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201日目 基礎魔法陣製図:自由勉強時間

201日目


 ギルの舌がスライム状。半透明な舌ってわりかしグロい。こいつは切り取っても売れないと思う。


 ギルを起こして食堂へ。いつも通りちゃっぴぃを膝にのせてロザリィちゃんの手作りカフェオレを飲んでいたら、バルトラムイスのシャンテちゃんが『アエルノと抗争するってホント?』とやってきた。


 『抗争ではなく悪を滅するための聖戦だ』って言ったら、『なんでもいいけど、こっちに被害が出ない程度にボコボコにしてね』と超いい笑顔でオステル魔鉱石をくれた。ゼクトからプレゼントするならオステルがいいと聞いたらしい。


 いったいどこからオステルの情報が流出したのか。超不思議。あと、ギルは今日も『うめえうめえ!』とジャガイモの山を平らげていた。透明な舌がにゅるにゅる動くさまが限りなく不気味。ミーシャちゃんはそんな舌をぐいって引っ張ったりしてケラケラ笑っていた。


 授業はキート先生の基礎魔法陣製図。課題の提出&返却を済ませ(今日も再提出はほぼいない。パレッタちゃんが名前を書き忘れたくらい。図面が明らかに呪われているから誰のものか一発で分かったそうな)、例の落書きを見た。



『正直俺にはさっぱりですね。上級生とのつながりってほとんどありませんし。ライラちゃんですが、お風呂上がりにイチゴミルクを飲むのが好きなようです。この前奢ったら、すっごいにこにこして受け取ってくれて癒されました』


『あー、俺ちょっとだけ心当たりあるかも。分析室で知り合った先生の研究室にロリコンっぽい人がいるって噂を聞いた。ただ、有能でもあるらしいからイマイチ信憑性に欠ける。好みの女は……ロベリアちゃんかな。ちゃんづけしたらまず間違いなく呪ってくるくらい気の強い女』


『また下らんことを提案したもんだな! 言っとくけど俺は分析室の先生とかなんも関係ないから! 超優秀でイケメンで気配りもできるすげえやつだから! こないだも後輩に勉強教えてほめられまくったぜ!』


『ロリコン、マジでそろそろ黙らないと身バレするぞ? 俺もお前がバレたらちょっと困るんだよ。あ、しいて言うならロリコンの言ってることの半分はホントだぜ? シエナちゃんだけど、高いシャンプー使ってるらしくて風呂上りは超いいにおいする』



 ……と書かれていた。クゼはなんかライラちゃんといい感じみたいだし、エルに至っては何でそんなことを知っているのかちょっと不安になるレベル。まさか風呂上がりのシエナ先輩をこっそりすーはーしているのだろうか。


 とりあえず、


『風呂上がりの女の子ってステキですよね。ロザリィちゃんもすごくいいにおいがします。遠くからでもわかるくらいなんですよ。今度僕もハートフルピーチのジュースでも風呂上がりにプレゼントしてみようと思います。ラドはロベリアちゃんについて詳しく』



 とだけ書いておいた。よく考えたら、ロリコンの正体よりも女の子の情報を出してもらった方が有意義じゃね?


 さて、早速今日の授業に入る……と思ったんだけど、キート先生は道具の一つも用意せず、『先日はありがとうございました』と俺たちに頭を下げた。


 『方法はともかく、私の体を労ってくれたことはとてもうれしいです。風邪薬やキャンディ、クッキーがポケットに入っていることに気づいたときは不覚にも泣きそうになりました』といくらか柔らかい笑顔も見せる。


 が、『呪われたミミズ、魔素雰囲気に侵された芋虫、セミの抜け殻を入れた人は怒らないから正直に名乗りなさい』と強張った笑みを浮かべてつづけた。


 もちろん、入れたのはパレッタちゃんとポポル。『ヴィヴィディナの大好物だから先生も喜ぶと思った』、『渡せそうなものがそれしかなかった』とは二人の談。


 キート先生、『気持ちはうれしいですが、もう少し相手のことも考えましょう』って二人の頭をポンポンしてた。あと、ポポルには『やるなとは言いませんが、そろそろセミの抜け殻集めからは卒業してもいい年ですよ?』と諭していた。


