおばちゃん。ちゃんと創意工夫を凝らしているらしい。あぐあぐと頑張って頬張ろうとするロザリィちゃんがベリーキュート。なんでキミはそんなにキュートなの?
アゴヒゲと化したギルはポポルやフィルラドの背後に忍び寄って首筋にジョリジョリ攻撃をしてた。二人ともオレンジジュースを吹いていた。ジオルドやクーラスはとっさに首筋をガードしたけど、ヤツの筋肉は本物で、アゴヒゲは剛毛だ。コンソメスープ吹いてた。
女子にもやりだそうとしたので止めた。やるならアエルノチュッチュにしろと言ったら、アエルノチュッチュの連中が雷を聞いたラットマンたちの様に散っていった。
今日の授業は基礎魔法概論。シューン先生はローブを新調したって嬉しそうに話していた。ズボンにインしているから全然わかんないのに。魔法使いはクレイジーが多いって言われる理由が分かった気がする。
内容は陣造の際に起こりうる欠陥とその検査方法について。
陣欠陥ってのは、当たり前だけどあるといろいろとまずい。魔力効率が落ちたり威力が低くなったりする程度のことがほとんどではあるけれど、致命的な欠陥になると魔法そのものが変わってしまったり暴発して味方を巻き添えにしたり、自分自身を傷つけてしまうことがある。
とりあえずメモの一部を下に示す。ふと思ったけど、基礎魔法概論のノートをこの日記にした方が二度手間を防げるんじゃないだろうか。
『陣の欠陥においてメジャーなものの一つに魔隙、すなわち陣型の中に出来た極点的な魔力欠落部があげられる。この発生要因としては陣造の際に本来発散されるべき浸食魔力が発散されずに陣型に閉じ込められてしまうことがあげられる。対策としては陣の生成魔力を十分に練成したり触媒を用いて環境を整えることで浸食魔力の影響を少なくするといった方法がある。また、魔力属性や陣型そのものを考慮することでも浸食魔力は抑えられる。
次に縮魔隙が挙げられる。これは陣造の最終段階、すなわち陣型が完成した直後に起こり得るもので、外的要因、触媒の相性、または術式との相性により魔力が固定される際に魔歪が発生し、陣型の内部に極点的な魔力欠落部が生じることを言う。対策としては魔力固定の安定のために陣造に時間をかけるほか、あらかじめ縮魔隙が予想される場合は外部からの魔力干渉を行って魔歪を打ち消す方法が採られる。
どちらの欠陥も欠陥が起きにくい陣型を考慮するのが非常に有効かつ実用的であり、今日私たちが使用している魔法陣のほぼすべてはそういったコンセプトのファンクションパターンが組み込まれている。
この欠陥の検出方法としては魔反射法、魔透過法、魔共振法などがある。魔反射法は魔力パルス波を発信し、その反射波を解析することで欠陥を検知する方法である。魔透過法は魔法陣の表面から魔力波を発信し、裏面に届く魔力波の強弱で欠陥を検知する。魔共振法は連続的な魔振動を部分的に魔法陣に与え、その反応性の違いから欠陥部位を割り出す』
ぶっちゃけちゃんと設計して丁寧に陣造すれば全部の問題は解決すると思う。あと、欠陥の検知方法は円型魔法陣みたいに大規模使用や長時間使用が前提とされる場合に使うことがほとんどで、個人が魔物と闘うような実戦の場合には使わないって。つーか、小規模魔法陣だったらそれに伴う欠陥も小規模になってよほどのことがない限り暴発はしないってシューン先生が言ってた。
いちいち調べるのって結構面倒だし、大事なんだろうけど使いどころは結構限られていると思う。
内容がちょっと深くなってきたからか、メモの量も多い。あとザントマンは砂嵐を起こしていた。毎回不思議に思うけど、ギルは居眠りの時はイビキをかかないんだよな。いったい何が違うんだろう?
眠るまいと頑張って目をしぱしぱさせるロザリィちゃんに心を射抜かれる。席替えで隣になったら、もしかして眠るときに寄りかかってきてくれるかもしれない。
そんな妄想を打ち砕くほどギルのイビキがうるさいので、今日はアルラウネの小枝を鼻に刺す。鼻に物が詰まっているのにいったいどこから音が出てるのだろうか?




