219日目 決闘おつかれさまパーティー
219日目
ギルの筋肉がかちこち。いつもとかわんなくね?
ギルを起こして食堂へ。まだ全身が痛むけど歩けないほどじゃない。『きゅーっ♪』ってちゃっぴぃが飛びついて俺の腹に頭突きを食らわしてきたときはさすがに悶絶した。あいつに悪気はなかったとはいえ、さすがに怒りを隠せない。
が、『痛いの痛いの飛んでけーっ!』ってロザリィちゃんが背中をポンポンしてくれて超幸せ。しかも愛魔法込みだったから、マジで痛みが引いていく。ドクター・チートフルでも『しばらくは痛むが我慢しろ』って言ってたくらいなのに。
やっぱ俺とロザリィちゃんの愛は最強だ。大好きすぎて困っちゃう。もちろんイチャイチャしながらデザートを食べた。ちゃっぴぃのやつ、ロザリィちゃんとイチャイチャしているときは不機嫌にならないから不思議なものだ。
もちろん、ギルは『うめえうめえ!』とジャガイモをむさぼっていた。昨日活躍したヒナたちも残像が出るレベルでジャガイモを食べていた。実に平和な光景だ。
さて、ひと段落ついたところでゼクトをはじめとしたティキータ・ティキータの連中が『宴会の準備をしようぜ!』とやってきた。決闘の運営の仕事も全部終わったからあとははっちゃけるだけらしい。お疲れ様です。
で、さっそくルマルマ寮で準備を進める。幸いにも俺たちはテストの打ち上げのときの材料がそのまま残っているため、大きく準備することはなし。ティキータもゼクトとかが料理できるため、自分たちで持ち寄った材料なんかをパパッと調理していく。
とはいえ、さすがにそれだけでは味気ないので共同で追加の料理を作る。『病み上がりはゆっくりしてろよ!』とクラスのみんなに言われたので、俺とクーラスは指示だけ出して座っていた。あ、ハゲプリンとかの大事なところは手を出したよ?
さて、続々と会場の設営、ぷりぷりエビフライ、揚げたてシュリンプ、ハゲプリン、ジャムクッキー、その他豪華料理の準備が進む中、『昨日はおつかれさま!』、『今日の宴会は豪華だなあ!』、『お邪魔します!』、『…土産、持ってきたぞ』と、ステラ先生、シューン先生、ピアナ先生、グレイベル先生がやってきた。
『ちゃんと呼んでおいたぜ!』と笑うゼクト。やっぱこいつ、イベントごとを仕切る才能がある。ぜひうちのクラスに引き入れてこき使いたいものだ。
で、先生たちはジュースだのお菓子だのちょっとつまめる軽食類を提供してくれた。結構な量があってテンションも上がる。グレイベル先生は個人的にこないだの肉のローストも持ってきてくれた。あの人マジイケメンだと思う。
が、驚くのは早かった。なんかいきなりドタバタとした音が聞こえたと思ったら、キイラム他魔材研の人たちが『これ差し入れだぜ!』ってギルよりもでっかい豚の丸焼きを持ってきてくれた。
もうね、すっげぇ立派なやつ。前期の化けイノシシよりかは二回り小さかったけど、肉として超高級でマデラさんのところでも年数回しかお目にかかれないような奴だ。
あまりの高級品にみんなが雄叫びを上げたことは書くまでもない。ステラ先生も『うわあ……!』って声を上げていた。そんな姿もマジプリティだった。
『ホントにいいのか?』とキイラムに聞いたら、『これ、シキラ先生のポケットマネーからでてるから。最高にイカした決闘を見せてくれたお礼だってよ』とのこと。クレイジーな人だけど、こういう気配りも欠かさないからずるいと思う。あ、アエルノチュッチュにも同じものが贈られたんだって。
ちなみに、『俺たちもこのあと宴会だから!』ってキイラムたちは早々に帰って行った。あいつら何もしてないのに何で宴会するんだろうか? しかもちゃっかりハゲプリンを数個かっさらっていくという鮮やかさ。いっぱいあるから別にいいけどさあ。
準備が整ったところでさっそくパーティー開始。さしずめ今回は『決闘おつかれさまパーティー』だろうか。ステラ先生の乾杯の音頭ともに初っ端からバカ騒ぎが始まった。
もちろん俺はエビフライを食べる。超ぷりぷりでマジデリシャス。『うめえうめえ!』と何本食べたか覚えていない。
ロザリィちゃんとちゃっぴぃは二人でハゲプリンを楽しんでいた。『パパかっこよかったよね!』と決闘を振り返っている。ちょっと照れる。ちゃっぴぃは『きゅーっ♪』って俺に抱き付いてきた。なんか今日こいつ甘えんぼじゃね?
