227日目 基礎魔法材料学:魔法材料の欠陥について
227日目
部屋がウッディになっている。ログハウスっぽくってなかなかにグッド。今度模様替えでもしてみようかな?
ギルを起こして食堂に。今日は新メニューらしきグラタンパンなるものを食す。パンの中にグラタンが入っているってだけなんだけど、おなかの底からぽっかぽか。グラタンの味を濃い目にしてパンと合わせられるように工夫しているのもポイント高い。今度マデラさんに伝えておこう。
なお、グレートな焦げ目がついた一番おいしいところをちゃっぴぃが『きゅーっ♪』って食べてしまった。毎回毎回、なぜこいつは俺の朝食のおいしいところだけを食べていくのか。
あと、一気にがっついたらしくジオルドが凄まじくむせていた。『救済せよ、ヴィヴィディナ』ってパレッタちゃんがヴィヴィディナに水を持たせてジオルドに送ったんだけど、あの水どこから出したのだろうか?
ジオルド、複雑な顔しながらもそれを飲む。『妙に甘クて変ナ中どク性があル?』って言ってた。声がヤバい感じだったけど気にしない。
今日の授業はシキラ先生の基礎魔法材料学。『最近寒くなってきたなぁ!』とシキラ先生はめっちゃ素早く出欠を取る。腕まくりしていたことには誰も突っ込まない。あの人たぶん、真冬でも半袖着ていると思う。
内容は魔法材料の欠陥について。あらゆる魔法材料は魔素から構成され、魔晶格子を形作っているってのは何度もやったけど、実際はそううまくいってなくて、中にはその配列が乱れているものもあるらしい。
この乱れたそれを欠陥と呼ぶ。欠陥にはいくらかの種類があり、以下にその概要を示す。
・点欠陥
魔素が本来位置すべきでない場所に存在したり、逆にあるべき場所にないことによる欠陥。文字通りポツポツと点状にヘンな部分ができてるっていうアレ。
・線欠陥
線状にびーって変なところが続いていることによる欠陥。当然ヘンになっている部分は無理やりなんとかしようとしてるんだけど、そのモデル図が凄まじく歪で頑張ってる感が半端なかった。
・面欠陥
パターン的にわかるけど、面上にヘンなのが続いていることによる欠陥。ここまでくると層のズレとか、そもそもの配列が大きく異なってしまうことが多いっぽい。もうさっさとぶっ壊れたほうがよくね?
話を聞くと、そもそも完璧な配列になっている魔法材料って存在しないらしく、みんな大なり小なり欠陥を持っているらしい。で、その欠陥が些細なことに影響しあって材料がぶっ壊れていくのだそうだ。
『ほら、どんなにこだわって作ったつもりのサンドイッチでもいざ食ってみるとなんかよくない部分ってあるだろ? アレと同じだよ』ってシキラ先生は言ってた。なお、どちらかと言うとこの話は測定や破壊のメカニズムに関わってくる話だから、常に考えなきゃいけないほど重要ってわけではないらしい。
そうそう、珍しくギルが真面目にノートを取っていると思ったら、魔素をジャガイモで書き、欠陥の部分にデフォルメした超笑顔のギルを書いていた。相変わらずこいつの無駄な絵心はすごいと思う。
『なにやってんだ?』と聞いたところ、『こっちのほうがわかりやすくね?』とのこと。なお、ジャガイモ書いてて我慢できなかったのか、途中で『うめえうめえ!』とおやつのジャガイモを授業中にもかかわらず食べだした。
シキラ先生じゃなかったら危なかった。『ウチのルンルンもジャガイモよく食うし、ジャガイモに限り授業中の飲食を認めてるんだぜ!』ってシキラ先生は笑ってた。もちろん、普通のお菓子を食べた場合は地獄の粛清が待っているらしい。
夕飯食って風呂入って雑談して今に至る。寝る間際、ジオルドが『プりン……ぷリん……』ってアンデッドのように徘徊していた。ちょう怖い。
せっかくなのでお望み通りハゲプリンをぶち込み、ついでにジャガイモを口にぶち込んでおく。仕上げにマデラさん直伝の目覚めのケツビンタ(二日酔いも一発で醒める)をし、ギルに担がせてあいつの部屋まで運んでおいた。
クーラスのやつ、気絶したジオルドを見て『今日一日ヘンだったんだよな』って言ってた。『心配じゃないのか?』との問いには『どうせお前かギル関連だろ? 明日にゃ戻るさ』と答える。
友人からの信頼の無さに悲しみを隠せない。クーラスは俺を何だと思っているのだろうか。だいたい、今回は俺じゃなくてヴィヴィディナだってのに。
地味な理不尽に泣きそう。ギルのイビキは相変わらず。果たして俺に安らぎの時は来るのだろうか。そして今日はロザリィちゃんとあまりしゃべれなかった。なんか、俺にちゃっぴぃを預けてすぐに部屋に戻っちゃったんだよね。ちょう悲しい。
とりあえず、ギルの鼻には悲しみの花のつぼみを詰めておいた。グッナイ。




