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228日目 発展魔法生物学:ハングリースライムの生態について

228日目


 世界が泣いている。超大雨。俺の悲しみは世界すら同情してくれるというのか。


 ギルを起こして食堂へ。ざあざあぶりの雨の音を楽しみつつ紅茶を飲んでいたら、ピアナ先生とグレイベル先生がやってきてくれた。ひゃっほう。


 どうしたのかと思ったら、『雨が降ってるけどいつも通りに授業をやる』とのこと。ずぶぬれになるから雨具の用意を忘れずにって連絡だった。


 言われてみれば、生物学の時に雨が降ったのって初めてかもしれない。生物学って外でやるから雨降るとちょっと困ることになるんだよね。


 なお、『うめえうめえ!』とジャガイモを貪るギルを見て、グレイベル先生が『…よく食うのは健康の証だ』って呟いていた。最近ルンルンも食事量が増えてきているらしく、ギル・ポテトの生産も追いつかなくなりつつあるらしい。


 あと、ちゃっぴぃに『あーん♪』ってサラダを食べさせるピアナ先生がマジエンジェルだった。もちろんロザリィちゃんもベリーキュートだったけど。


 朝食後はそのまま流れで先生とともに外へ。今日は何をやるのかと思ったら、『油断するとホントに危ないから気を付けて!』とピアナ先生がよくわからん袋を掲げた。びくびく中で何かが動いているのが超怖い。


 さて、出てきたのはどこかで見たことのあるような透明の塊。全体的にぷるぷるしていて、見るからに柔らかそう。でも、接着剤には使えなさそげ。


 もちろんその正体はスライム。まさかこの授業でこんなものを見ることになるとは思わなかった。


 このスライムだけど、正式名称はハングリースライムっていうらしい。名前の通りとても大喰らいで、よほどのもの、あるいはなんらかの魔法処理を施したものでもない限りは全部食べちゃうそうな。


 そんなこんなの説明をしている間にも雨を吸ってどんどん大きくなってるっていうね。最初はピアナ先生が抱えられるくらいの大きさだったのに、すでにこないだの丸焼きくらいの大きさになってた。とりあえず、以下にその概要を示す。



・ハングリースライムは通常のスライムと異なり、大抵のものを体に吸収することができるほか、その耐久性もすさまじいものを誇っている。意外とぷにぷにで気持ちいい。


・ハングリースライムは取り込んだ物質の性質を自身の体にある程度の範囲で適応させる。例えば、毒物を喰らったハングリースライムはそれと同種の毒の性質を帯びる。やっぱりぷにぷにで気持ちいい。


・通常、ハングリースライムは手のひらほどの大きさを取り、捕食の時だけ水分を吸収して巨大化する。獲物を丸呑みした後は、それを完全に溶かして元の大きさに戻る。もちろんぷにぷにで気持ちいい。


・まれに、巨大化しすぎたハングリースライムがその巨大を維持しようと周囲のすべてを取り込もうとすることがある。特にこれは雨天時に起こりやすく、水の性質を色濃く反映させるため、並みの物理攻撃、および魔法攻撃が通りづらくなるといった最悪の特性を身に着けてしまう。それでもぷにぷにで気持ちいい。


・魔物は敵。慈悲はない。



 もうね、最後の言葉をメモった瞬間にみんな青ざめたね。だって、顔をあげたらすでにルマルマ寮くらいの大きさになったハングリースライムがいるんだもの。マジで押しつぶされるんじゃねーかって思えるくらいに大きかったの。


 『…いい感じに雨が降ったし、今日はこのままこいつを倒してもらおうか』、『これだけの大物と戦えるのなんてなかなかレアだよ!』ってグレイベル先生とピアナ先生が言ってたけど、どうして二人ともあんなヤバそげなものをみて平常でいられるのか。


 ともかく、手遅れになる前にみんなで攻撃。水を吸いまくっただけあって魔法が全然効かない……っていうか、全体に対して削れる割合が少なすぎる。幸いにして相手の動きは遅かったから、こっちがやられるってことはなかったんだけど、どちらにせよ打つ手なし。


 だから、せっかくなのでハングリースライムのぷよぷよ感を楽しんでみた。ひんやりした触り心地とつるんとした質感、そしてふにゅりと柔らかい感じがなかなかにグッド。千切り取ってベッドに敷き詰めれば結構楽しそう。ロフトにおいてもいいかもしれない。


 で、どうせちょっとくらい千切ってもいいだろうと思ってスライムの中に手を突っ込んだんだけど、これがいけなかった。あのクソスライム、スライムの癖に俺の手を取り込もうとしてきやがった。


 腹が立ったのでそのまま体内から吸収魔法を叩き込む。スライム、みるみるしおれていった。『親友ばっかりずるいぞ!』とギルもかじりつき、『うめえうめえ!』と一気に飲み干しにかかる。『沐浴の時間が到来せり』とヴィヴィディナもけしかけられた。


 スライムがみるみるしおれていくさまが超怖い。あっという間にしわくちゃババア。なぜかクラスメイト達が俺たちをヤバいものを見るような目で見てたんだけど、どうしたんだろうね?


 最終的にスライムは元の形に戻った。完全に殺しきったのかしおれたぶよぶよのままピクリともしない。まだ落とし前を付けさせていなかったので、適当に水分を流し込み、ギルにふーっ! って膨らませてもらう。ぶよぶよの球が誕生した。


 これぞ俺特製スライムボール。『死骸だし持って帰ってもいいですよね?』って先生に聞いたら、『持って帰ってもいいけど、そんな風に使う人は初めて見た』と言われた。なんかちょっと照れる。


 ちなみに、このハングリースライムは薬品調合の際の安定剤に使うらしい。こいつを媒介にすれば、互いにアブナイ薬品同士も安全に混合することができるのだとか。だから、魔系の人たちはあえて水をやってデカくしたのを(もちろん抵抗できないようにしたやつ)飼育して、好きな時に切り取って使っているんだって。


 なお、今回のハングリースライムはシキラ先生提供とのこと。『…最近うっかり増やし過ぎたらしく、「代わりならいくらでもいるから雑巾代わりに使ってくれよ!」ともらった』ってグレイベル先生が言ってた。


 夕飯食って風呂入って雑談して今に至る。雑談中はちゃっぴぃ、ロザリィちゃんとともにスライムボールで遊びまくった。外に出れずに退屈だったからか、途中でエッグ婦人とヒナたちも参加する。アルテアちゃんとフィルラドは参加しなかった。


 ちゃっぴぃが『きゃーっ♪』って投げたボールを胸で受けて尻もちをつくロザリィちゃんが最高にかわいかった。思わず見とれていたら、『見るなぁっ!』って真っ赤になりながらぽかぽかパンチしてくれた。なんでロザリィちゃんはこうも可愛いのだろうか。


 直後にエッグ婦人とヒナ、そしてちゃっぴぃに執拗にケツを突く&ひっかかれなければ最高だったのに。なんかあいつら、最近俺のケツをおもちゃと勘違いしていない?


 ギルはいつも通り大きなイビキをかいている。雨音がいい感じのノイズになって少しはマシ……かと思ったけど全然そんなことはない。とりあえず、明日は晴れることを願ってお日様の微笑みを鼻に詰めておいた。おやすみんち。

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