232日目 暖炉解禁
232日目
ギルのワキ毛がトルネード。なんなのもう。
ギルを起こして食堂へ。やつのトルネードなワキ毛はやっぱり目立ち、誰もの食欲を失せさせた。休日限定デザートを確保しさっさと食堂を後にする生徒が後を絶たない。もし今日が休日でなかったら、被害はもっと大きかったことだろう。
なお、ミーシャちゃん、ちゃっぴぃ、エッグ婦人、グリル、マルヤキ、ポワレ、ソテー、ロースト、ピカタ、ポポル、ヴィヴィディナはトルネードなギルのワキ毛をひっぱったりびょんびょんしたり絡ませたりして遊んでいた。実に楽しそうだったけど、いったい何が楽しかったのか未だに理解できない。
でも、ギルは構ってもらえてとても嬉しそうだった。『みんな食べないなら俺食べちゃうぜ!』と余りまくった朝食も『うめえうめえ!』と平らげる。もちろんジャガイモも『うめえうめえ!』と貪っていた。あいつの胃袋ってマジで底なしだと思う。
朝食の後はクラスルームでゆったりする。なんだかんだで先週も薪割りなんかでゆっくりできなかったし、のんびりするのは久しぶり。俺専用ロッキングチェアをぶらぶらと楽しむ。ちゃっぴぃがヒマそうだったのでこの前のスライムボールを投げて遊んでやった。
さて、いつもならそろそろ温かくなってくる時間だったんだけど、今日に限って朝の寒さが残っている……というか、むしろどんどん寒くなってきた。天気もちょっと悪くなってきたし、昼間だというのに妙に薄暗い。
どうしたものかと思っているうちには雨が降ってくる。さすがにまだ雪は混じっていなかったものの、ローブだけじゃプルプルしてくる寒さになった。
で、せっかくなので本格的な冬が始まる前に暖炉に火を入れてみることに。こないだ備蓄しといた薪を暖炉に突っ込み、火魔法で着火するだけの簡単なお仕事。冬本番になって暖炉が壊れていることが発覚するとめっちゃ大変なんだよね。
手入れが行き届いていたのか、問題なく暖炉は使えた。ぱちぱちはじける炎がなかなかにグレート。めっちゃぬくい。思わずいい感じに温かいところをキープしてしまう。
想像以上に気持ちよかったので、ついついゴロゴロしちゃったんだけど、俺と同じように暖炉にあたっていたちゃっぴぃが俺のケツを枕にして寝転がり始めやがった。『きゅーっ♪』と実に嬉しそうに俺のケツにほおずりし、さらにはノリノリで叩いてくる始末。
なにが悲しくて夢魔にケツ枕をしてやらなくちゃならんのか。しかもあの野郎、若干のヨダレしみまでつけやがったし。ナターシャにやられたときよりかは百万倍マシだけど。
が、優しい俺はしばらくケツを貸してやることにした。いつぞやステラ先生からもらった本を読み、午後もそのままゆったり過ごす。いつのまにやらヒナたちも俺の背中やケツの上で火にあたっており、ピーピーとイビキ(?)をかきながら眠っていた。
なんかマジで俺枕かなにかと勘違いされていない?
結局、使い魔どもの枕から解放されたのはおやつの時間ごろ。このころには遊びに行ってたやつも『なんかすっげぇ寒い!』って帰ってきた。『暖炉つけたなら教えてくれよ!』とも言われてしまう。結構寒かったから、自室で毛布にくるまって作業をしていたやつが多かったっぽい。
なお、せっかく見つけたマイフェイバリットポジションだったのに、ミーシャちゃんとポポルとパレッタちゃんに奪われてしまった。『あったかいの!』、『俺暖炉の前好きなんだよね!』、『時にぬくもりを求めたくなる』と三人。なんかこいつら見てるとデカい子供を相手している気分になる。
ちなみに、ギルも暖炉のすぐ横にいた。『やっぱ火に照らされる筋肉は最高だな!』と半裸でポージングを決める。脇腹当たりの筋肉が冬好きでこの時期殊更に輝くらしい。なんかもう頭がおかしくなってきそう。
夕飯食って風呂入って雑談して今に至る。雑談中、安息の地を追われた俺は一人悪夢椅子でぶらぶらしてたんだけど、ロザリィちゃんが『今日は寒かったね!』って隣に座ってくれて超幸せ。二人で一つの毛布にくるまり、寄り添いながら休日の夜のひと時を楽しむ。
もうね、暖炉にあたる何倍も温かかったね。心の底からぽかぽかしてくるんだもん。ぐしぐしと俺に胸に頭を埋めてくるロザリィちゃんとその柔らかいそれが最高すぎた。
ちなみに、今日一日見ないと思ったら部屋で何か作業をしていたらしい。この前からそんなようなことをいってたけど、いったい何をしてるんだろ? 秘密の多い女の子ってステキだよな!
ギルは今日も大きなイビキをかいて寝ている。振り返ってみれば、実に平和な一日だった。地味に冷え込みが激しくなってきているのがちょっといただけない。この部屋には暖炉とかないんだよね。
ギルの鼻には火暖石を詰めてみた。ふと、昔ミニリカやナターシャが俺のベッドにこいつを忍ばせてくれたことを思い出す。寒い夜でも足元が温かくなって便利なんだけど、俺ってば寒くて震える&夜で寂しがるあいつらのベッドに潜り込んで添い寝してあげていたから、毎回無駄になってたんだよね。なぜかあいつらそれでも毎日用意してくれたけど。




