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200日目 発展魔法生物学:マギカ・アデノストマ・ファスキクラツムの栽培について

200日目


 とうとう二百日の大台に。ここまで来たら突っ走るしかない。あと、なぜか日記の二百日目のページに『ジャガイモ妖精は努力する人を応援するイモ。復讐もばっちり応援するイモ』って書いてあった。応援だけしかしないジャガイモ妖精が何の役に立つのか。


 昨日はロザリィちゃんとイチャイチャできなかったため、互いに『あーん♪』ってやりながら一口サンドイッチを食べていたら、ティキータ・ティキータのゼクトが『アエルノと抗争するってマジ?』とやってきた。


 『抗争ではなく、卑劣な行いをするアエルノに正義の鉄槌をかざすだけだ』って言ったら、『何か必要なものがあったら行ってくれ。とりあえずこれやるから頑張れよ!』ってオステル魔鉱石をくれた。


 なんでオステルをくれたのかわからないけど、もらったものは有効活用しようと思う。あと、今日もギルは『うめえうめえ!』とジャガイモを食べていた。ヒナたちもヘドバンしながらギルの皿を突いていた。


 さて、今日はピアナ先生、グレイベル先生の発展魔法生物学。『なんかこないだ大変だったみたいだね?』とピアナ先生に聞かれたので、『近いうちにケリを付けますからご心配なく』と返しておく。『余計に心配になるんだけど……』って困った様に笑う姿がマジエンジェル。


 意外なことに、グレイベル先生は『…ほどほどにな』と抗争に対して肯定的。『命を張らずにバカできるのは学生のうちだけだから』って達観したように微笑んでいた。


 先生同士でバカやると命をかけなきゃいけないって初めて知った。この業界、どんだけ業が深いのだろうか。


 内容はマギカ・アデノストマ・ファスキクラツムについて。てっきり中間試験のテスト対策の時間になると思ってたんだけど、よく考えてみれば先生たちの授業は中間テストがなかった。超うっかり。


 このマギカ・アデノストマ・ファスキクラツム、どこかで見た名前だと思ったらこないだの図書館のバイトのときにピアナ先生が借りた本に書いてあったやつ……の、魔法的異常変異を起こしたものらしい。アデノストマ・ファスキクラツムはあくまで魔法的要素を持っていなかったけど、こいつはオリジナルのそいつの特徴を魔法的性質を得たことでより厄介にしたものだそうだ。


 以下にそのメモを書いておく。どうでもいいけど、こんなに長い名前の生物を扱うのって初めてじゃね? 日記のタイトルのスペースがキツキツなんだけど。



・マギカ・アデノストマ・ファスキクラツムは揮発性、発火性の樹脂を分泌する。この樹脂に火を近づけると盛大に発火する。


・樹脂の発火性は凄まじく反応がよく、近くで火の魔法を発動しようとするだけで盛大に発火する。


・マギカ・アデノストマ・ファスキクラツムは火の要素を取り込むことで活性化する。前述の方法を含めた何らかの方法で自らを含めてあたり一面を火の海にし、ほかの植物が根絶えたところで火炎で活性化して茂り、繁殖地を広げていく。ちょっとでも燃え残しがあれば盛大に発火する。


・故に焼き払うだけでは駆逐できない。むしろ成長を促すことになる。駆逐するためには除草剤や溶解剤の類を用いるほかないが、これらに火の魔法要素が含まれていた場合、逆効果になる。もちろん盛大に発火して元気に茂る。


・栽培する際は、とにかく火の魔法要素を付近から排除する。それさえすればほかに意識することはない。排除しないと盛大に発火する。


・まごころを込めて育てる。込めないと盛大に発火する。


・収穫は愛情をこめて行う。



 とにもかくにも発火しやすい植物らしい。しかも、その発火によって近くの植物を殺したうえで活性化するからタチが悪い。『天然の火薬のようなものだ』ってグレイベル先生は言っていた。


 何が面倒かって、こいつの駆除に火が使えないことだろう。普通の魔法植物なら焼き払えば一発なのに、それができないせいで扱いがすごく面倒くさい。『火の魔法要素が使われているものが近くにあるだけで発火するから気を付けて!』ってピアナ先生が言ってた。


 実際、クーラスが火要素の罠魔法陣を組もうとしただけで用意されたそれが一瞬で燃え上がっていた。しかも、燃えながらもにょきにょき生えてくるというたくましい生命力を見せつける。魔法植物超怖い。


 なお、『大道芸人なんかはこいつを口に含んで火吹きをする』とグレイベル先生が教えてくれた。しかも、『…ちょっと見ててみろ』と実演してくれた。宴会芸として覚えたらしい。めっちゃかっこよかった。が、最近はやりすぎて受けが悪くなってきたとのこと。


 ちなみに、発火しそうで本当にどうしようもない時は飲み込んでしまえばなんとかなるらしいけど、しばらくは吐息が燃えやすくなるから口を開けないようにしなきゃいけないんだって。


 あと、かなり強引で力技だけど、駆除方法で一番手っ取り早いのは、繁殖地帯を魔法的密閉空間で覆い、再生しなくなるまで燃やしつくすことなんだそうだ。『魔系に駆除が依頼されるのはこういう理由のためだ』ってグレイベル先生が言ってた。なんだかんだで火に焼き尽くされる運命らしい。


 夕飯食って風呂入って雑談して今に至る。グレイベル先生の話を聞いたギルは、マギカ・アデノストマ・ファスキクラツムを『うめえうめえ!』と貪り、夕食の時に口から火を噴いてジャガイモを焼いて食っていた。今日も平和だ。


 ギルは大きなイビキをかいている。居眠りドラゴンのように時折火が吹き上がるのがちょっと面白い。火事防止のため、ウォータースライムのぷるぷるを詰めてみた。消音効果が思いのほか高い。おやすみみるくくっきー。

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