214日目 発展魔法生物学:カタストロフィコクーンの生態について
214日目
ギルのシーツがびっしょり。一瞬おねしょしたのかと思った。
やつのシーツを干してやってから食堂へ。なんとなく今日はオリジナルブレンドのハーブティーを作って飲んでみた。後味すっきりで爽快な気分になるものの、ちょっと香りが強すぎるきらいがある。ちゃっぴぃはあまり口に合わなかったらしく、不満げに『きゅぅ……』って尾っぽで俺の背中を叩いていた。
なお、ちゃっぴぃが残したハーブティーはギルがジャガイモと一緒に『うめえうめえ!』ってしていた。ヒナたちも水分補給として飲んでたけど、鳥にハーブティーの味ってわかるのだろうか?
あと、熱いハーブティーをうっかり口にして『あちちっ!』って舌を出すロザリィちゃんが最高にかわいかったです。思わずぎゅっと抱きしめそうになったよ。
今日の授業はグレイベル先生、ピアナ先生の発展魔法生物学。今回から魔物パートに入るらしく、『前期に比べて危険度が跳ね上がってるから油断するな』ってグレイベル先生がガチな声で注意を促していた。
もちろん、ギルはポージングをもってそれに答えていた。あれだけ説得力のある回答もそうみられないだろう。
内容はカタストロフィコクーンについて。こいつ、グレイベル先生くらいの大きさをしている直立した棺桶ちっくな繭で、ある日突然地中から生えてくるらしい。
ただひたすらに頑丈ということ以外はこれといって特徴がなく、朝晩にしっとり濡れること、そして脇腹(?)あたりに脈動が見られることくらいしか特筆すべき点が(この時点では)ないそうだ。
が、ヤバそげな名前通りめちゃくちゃデンジャラスだったりする。以下にその内容を記しておく。
・カタストロフィコクーンはある日突然現れる。捕食、探索、生殖活動といった一切の行動をせず、文字通り現れたそこから身動きをしない。そのため、発見に遅れることもしばしばある。見つけたら即座にぶっ壊せ。
・カタストロフィコクーンの繭は非常に頑丈である。村中の男が一日中クワやスコップ、はたまたハンマーを振り下ろしても傷一つつかなかったという記録もある。でもあきらめずにぶっ壊せ。
・存在してある程度経ったカタストロフィコクーンは異常魔素雰囲気を放ち始め、黒赤く変色し、発光現象を伴いながらその脈動を強くする。これは繭の解放の予兆である。とりあえずさっさとぶっ壊せ。
・繭が解放されると何かしらの災害的被害が起こる。多くは周囲一帯が消し飛ぶことだが、繭から未確認の魔物が出現する例も多く報告されている。何があってもお構いなしでぶっ壊せ。
・繭の解放が起こると、真っ二つになった繭が新たなカタストロフィコクーンとして世界に散らばる。これによりカタストロフィコクーンは繁殖しているのだと考えられるが、矛盾点や説明しきれない部分も多く、詳しいことはわかっていない。わからなくてもぶっ壊せ。
・現時点では、解放前に繭を殺すくらいしか解放を防ぐ方法は確認されていない。とにかく叩いてぶっ壊せ。
・魔物は敵。慈悲はない。
ぶっちゃけ生物というよりかは災害に近いものらしい。見つけたらいかなる手段を用いても全力で排除しろって先生が言っていた。
で、特別に生け捕りにしてきた解放直前のカタストロフィコクーンと対面したんだけど、アレはマジでヤバかった。うまく言葉じゃ表せないけど、本能的な恐怖というか、ともかくさっさと逃げるかぶちのめせって俺の中の悪魔も天使も警告していた。
そんなわけで、さっそくクラスのみんなでボコりにかかる。が、耐久性が凄まじい。俺の魔法もほとんど威力が削ぎ落とされていた。どんどん脈動も激しくなってきてさすがに焦る。
『そろそろタイムリミットかな……』なんてグレイベル先生がガチ魔法でラッビア・テラ・スコップを作ったんだけど、ここで芋引く俺たちじゃない。
『俺に任せろ!』とギルが繭に全力の腹パンをし、『満足できるかなぁ?』ってパレッタちゃんがケタケタ笑うヴィヴィディナ(粘塊形態)をけしかけ、『繭の癖にナマイキなの!』ってミーシャちゃんがギルの筋肉と共鳴するクレイジーリボンで締め上げた。
もちろん俺も、アフェクション・エンプレスを用いて吸収魔法を叩き込む。ついでにひび割れの中にギルの靴下も突っ込んでおいた。
カタストロフィコクーンから尋常じゃない悲鳴(?)。脈動が収まり、なんかしくしくとした鳴き声とともに繭が崩れ去って行った。
これぞ友情パワー。クラスの絆の力に感動を隠せない。『……決定打ってどれだろ?』って首をかしげるピアナ先生がマジ天使だった。あと、『…やり場のないこの気持ちをどうすればいいのか』ってスコップを構えて固まるグレイベル先生がマジイケメンだった。
夕飯食って風呂入って雑談して今に至る。今日は解放前の対処を学んだけど、上級生になると解放された繭から出てくる魔物と戦う実習もあるのだとか。今回はクラスのみんなで事に臨んだだけに、一人であれに立ち向かうことに震えを隠せない。ちょう怖い。
怖すぎて眠れないからステラ先生のダンスを見ようと思う。ギルのイビキがうるさいのがネックだけど、ステラ先生が女神過ぎるから問題ない。
とりあえずあいつの鼻にはこっそりちょろまかしておいたカタストロフィコクーンの欠片を詰め込んでおく。おやすみーとそーす。




