205日目 デュエル・オブ・ライト&レフト
205日目
ギルの右手と左手が戦っている。右手が勝つのにハゲプリンを一個賭けたけど、直後に賭けの相手がいないことに気づいた。超悲しい。
打撃音を絶えず轟かせるギルを引き連れ食堂へ。せっかくなので『休日限定ミラクルプリン(最近おばちゃんが考案した人気デザート。数量限定)を賭けて右と左のどっちが勝つか予想しないか?』とみんなに提案するも、すでにみんなミラクルプリンを確保していたため賭けが成立しなかった。
しかも、『ギルがギルと戦ってんのにそんな短時間で勝負つくわけないだろ?』とクーラスに鼻で笑われる。
言われてみれば、ギルがミーシャちゃんとポポルにジャガイモを口に放り込んでもらって『うめえうめえ!』と食べる度に、傷ついた拳が活性化して癒えていく。なんであいつらこんな異常事態を目の前に平然としていられるんだろうか。理解できない。
が、あきらめかけたその時、『その賭け、乗った!』ってティキータ・ティキータのゼクトがやってきた。で、あいつが左手に賭けたので俺は右手に賭ける。二人きりの熱い勝負が始まった。
しかし、熱い攻防が続くも結局勝負はつかず。速さの右手も技の左手も互いに決め手に欠けていた。『マジか……』とゼクトがすごく残念そうな顔をしていたので理由を聞いたら、『ウチのワガママおひめさまにプリンを所望されたんでね?』って冗談めかして親指でくいって後ろを指した。
ゼクトの後ろの方でハラハラしながらこっちを見ていた女の子と目が合う。目が合った瞬間、ちょっと涙目でぐすぐすしながら『べ、別に悔しくなんてないんだからっ!』って言ってぷいってそっぽを向いてしまった。
あの子は休日限定ミラクルプリンを楽しみにしていたのに、今までタイミングが悪くて食べられなかったらしい。で、今日こそはと意気込んでたんだけど、テスト勉強のせいでうっかり寝過ごし、食堂に来た時にはなくなってしまっていたそうな。
んで、しょぼんとしているのを見たゼクトがプリンをせしめようと賭けに参加したってわけだ。
『お前のプリンをはんぶんこすれば問題なくね?』って提案したら、『それ言うとなんかすごく怒るんだよな……』ってゼクトは言った。『ゼクトのばかばか!』ってその子は容赦なくぽかぽかパンチを涙目でかまし続ける。
しょうがないので俺のミラクルプリンをあげようとしたら、『ゼクトにはんぶんこさせるから、気持ちだけ受け取っとく』と言われる。『えっ?』っと俺もゼクトも驚きの表情。
『どういうことだ?』ってゼクトと話してたら、『お前らには一生分からんだろう』って傍観を決め込んでいたアルテアちゃん他数名の女子に突っ込まれた。
女の子って本当に謎だ。ゼクトは腑に落ちないと表情で示しながらもプリンをはんぶんこして食べていた。相手の女の子、悪態ついてたけど超幸せそうな顔をしていた。
日中は昨日と同じく勉強をする。変わったことと言えばパレッタちゃんが『ヴィヴィディナ……お願いね?』ってカンペに擬態させたヴィヴィディナを全身に這わせていたくらいかな?
羽音とカサカサ音がすさまじくってマジでチビりそうになった。虫を生肌に這わせてなんでパレッタちゃんは恍惚の表情を浮かべられるのだろうか。
なお、ポポルもヴィヴィディナに体を這わされていた。『一瞬で暗記できるんだけど』ってパレッタちゃんは言ってたけど、ポポルは『普通に勉強するからやめてくれぇ!』って涙目で悲鳴を上げていた。悲鳴を上げたせいでヴィヴィディナが口にも入り込んでいた。あいつバカだ。
夕飯食って風呂入って雑談して今に至る。勉強しかしてないと書くことが少ない……って思ったけど、印象深かった出来事を詳しく書いてしまって結局いつもと同じ文章量になるのがいただけない。日記書いてないで勉強するなり寝るなりしなきゃいけないのにね。
そして今更ながら、今日もロザリィちゃんとイチャイチャできなかったことに気づく。せいぜい『お・し・え・て・♪』って脇腹を突かれたくらいだ。もちろんめっちゃプリティだったけど。
ギルは健やかにクソうるさいイビキをかいている。右手と左手の決着もいまだについていない。平穏の琥珀(の欠片)を鼻に詰めておいた。みすやお。
※明日ハ深淵ヨリ這イズルモノヲ獄炎ニ葬ル。魔ナル愚者ハ見逃シテヤロウ。コノ聖戦……何人タリトモ邪魔サセヌ。




