222日目 基礎魔法陣製図:ファンクションパターンの略式記入法
222日目
鳥のさえずりがクソうるさい。ちゃっぴぃもガチギレして『ふーッ!』って外に威嚇してた。俺もついでに『ふーッ!』って威嚇しておいた。なんかクセになりそう。
ギルを起こし、ちゃっぴぃをだっこしながら食堂へ。今朝はちょっと冷え込んだからか、ちゃっぴぃを抱きしめるとなかなか温くていい感じ。あいつも俺のローブに潜り込んできたし、これぞウィンウィンの関係という奴だろう。
朝食はあったかいミネストローネをチョイス。トマトの香りが素晴らしく、なかなかのクオリティ。ちゃっぴぃはお代わりしていた。あと、俺の隣でふうふうしながらミネストローネを飲むロザリィちゃんが最高にプリティだった。『今日は寒いねー?』なんていいながら体を寄せてくるところとか、もう幸せすぎて言葉にできない。
ギルは今日もジャガイモの大皿を『うめえうめえ!』って食べてたよ。ミーシャちゃんとポポルがそのバカでかいローブにくるまって暖を取っていた。二人とも超温かそう。ポポルの腹巻の中のヒナたちも元気にピーピー鳴いていた。
今日の授業はキート先生の基礎魔法陣製図。課題を提出するとき、『決闘があったのに、ここまできちんと宿題をやってくるとは思いませんでした。さすがですね!』と褒められた。アルテアちゃんとロザリィちゃんが非常に心苦しそうな顔。いい加減開き直ればいいと思うけど、そんなところがロザリィちゃんのラブリーポイントだと思う。
あ、例の落書きだけど、
『覗きですか? もしかして覗きですか? こんな話で盛り上がるような奴に、女子がそんなこと教えてくれるはずないでしょう? ロリコンの正体がバレると困るってのは、連動して自分の正体もバレるからですね? さあ、このことをバラされたくなければ……ねえ? 言わなくてもわかるでしょう? みんなで幸せになりましょうよ』
『うわあ……エルはまともだと思ってたんだがな。所詮は上級生、おまけにロリコンの知り合い&同類ってことか。まあ、男なら当然だぜ。覗きなんて誰でも一度はやろうとするもんだから。……ところで、バラされたくなかったら覗きの仕方を教えろよ?』
『ちょっと雑談を装って男子に聞いてみた。やっぱりみんな女子が入浴剤の風呂入ってること知らなかった。つまり、エルは女子と殊更に親しい、あるいは女子風呂に侵入する方法を知っている人物ってことになる。どちらにせよギルティ。俺にも覗き方教えろ』
『おまえらなんなのこの団結力。入浴剤を使っているのを知ってたってのは認めるよ。どうして知ったのかは教えられねえけど。ただロリコンと同類にしないでくれ。それはガチでシャレにならねえ。ちゃんと俺の言うことを聞いてくれるのなら──
──女子風呂への入り方教えてやる』
……と書かれていた。思わず歓喜の声を上げそうになったことは書くまでもない。声を殺しきれた俺を誰かほめてほしい。ロマンあふれるその言葉にワクワクを隠せない。
とりあえず、
『わくわく』
とだけ書いておいた。この気持ちに無駄な装飾はいらない。シンプルなのが一番だ。
今日の内容はファンクションパターンの記入法について。厳密な製図だとファンクションパターンもちゃんと書かないといけないんだけど、実は略式記入法ってのもあって、よく使う奴なんかは簡略化して書くことができるらしい。
実際、複雑な魔法陣になると使用されるファンクションパターンも増えてくるから、製図用紙にいちいち書いていると大変なことになるそうだ。
で、いつも通り説明の後に作業時間。ぶっちゃけ教科書見れば全部書いてあるから端折る。特にこれと言って注意するべきこともないし。敢えて言うなら、省略形でも規格があるから適当に書いちゃダメってことくらい。
授業後、ちょっとした雑談を装って『シキラ先生に先生たちの強さを教えてもらったんですが』とキート先生に聞いてみた。キート先生、シキラ先生とグレイベル先生の例えを聞いて『二人とも話を盛りすぎですよ……』って苦笑していた。
『実際のところどうなんですか?』と聞くと、
『ステラ先生がドラゴンなら、シキラ先生は盤外の悪魔。他の先生たちはキングオーガとかでしょうか。私はミジンコ程度ですよ』
……と回答をもらった。先生の間でミジンコが流行っているのだろうか?
クーラスが『一瞬であんな結界張れるのにミジンコなんですか?』と聞いたら、『私、入ったばかりの若造で下っ端ですから。体調管理もできませんでしたし、私よりも若いのにぶっちぎっているステラ先生がいますしね』とのこと。
結局キート先生はすごいのかすごくないのかよくわからない。立場的には一番下らしいけど、飛び級するほどの実力はあるって話だし。それにギルの腹パンに対応してたからなあ。
午後のフリータイムはみんなでクラスルームで製図の課題をこなす。もちろんキイラムの資料を使って。休日にゆっくり遊ぶためとはいえ、平日の自由時間に宿題をこなすのがデフォルトになったことに悲しみを隠せない。
夕飯食って風呂入って雑談して今に至る。なんか先生たちの強さか関係が気になって眠れそうにない。明日は必ずシューン先生にこのことを聞こう。なんだかんだでシューン先生なら限りなく真実に近いことを話してくれるはずだ。
キート先生もグレイベル先生も自分を謙遜がすぎるきらいがあるから当てにならないんだよね。あ、シキラ先生は論外ね。
ギルは今日も大きなイビキをかいている。筋肉が製図課題をこなそうとピクピク動いているのが限りなく不気味。もしかして、ギル本人よりも筋肉のほうが勤勉なんじゃないだろうか。
とりあえず、なぜかローブに入っていたヴィヴィディナの……何だろうコレ? ヴィヴィディナの体の一部ってのはわかるけど名称がわからん。丸っこくてヤバそげに色がコロコロ変わるんだけど目玉じゃないっぽい。
ともかく、わけわかんないそれをつめておいた。みすやお。
ふーッ!




