230日目 魔法構築学:魔法刃の損傷について
230日目
今日も快晴。素晴らしい天気に心が躍ります。
親友を起こして食堂へ。朝食にはハニークロワッサンを選択しました。その柔らかな食感と甘やかな香りと言ったら! 毎日おいしいご飯を用意してくれるおばちゃんには感謝の意を隠せませんね。
ちゃっぴぃにも一口大にちぎったそれを与えました。『きゃーっ♪』と小さなお口でころころと頬張る様がとても可愛らしいです。こういう姿を見るとこちらもなんだかうれしくなってきます。
ああ、それと、その、非常に恥ずかしいのですが、ロザリィさんが『今日の──くんもカッコいい♪』と抱き付いてきて思わず赤くなってしまいました。
恋人同士とはいえ朝からこれとは、いやはや、嬉しいんですけど照れますね。たぶん、あの時の僕はとても緩み切った顔をしていたんじゃないでしょうか。
さて、ロザリィさんとちゃっぴぃとともに食後のコーヒーを楽しんでいたら(ちゃっぴぃのは殊更に甘くしました。まだ舌が子供なのでしょう。早く一緒にブラックを語りたいものです)、何やら視線を感じました。クーラスとフィルラドが僕を見て『今日のお前なんか変だ』と首を捻っています。
はて、どういうことかしらん、と思いつつ、『いつも通りではありませんか』とロザリィさんといちゃつ……じゃない、微笑みあいながら答えたのですが、『だからこそ変だ』、『なんか今日はイラつかない。──なのに邪な感じがしない』と言われてしまいました。
本当に、いつもと何も変わらないと思うのですが……ううむ。
そうそう、親友は今日もジャガイモを『うめえうめえ!』と元気に食べていました。なかなかにいい食べっぷりです。健康的なのは実に良きことですね!
さて、今日の授業はシューン先生の魔法構築学です。相も変わらずローブはズボンの中で、いくらか皺が目立っています。先生さえ良ければしわ取りをしたかったんですが、それは先生の奥様の役割でしょう。さすがに奥様の仕事を取るわけにはいきません。
なお、今日も出欠を取るのは長かったです。途中、ジオルドとポポルが『○×ゲームやろうぜ!』と誘ってくれたのですが、授業中だったので断ります。『やっぱなんかヘンだ!』と言われたんですけど、もしかして流行っているんでしょうか?
あ、あまりにも残念そう(?)だったので、ナイショで一回だけやりましたよ?
授業の内容は魔法刃の損傷についてでした。陣造を行うにあたり魔法刃を使用するのは周知の事実ですが、この魔法刃も無限に使えるわけではありません。使用に伴い徐々に劣化し、いずれ損傷するとのこと。
今回はその損傷の種類について学びました。以下にその内容を記します。
・魔耗
魔法刃が徐々にすり減っていく損傷です。使用による劣化現象ですので、基本的には避けることができません。一般的な条件下における陣造にくらべ、反属性魔法刃を用いた陣造の場合、魔耗の影響が大きいので特に注意する必要があるそうです。魔法刃変更のタイミングは陣造精度で求められる魔耗量で判定します。
・チッピング
魔法刃に微小な欠けや欠陥等を生じる損傷です。無理な陣造や極点的な負荷を魔法刃に与えたときに発生しやすく、魔法刃の構成材料によってはチッピングの発生で寿命が極端に短くなるケースもあります。そのため、魔法刃変更のタイミングは魔耗の時と同じですが、材料の特性を考慮する必要も出てくるそうです。
・破損
魔法刃が陣造不可能な状態までに破損する損傷です。ここまでくると使用は不可能ですので、早急に魔法刃を交換する必要があります。魔法刃が破損すると予測(あるいは推定)される環境で陣造することはないため、発生した場合は異常事態と言えます。直ちに原因を調べ、それを解明するまでは陣造を控えましょう。
シューン先生の講話もおおむね板書に沿ったものでしたので、ここに特別記入するべきことはありませんね。しいて言うなら、最近ようやく奥さんに許してもらい、ちょっとお高いディナーにいった……と、惚気られたことくらいでしょうか。仲良きことは実に良きかな、ですね。
なお、わがクラスメイトはすっかり寝こけているものが多かったです。あまり褒められたことではありませんが、その安らかな寝顔を見ると起こすのも忍びなく……。
ロザリィさん、アルテアさん、ミーシャさんには僕と親友のローブをかけておきました。彼女らには後でノートを渡しておくとしましょう。
特別なのは、今日だけですからね? 次からはちゃんと受けてもらいますから!
夕餉を取って入浴を済ませ、雑談をして今に至ります。雑談中、やっぱり『なにか変なものでも食べたのか?』、『悩み事があるなら聞くぜ?』などとクラスメイトに心配されました。気遣いをしてくれるのはうれしいのですが、なんか今日、彼らの様子がおかしかったような気がします。
そうそう、プライベートな日記だからこそ書きますが、就寝間際にロザリィさんが頬にキスをしてくれました。あまりに自然にしてくれたので、一瞬何が起こったかわからなかったくらいですよ。
『いつになく積極的ですね?』と照れながらも聞いてみたら、『今日という日は二度と来ないからね!』とロマンティックな解答が。
さらに、『特別な今日なのに、──くんはしてくれないの?』と魅惑的の微笑んで頬を突き出してきました。おまけに、つんつん、とそれを強調するように指さし、『どうしたの? ん?』とからかうように──いえ、からかいながら僕の脇腹を突いてくる始末です。
もう、恥ずかしすぎて真っ赤になりましたとも! 『ねぇ、はやく♪』とわかっててやってくるところも可愛いんですけどね!
そのあとどうしたのかは……僕の心の日記帳に記しておくとしましょう。たまにはこういうロマンティックなのもいいかもしれません。まあ、あの気持ちをうまく文章にまとめる自信がないってだけなんですけれど。幸せすぎるのも困りものですよ。
ざっくりとですが、こんなものでしょう。今日も何事もなく平和な一日でしたね。このままずっとこんな日常が続けばいいのにと願ってしまうのは悪いことなのでしょうか。ああ、明日が待ち遠しい!
そろそろ筆をおいて寝よう……と思ったんですが、親友のイビキが聊か気になります。鼻でも詰まっているのか、風邪でも引いているのか。はてさて。
ちょっと心配なので、鼻風邪に効くお薬を投与しておこうと思います。これでよくなってくれるといいんですが……。
これで本当に全部ですね。明日はもっといい日になることを願いながら、まどろみに身を委ねるとしましょう。おやすみなさい、いい夢を!




