199日目 基礎魔法材料学:中間テスト対策
199日目
復讐の刃がコナゴナ。復讐拒否もここまでくると逆に感心。
ギルを起こして食堂へ。アエルノのやつらにどうやって復讐しようかと考えつつベーコンエッグを食べていたら、ラフォイドルのやつが超にやにやしながら『ようよう、昨日はあんなに慌てて何してんだ? とりあえずこれでも飲めよ』ってキンキンに冷えたミルクを差し出してきた。
『お前らの仕業だってことは調べがついている。今すぐ謝ればギルのハグだけで済ませてやる』と言い返すも、『俺たちが何したってんだ? ちょっと廊下に魔法陣おいてただけだろ? 異常魔素雰囲気くらいよく発生することだよなぁ?』ってすげぇムカつく嗤いを浮かべながら見下してきた。
さすがにみんなブチ切れそうになる。が、この段階で正確な反論をすることができない。とりあえず互いに呪を十発くらい打ち合ってお開きすることに。なお、渡されたミルクはギルがジャガイモと一緒に『うめえうめえ!』って飲んでた。
なお、俺もラフォイドルも、食堂から出る際に『飯食うところで暴れてんじゃないよ!』っておばちゃんに拳骨を落とされた。解せぬ。
授業はシキラ先生の基礎魔法材料学。時がたつのは早いもので、『来週中間テストだから今日はテスト対策で自由勉強な!』とのこと。本当はシキラ先生は抜き打ちテストが好きらしいんだけど、ハゲプリンの時の取引もあって泣く泣く告知することにしたらしい。
さて、自由に勉強していいとはいえ、正直そんな気分でもない。普段からこの日記をつけているから復習なんてすぐに終わる。それに、ほかでもないシキラ先生自身から過去問をもらっているし、上級生のサポートもあるのだ。楽勝過ぎてあくびが出る。
だから、質問しに行く体を装ってシキラ先生に『なにかいい復讐方法はありませんか?』と聞きに行く。俺、この人以上にこの手のことに詳しそうな人間を知らない。
『復讐って昨日のアレか?』と先生は超嬉しそう。『復讐に正当性を持たせるためにも、まずはやつらの手口を解明しなきゃダメなんじゃねえの?』と尤もなアドヴァイス。
しかし、正直なところそれを解明してしまうとこっちの首が締まる。なので、『なぜいつもアエルノチュッチュ寮で発生している異常魔素雰囲気が今回に限ってルマルマで発生したのかわかりますか?』と核心をずらして聞いてみた。
すると、『そりゃ、俺がアエルノの組長に頼まれて反射結界触媒を提供したからだよ!』と驚きの言葉が。
何でも夏休み中、何度も分析室に通って異常魔力波を放つ物体を調べるラフォイドルと顔見知りになり(シキラ先生の研究室は分析室をよく使う)、そのことについて相談を持ち掛けられたらしい。で、なんか面白いことになりそうだったから喜んでルンルンの触媒を使ったガチ反射結界触媒を提供したそうな。
『どうして異常魔素雰囲気が発生するかわかんねえけど、一生徒に頼み込まれたら教師として断れねえもんな! それに俺、お前たちみたいなギラギラした目つきの奴は大好きだぜ! だって今にも抗争始めそうだし!』……と、明らかに何かに感づいている様子。
この人、やっぱりクレイジーだ。自分が楽しむためだけに両陣営をサポートしてやがる。ルマルマの全員から冷たいまなざしをされるも、『俺が手を下したわけじゃねえし? 反射地点を指定したのはアエルノだし? 俺はそれちょっと補正してやっただけだし? むしろトイレ貸してやったじゃねえか!』と腹を抱えてゲラゲラ笑っていた。
まさか、昨日わざわざ情報をくれたのもこのためだったのだろうか。この人、行動はともかくいい人だと思っていたけど全然そんなことねえや。
ちなみに、最善の復讐としては『俺的には裏切り不意打ち何でもありの泥沼の抗争が好きだけど、今回はオーソドックスに決闘して公衆の面前でギタギタにするのなんてどうだ?』とのこと。どういう結果になっても先生的にはオイシイらしい。
夕飯食って風呂入って雑談して今に至る。とりあえずクラス全員、近いうちにアエルノとの抗争があるとの見解で一致し、各々それに対して準備を進めていた。
ミーシャちゃんはリボンのトレーニングしてたし、フィルラドは召還魔法の設定をいじくってたし、パレッタちゃんは呪の触媒用意していたし、クーラスは新作罠魔法陣の設計をしていた。
みんなマジ狩る殺る気モード。『アエルノぶっ飛ばす』のスローガンのもと、みんなの心が一つになった。男女の溝もいつの間にかなくなっている。やっぱり共通の敵って必要だよね。
ギルは今日も大きなイビキをかいている。眠りながらもシャドーボクシングでイメトレするあたり、尊敬の念を隠せない。とりあえず、英気を養ってもらうためにギル・ポテトをカットしたものを刺しておいた。みすやお。