フィルラドとアルテアちゃんはエッグ婦人とヒナたちとともに唐揚げを突いていた。『ギルギルしくなるの知ってたの?』とのフィルラドの問いに、『誰がいつも面倒見ていると思ってるんだ?』とアルテアちゃんは得意げ。からかうようにフィルラドの口に唐揚げをつっこんでいた。フィルラドは真っ赤になっていた。
パレッタちゃんはポポルにヴィヴィディナをけしかけて遊んでいた。ポポルは『ふぎゃあああ!?』って叫びながら逃げてたんだけど、『やられてばかりだと思うなよ!』ってまさにパレッタちゃんがかじっていたシュークリームをすれ違いざまにガッて口で奪い取って一飲みにしてしまった。『まさか……! こんなことが……!』ってパレッタちゃんの絶望はヴィヴィディナがおいしくいただいていた。
ジオルドとクーラス、今日は女子に囲まれてすっげぇ幸せそうだった。クーラスはともかく、ジオルドも乱戦中にかなり男らしい活躍をしていたらしく、女子にちやほやされまくっていた。
あいつら、『カッコよかったよ!』、『今日はサービスしてあげちゃう♪』って女子たちに『あーん♪』とか、軽いハグとか、頭ポンポンとかされまくって『ようやく時代が来た……!』って涙を流して笑っていた。
ギルはもちろんジャガイモを『うめえうめえうめえぇぇぇぇっ!』って食ってた。『親友のジャガイモマジうめえ! これマジジャガイモレベルを超えた!』ってわけわからんことを口走る。
でも、ミーシャちゃんが『あたしのジャガイモとどっちがおいしい?』ってギルにジャガイモを『あーん♪』ってやったら、あの野郎、なんかいきなり真っ赤になって超ビビった。意外な反応に周りもめっちゃ盛りあがる。ピアナ先生もグレイベル先生もにやにやしてはやし立てていた。
『親友ぅ……!』って助けを欲しそうにこちらを見てきたので、ロザリィちゃんの肩を抱きながら『筋肉の導きに従え』とだけ告げておいた。
あの野郎、直後にミーシャちゃんを肩車しだしたけど、奴の筋肉はいったいどういう答えを示したのか。まあ、二人とも幸せそうだったから別にいいだろう。
裏で頑張ってくれてたゼクトもいろんな料理を喰いまくっていた。こないだの休日プリンの子がなぜかさりげなくゼクトの隣をキープしていたことが気にかかる。ゼクトのやつ、場を盛り上げるためにあちこち移動してるのに、気づくと必ずその隣にいたんだよね。
先生たちも料理を楽しんでくれていたようだった。ステラ先生は『人が多いといつもより楽しいねっ!』って言ってたし、ピアナ先生は『打ち上げはすごく平和的だよね!』ってジャムクッキーを貪っていた。グレイベル先生は『…平和な宴会はいいな』ってギルをはじめとした男子が丸焼きにかじりつくのを眺めていた。
丸焼きにかじりついたミーシャちゃんが、同じくかじりついたギルに肉と一緒に物理的に食われそうになってたけど、アレは平和のうちに入るのだろうか?