 で、ようやく今日の授業に入ると思ったら、『キミたちへのご褒美、およびかねてからの熱い要望を鑑みて、今日は課題なしの自由勉強時間にします』とのステキな宣言が。


 『本当にいいんですか?』と聞くと、『キミたちにとってこれが一番のプレゼントになるでしょう? それに、私も少しは肩の力を抜けとアドバイスをもらったんですよ』と答えてくれた。


 どうやら療養中、シキラ先生がお見舞いにやってきて『先生の勤勉なところは美徳ですが、ちっとくらいふざけないと疲れるだけですし、気楽にいきましょうや!』って元気づけられたらしい。今日のこの措置もシキラ先生の提案だそうな。


 一応スケジュールにそれなりの余裕があること、先生も休めること、そして何よりなぜかルマルマだけ製図に対する理解力と実力が飛びぬけているため、やっても問題ないと判断したらしい。


 で、早速勉強。さすがに遊びほうけるわけにもいかないから、今までの学習内容をギルの筋肉とロザリィちゃん、ほか数名に教え込む。あ、この授業は試験なしだから別の授業の奴ね。


 勉強していたら、キート先生が『ちょっといいですか?』とギルの隣に来る。で、ギルの手を杖でコンコンとたたき出した。


 途端にギルの手の色が変色。虹みたいに青、緑、黄、赤色の四本の線がグラデーションっぽく現れた。ギルのやつ、『すげえすげえ!』ってレインボーハンドでポーズを取っていた。


 『まさかここまでとは……』とキート先生がつぶやいたので、『これはなんです?』と聞いてみたら、『殴られた瞬間にとっさに張った反応照射結界による魔力マーキングです』との答えが。


 なんでも、キート先生はギルに殴られるあの一瞬にここまで高度な結界を極点的に多重展開していたらしい。『そうでもしてなきゃここに立っていません。体調が万全なら気絶もしなかったと思いますが……』って言ってたけど、あの神速の腹パンに反応するってかなりすごくね?


 ちなみにこの魔力マーキング、相手の攻撃の威力を知るためのものなのだそうだ。完全に許容限界を迎えるとはっきりと七色現れるらしい。でも、『一年生で四色出せるって相当すごいですよ』ってキート先生はギルをほめていた。


 で、なんとなくその話題で盛り上がり、魔力マーキングについてちょっと語ってくれた。


 三流のマーキングは自分にも相手にもその存在がわかり、簡単に落とされちゃうやつ。


 二流のマーキングは三流のやつの落ちにくいやつ。この辺が一般的なマーキングのレベル。


 一流のマーキングは相手には気づかれず、味方にはその存在がわかるやつ。もちろん落ちにくいやつ。


 で、超一流のマーキングが味方にも相手にもその存在がはっきりとわかり、主張をめちゃくちゃしてくるくせにどう頑張っても落ちないやつだそうだ。


 キート先生は風邪でフラフラな状態でギルの神速の腹パンに一流のマーキング(それも多重展開)を食らわせたわけだけど、『自分なんてまだまだです。ステラ先生だったら熟睡してても超一流のマーキングを確実に決めてくる……というか、敵対者が知覚範囲に入った瞬間に勝負が決まると思います』って言ってた。ステラ先生マジすげえ。


 夕飯食って風呂入って雑談して今に至る。雑談中、クーラスと一緒に瞬時にどこまで結界を展開できるか試してみたけど、俺もクーラスもキート先生レベルの複雑な結界を多重展開するのは一回も成功しなかった。あのひと、もしかして過労じゃなければすごい人なのだろうか?


 ギルは今日も大きなイビキをかいている。アエルノとの抗争が近いのにずいぶん安らかな表情だ。この神経の図太さだけは見習いたい。


 最近忙しいせいか、あまりロザリィちゃんとイチャイチャできていない。超寂しい。とりあえず、ギルの鼻には愛の欠片を詰めてみた。おやすみなさい。

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