21日目 魔法生物学:虹夢花の栽培について
21日目
ギルが光り輝いている。とりあえず拝んでおいた。
朝食はクロワッサン。香ばしくてなかなかに美味。オシャレなパンなんてあんまり食べたことがなかったけど、これは結構イケる気がする。マデラさんのところでも出すように今度手紙を送っておこう。
光り輝くギルはやっぱり食堂で目立っていた。儚い光なんだけど妙に存在感があったんだよね。クラスの男子は俺を真似してなんとなく拝んでいた。ティキータ・ティキータの連中も真似して拝んでた。エンゼルフィンを大量に採った幸運にあやかりたいらしい。
ギルのヤツ、ジャガイモを『うめえうめえ!』って頬張りながら半裸でポーズをとっていた。悔しいけれど、いつも以上に肉体美がすさまじい。アエルノチュッチュの連中が不意打ちでそれを見てミルクを吹きだしていた。ナイスギル。
朝飯の後は魔耕着に着替えて魔法生物学。やっぱり動じないグレイベル先生マジイケメン。ピアナ先生が目をぱちくりしていたのがとってもキュート。
今日のテーマは虹夢花。もう魔法植物学にしたほうがいいんじゃねって思ったけど口には出さない。虹夢花は割とレアもので入手が難しい。あと高い。このチャンスは絶対に活かす。
先生たち曰く、虹夢花はその色によって魔法的効果が変わってくるらしい。ただ、基本的には興奮剤や痛み止め、幻惑剤や魅了の秘薬といった精神に作用する効果を持つ場合がほとんどだそうだ。今回用意された虹夢花は赤色で、こいつは理性を落とす代わりに筋力や素早さを上げ、痛みに鈍くする興奮剤に用いられるとのこと。魅了の秘薬の色は教えてくれなかった。作成がめっちゃ大変ってことだけ教えてくれた。
以下に育て方のポイントを示す。
・苗は深めに植える。水はたっぷりやっておいたほうが失敗しない。
・後天的な色の制御で接木をする場合、ドリアードの蔓などで固定する。
・ある程度成長すると地面から捕食用の触手を伸ばすので早めに処理する。この触手は枝からも出るため注意。
・上記の理由より、樹勢を抑えるために無駄な枝は定期的に処理する。
・花を複数咲かせた場合、魔法的効果を集中させるため余分な花を摘み取る。摘み取った花は魔法材料にも使用できるが効果はイマイチなので肥料にした方がよい。
・まごころを込めて育てる。まごころを込めないと拗ねる。
・収穫は愛情を込めて行う。
触手の処理以外はまずまずといったところ。でもナエカやコケウスと比べると格段に手間がかかる。お金によるリターンを考えれば苦にはならないけど。
驚くべきことに光り輝くギルは月光と同じ効果があったらしい。ちょっとくすんでいた虹夢花があっという間に鮮やかになったのはマジでビビった。ギルが半裸でポーズを決める度に綺麗になっていくのはもはや不気味としか言いようがなかった。
ピアナ先生が仰天していたのはもちろん、グレイベル先生が目をかっ開いていたのは意外だった。二人してギルにどうやっているのか説明を求めたけど、あいつは『明日には戻るからどうしようもないっす』って言ってやんわりと断っていた。でも、授業時間中はずっと光を当て続けていた。ヤツの光が魔法植物に変な影響を与えないことを祈る。
虹夢花(赤)の苗は貰っておいた。なんかしらんけど俺、ピアナ先生に信頼されているらしい。同好の士だから当然か。無事に育てられたら他の色も分けてくれるってピアナ先生が言ってた、グレイベル先生も無言でうなずいていた。
月光が足りないときはギルにムーンフェアリーの涙を使えばいいと学ぶ。でもあれ高いからあまり使いたくないんだよなぁ。
で、夕飯食って風呂入って今に至る。今日は雑談の時にステラ先生はこなかった。でも、最近クラスのまとまりがよくなっていると思う。いい兆候だ。
明日は休み。やりたいことがいろいろあるけど何をしようか。イビキでうるさいギルの鼻にはバンシーの涙に光蛾の鱗粉を溶かしたものを垂らしておく。イビキが一瞬止まったのでマジでビビった。
ムーンフェアリーの涙の代用品ができることを強く望む。おやすみ。