あ、あと意外にもすっげぇ盛り上がって楽しそうだったのがシューン先生。学生と同じテンションで騒ぎまくる。『ティキータの宴会はもっと質素だし、いつもはみんなこんなに盛り上がったりしないんだよ! やっぱ決闘のテンションはすごいな!』と笑っていた。
この程度は当たり前じゃね? って思ったら、ゼクトに『二次会の件はバラすな』と目で訴えられた。やっぱりあいつら、先生を抜きにした二次会をメインの宴会にしているらしい。
さて、盛り上がってる中、俺は一心不乱にエビフライを食べてたんだけど、昨日のダメージが残っているのか途中で落っことしてしまった。たぶん普通に手が滑っただけだと思うけど。
が、それを見たステラ先生が『手が痛むの!?』とめっちゃ心配してくれた。俺、昨日ラフォイドルと血まみれで殴り合ってたし、手にダメージが集中していると思ったんだろう。気づかいするステラ先生マジエンジェル。
せっかくなので、『手が痛くてフォークを持てないのであーんしてください』と頼む。ステラ先生、『それならしょうがないかな?』って『あーん♪』ってしようとしてくれた……んだけど、ここでゼクトが『宴会でそんなことしちゃダメっすよ!』と割ってきた。マジでぶっ飛ばしてやろうかと思った。
しかし、杖を引き抜こうとした瞬間、ゼクトは『エビフライならエビフライゲームじゃないと!』とステキすぎる提案をしてくれた。
エビの尾っぽを切って、片っぽをくわえてもう一人に食べさせるアレ。もうね、この世にそんな素晴らしいアイデアがあったことに感謝をささげたよ。
ステラ先生『……っ!』って超真っ赤。エビよりも真っ赤。『そそそ、そんな恥ずかしいの無理っ!』とわたわたしだした。
ところが、ここでピアナ先生が『あ、私それラギとやったことある』、シューン先生が『新婚時代よくやったな! 娘も小さいころはやってくれたんだけど、最近やってくれないんだ』、グレイベル先生が『…酒の入ったおふざけとはいえ、俺も先輩とやった事がある』と発言。先生たちの中でステラ先生だけ未経験という事実が明らかに。
『やーれーよー!』とステラ先生をからかうピアナ先生。しかしさすがはグランウィザード、ステラ先生はさらっと『ゼクトくんはどうなの!?』と矛先を変える。
が、ゼクトのやつ、『俺もやったことないっすね』と告げる。『ほら見なさい!』とでも言わんばかりのきりっとした表情のステラ先生。ステラ先生が可愛すぎてこの時点でもうおなか一杯。
しかし、そんなステラ先生をあざ笑うかのように、ゼクトは『じゃあ、俺がやったらステラ先生もやってくれるってことっすね!』と例のあの子をちょちょいと呼び寄せ、『な、頼むよ?』とエビフライをくわえてほほ笑んだ。女の子、かぁっと赤くなる。
『な、なんでアンタと……!』、『盛り上げるためだ、な? また今度買い物付き合うから』、『そそ、そんなに言うならわかったわよ! べべべ、別にアンタのためにやるんじゃないんだからねっ! 勘違いしないでよねっ!』と目の前で繰り広げられる茶番。女の子、言葉の割には超嬉しそう。
ゼクトはあの状態でどうやってしゃべったのだろうか。ちょう気になる。あと、エビフライにかじりついた女の子の羞恥と喜びと甘酸っぱい何かが入り混じった表情がなかなかにグッドでよかった。
さて、目の前でお手本を示されステラ先生は逃げ場がない。『ステラ、この程度未経験って女としてアウトよ?』、『…酒の席だったって、今ならごまかしが効きます』、『いいなあ、俺もそんな風に学生と戯れたい!』と先生の援護射撃も。
で、『今回だけの特別なんだからねっ!』とステラ先生は腹を決めた。誰とも知らぬやつよりとやるよりかは、今ここで経験を積んだほうが良いと踏んだらしい。
真っ赤になった先生の顔とエビフライが近づいてくる。ぎゅってつぶった眼と緊張している顔がベリーキュート。揚げ物の香りと先生の香り。パクッとやった瞬間にぼんっ! って音が。俺、人の顔があんなに赤くなるのを初めて知った。
もうね、マジで女神過ぎるエクセレントでプリティな顔だったよ。いつも以上に近くにその顔があって心臓ドッキドキ。もし出会ったばかりのころにこれをやっていたら、俺たぶん心臓破裂して死んでいたと思う。
なお、その瞬間に盛大な舌打ちの音が響き渡ったことを記しておく。別にキスしたわけじゃないのになぜだろうか。幸せすぎてほとんど耳に入らなかったけど。
もちろん、『先生だからおっけー!』とロザリィちゃん。ちゃっぴぃは容赦なくひっかいてきた。ステラ先生は『ふしゅぅぅ……!』ってピアナ先生に抱き付いたまま動かなくなってしまった。何あの可愛い女神。あ、ステラ先生か。
だいたいこんなもんだろう。ステラ先生の可愛さをこの程度でしか表せない自分の文才の無さが恨めしい。ホントはこれの一億万倍かわいかったから。うれしすぎて言葉にできないけど。
内緒だけど、寝る直前にロザリィちゃんが『……わたしがいちばんだもん!』ってちゅっ! ってキスしてほっぺを真っ赤にしながら逃げてった。嫉妬ロザリィちゃんが可愛すぎて思わず照れる。
ギルは今日も大きなイビキをかいている。やつの鼻にはエビの尾っぽを詰めてみた。……あれ、前に詰めたことあったっけ? まあいいや。さすがに疲れた。眠い。おやすみなさい。
※燃えるゴミ。魔法廃棄物はまた来週。




