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234日目 基礎魔法材料学:転位について

234日目


 ギルの鼻から鼻歌が聞こえる。……普通のようで異常だ。


 朝、俺の腕の中で起きたちゃっぴぃと目が合う。『よく眠れたか?』と声をかけるも、『きゅん!』とそっぽを向かれた。そのまま布団にもぐりこみ、あったかいところで丸まってしまう。しかもそれでなお微妙に寒かったのか(あるいはただの腹いせか)冷たい足を俺のナマ腹に当ててきやがった。解せぬ。


 ギルを起こし、ちゃっぴぃをだっこして食堂へ。昨日のことがあったから、ポポルとパレッタちゃんが『これやるよ!』、『いい子だけの特別だよ?』と透き通ってキラキラ光るめっちゃ綺麗な模様のついたガラス球をちゃっぴぃにくれた。


 よくみたら、模様は呪印で構成されていた。それもデザイン性も両立したけっこうガチなやつ。ポポル秘蔵のガラス球にパレッタちゃんがオシャレを追及して刻んだらしい。友人の気遣いに感謝を隠せない。


 が、ちゃっぴぃは渡されたそれをパッと受け取るも、つーんとそっぽを向いたまま。むくれた表情は改善されず。申し訳ないので『すまんな』とポポルとパレッタちゃんに声をかけたら『わかってるって』と背中……のだいぶケツよりを叩かれた。


 なお、ギルは『うめえうめえ!』とジャガイモを食べていた。『今日はジャガイモ好きなだけ食べていいぞ!』とちゃっぴぃにジャガイモを勧める優しさも見せる。残念ながらちゃっぴぃは手を付けなかったけど。


 さて、今日の授業はシキラ先生の基礎魔法材料学。相変わらず出欠取るのがめっちゃはやい。あと、俺たちの間の微妙な雰囲気を読み取り、『茶化したいけどさすがにこれヤバいやつだよな? とりあえず事が終わったらレポートにまとめて報告よろしく!』とだけ宣った。俺だけ課題出されるとかマジ泣きそう。


 内容は転位について。前回は魔晶に存在する欠陥について学んだわけだけど、その中の特に線欠陥がよりグレードになったのがこの転位と呼ばれるもの。とりあえず、その種類だけ以下に示す。



・刃状転位

魔晶中に存在する魔法的変形によって生じた余分な魔素層が刃状っぽくみえる転位。


・螺旋転位

魔晶中に存在する魔法的変形によって生じた余分な魔素層がなんがぐにゃぐにゃした転位。


・混合転位

上記二つの転位が混合した転位。



 ぶっちゃけかなり複雑な立体についての問題だから言葉だけで説明するのは無理。図があれば一発で分かるから、気になったらノートのほうを参照しておくこと。ちゃっぴぃのヨダレ染みがあるから一発でわかるはずだ。


 ちなみに、そもそもなんでこんなことを学んでいるかと言うと、触媒の魔法的変形を生じさせるのはこの転位であり、転位が触媒中を動くことで触媒(魔法材料)は変形するから、その原理を知っておかないとダメだよってことだからだそうだ。


 かなりミクロな視点での話になるんだけど、実際の触媒や材料は触媒反応学でやった計算値通りの挙動を示すことが無く、こっちの理論を用いないと実際の現象を説明できないんだって。

 

 『だったらどうして触媒反応学をやるんですか?』って聞いたら、『あれはあれで別のことに必要なんだよ。食事にはフォーク以外にスプーンもほしいだろ? つまりそういうことだ』ってシキラ先生が言ってた。


 夕飯食って風呂入って雑談して今に至る。やっぱり雑談中もちゃっぴぃはむくれたまま。極甘ココアを貢いでも表情に変化なし。


 そうそう、ロザリィちゃんが『一週間だけ待ってもらえれば、なんとかできるかもしれない。だから、それまでお願い……できる?』とこそっと話してきた。無言で頭をポンポンしておく。『お願いします』とちゃっぴぃを渡してきたので受け取って抱っこする。


 ちゃっぴぃのやつ『きゅぅん?』と舐めくさるように俺を見てきたけど、いったいどういうことだったのかいまだにわからない。


 ちょっと短いがここまでにしておこう。ロザリィちゃんが何とかしてくれるとはいえ、俺も何もしないわけにはいかない。衣装がないなら作ってしまえばいいだけのこと。さすがに一日二日でできるものじゃないけど、夜更かしすれば一週間くらいでできるはず。


 あ、糸とか足りないのがあったし、腕も確かだからクーラスに手伝ってもらおうとしたんだけど、あいつはあいつでやることがあるらしく『悪い、今はちょっと手伝えない』と断られてしまった。まあ、迷惑かけるわけにもいかないからしょうがない。それに、色糸とかは大目に融資してくれたし。


 拗ねてふてくされているのか、ちゃっぴぃは今日もさっさと俺のベッドで寝てしまった。地味にベッドが温まっているっぽくて割とうれしい。風邪をひかないように、毛布をしっかり掛けて抱き締めて寝ることにする。衣装ができるまでの間、愛情くらいはたっぷり注いでやろう。


 ギルは今日も大きなイビキをかいている。シンプルに布の切れ端を鼻に詰めておいた。キリのいいところまで進めたら寝ようっと。

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