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237日目 魔法構築学:魔耗のメカニズムについて

237日目


 ギルの髪の毛が絡まっている。せっかくなので解いて三つ編みにしておいた。


 ギルを起こし、ちゃっぴぃをおんぶして食堂へ。未だにちゃっぴぃは不機嫌なままだけど、以前に比べたらだいぶマシ。おそらく、衣装がなかったという事実そのものはだいぶ受け入れたものの、プライドと言うか意地と言うか、ともかくそんなものが燻って素直になれないのだろう。


 で、『きゅ!』とか言って尾っぽで俺のケツを叩いてきたちゃっぴぃに従い、髪を三つ編みに編んであげていたら、朝から女神ステラ先生が食堂にやってきてくれた。ひゃっほう。


 どうやら、あれからずっと衣装を受け取ってしまったことを気に病んでいたらしい。『こんなもので代わりになるはずなんてないけど、こないだはごめんね?』と超高級クッキーセットをちゃっぴぃにプレゼントしてくれた。正直ちゃっぴぃにはもったいないレベルのやつ。


 ちゃっぴぃ、『きゅ♪』とか言いながらステラ先生の胸に顔を埋めた。そのままひしっと抱き付き、これ見よがしに『きゅぅん?』と俺を舐めくさった眼で見下してくる。奴の腕が食い込んでめっちゃセクシーになったステラ先生の胸に見とれてなければブチ切れていたかもしれない。


 なお、ステラ先生は『や、ちょ、恥ずかしいよ……!』って真っ赤になりながらもしっかりちゃっぴぃを抱きしめていた。俺も一緒に抱きしめてほしかった。


 なお、ギルは『今日は変則的に焼いちゃったぜ! ジャガイモの香ばしさを存分に楽しめる逸品だ!』と、スライスしたジャガイモを焼いたものをちゃっぴぃに提供していた。


 まさか、自力でガレットに辿り着くとは。ギルの執念に驚きを隠せない。チーズとかケチャップとか何も使っていない、塩コショウしか味付けのないシンプル過ぎる奴なのに、ジャガイモのうまみと香りが存分に活かされ、文字通りジャガイモそのものを楽しめる逸品だった。


 しかも、外はカリッと、中は程よくもちっとで食感も絶妙。手軽に食べられるのも高評価。宴会の席で出せば人気になるのは疑いようがない。つーか食べた瞬間、改良が加えられたうえで俺の頭のレシピ帳に刻まれた。


 ちゃっぴぃもその魅力に抗えなかったのか『きゅ……!?』と一口食って驚いた顔をしていた。ミーシャちゃんも『カリッカリでとってもおいしいの!』とリボンも駆使してバクバク食ってた。ポポルとヒナたちも『うめえうめえ!』って食ってた。アルテアちゃんもこっそり『あ、おいしい』って食べてた。ステラ先生も『先生、これ結構好きかも!』って顔をほころばせながら食べていた。女神過ぎて一瞬天国かと思った。


 ノーマルポテト、マッシュポテト、フライドポテトと来てまさかここまで発展するとは思わなかった。『明日こそジャガイモの真の素晴らしさを教えてやる……!』とギルは超やる気。これはちょっと明日の朝食が楽しみだ。


 ちなみに、みんなで食べてなお余りまくったガレットはギルが『うめえうめえ!』と責任もって食べてた。


 さて、今日の授業はシューン先生の魔法構築学。今日もローブはズボンにイン。最近寒くなってきたから、めっちゃ温かそう。『みんなもこのスタイル真似していいぞ! これは先生のジャスティスだけどな!』ってシューン先生は言ってた。そんな無駄話をしていたせいで余計に出欠を取るのが遅くなってた。


 内容は魔耗のメカニズムについて。前回は裂造の際に生じる魔法刃の魔耗について学んだわけだけど、じゃあその魔耗はどうして、何が原因で起こるのかって話。原因がわからなければ対処のしようがないからね。


 例によって例のごとく、以下にその内容を記す。



・凝着魔耗

魔法材料、または触媒と魔法刃の接触面でミクロスケールの魔法的結合が形成され、その状態を保持したまま裂造が行われることで、魔法刃の構成材料の一部が魔法材料に付着したまま取り去られることにより発生する魔耗。構成魔刃先が脱落する際にも起こる。


・アグレシブ魔耗

高魔硬を誇る魔法材料により、魔法刃が魔法的に削り取られることによって発生する魔耗。通常、魔法刃には裂造対象の魔法材料よりも高魔硬を誇る魔法材料で構成されたものを用いるため、主に魔法材料中に存在する介在物や陣造硬化した魔塵が魔法刃をひっかくように干渉することで起こるとされている。


・拡散魔耗

魔法刃と魔法材料間で魔素の拡散が生じた結果、魔法刃表層の材質が変質することで誘発される魔耗。陣造による魔度の上昇がこれに大きく影響されることが知られており、低魔度の裂造においてはあまり生じない。



 魔耗が生じた際はその原因を調べて対策することで魔法刃の寿命を延ばせるってシューン先生は言ってたけど、いったいどうやってどんな魔耗が起きているのか調べるのだろうか。肝心なところを言わないあたり、あの人も割と適当に授業していると思う。


 もちろんザントマンの砂嵐は健在。教室はそれなりに寒いから、みんながみんなのローブを寄せ合って居眠りしていた。中には毛布を持ち出すツワモノもいる。さすがにアウトだろうと思ったけど、『先生も昔はそれよくやってたぞ! なんかみんなでイタズラするみたいでドキドキするよな!』ってやたら嬉しそうだった。


 ちなみに、ロザリィちゃんも『くかーっ……』って居眠りして俺にもたれかかってきてた。朝からずっと眠そう……というか、ここのところ夜遅くまで作業しているみたいだし、疲れているのだろう。起こすのも忍びなかったので授業終わりまでローブをかけてそのまま寝かせてあげた。


 もうね、ロザリィちゃんの寝顔は可愛すぎる。あと女の子特有の甘いにおいも最高。微妙にロザリィちゃんの匂いが俺のローブに移っていてテンションマックス。『恥ずかしいから、すーはーするのは周りに誰もいないところでねっ!』って真っ赤になりながら俺に告げるロザリィちゃんはエクセレント過ぎた。


 夕飯食って風呂入って雑談して今に至る。今日は珍しくギルも遅くまで起きていて『究極のジャガイモ料理……その本質はどこにある……? いや、あるいは至高のジャガイモさえあればその真理は全くの無意味と化すのではないか……?』って真剣に悩んでいた。


 とりあえず『筋肉の導きに従えばいいんじゃないか?』ってアドヴァイスしたら『さすが親友! おかげでジャガイモ方程式が解けるぜ!』ってめっちゃ喜んでくれた。考えるのをやめた俺を誰か許してほしい。


 何かをつかんだギルは今日も大きなイビキをかいて寝ている。ちゃっぴぃはクソうるさそうに布団の中にもぐりこんだまま。尾っぽだけがぴょこぴょことはみ出ている。無性に引っ張りたくなるのはなぜだろうか?


 ギルの鼻には知恵の角(の欠片)を詰めた。鬼畜な飾り縫いもあとちょっとで終わりそう。できれば今晩中にそこだけは仕上げてしまいたい。みすやお。

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