20日目 基礎魔法学:触媒を用いた擬似爆破魔法実習
20日目
リシオが風化し崩れ去っていた。いったい何があったというのだ。
朝食はミネストローネ。トマトの酸味がいい感じ。マデラさんところと同じレベルとはおばちゃんもなかなかやりおる。あと、ミネストローネの鍋のところでロザリィちゃんとばったり会う。おはよっ! って言ってくれたのがエクセレント。しかも、流れでそのまま一緒に朝食をとることになった。ギルがちょっと邪魔だったけど。
そんなせっかくのスウィートモーニング中にアエルノチュッチュの連中がやってきやがった。ぶっ飛ばすぞコラ。
なんでも、あいつらもエンゼルフィンのひれが欲しいらしい。超高圧的な態度でもらってやらなくもないとか言ってきやがった。クラスの意見は確認するまでもない。ステラ先生の敵は俺たちの敵だ。
断ったらねちっこくしつこかったので『うるせえギルぶつけんぞ』って言ったら慌てて逃げて行った。ざまーみろ。
さて、授業はステラ先生の基礎魔法学。先生の笑顔で荒んだ心がすっかり癒された。杖をコンコンする癖が超可愛い。
今日やったのは前回の発展形として触媒を用いた手軽な爆破魔法について。爆発の魔法は全体的に制御が難しかったり威力が大きすぎたりで危険なところがあり、練習をするのがかなり危ないらしいけど、触媒を用いた小規模な爆破魔法を擬似的に再現することでその足掛かりをつかむらしい。
例によって例のごとく魔力的密閉空間を作り、そこに触媒としてジクノ魔鉱石と獣鳴水……魔式名称ヒドルナクロリアをぶち込んで魔素ヒドルを活性化させる。そこで前回も使ったような火の魔法(弱めのヤツ)を使うと確かに爆破魔法として擬似的に再現できた。
本物の爆破魔法ではないものの、その傾向や挙動を理解するのには十分だったと思う。火の魔法の強さによって爆破規模は変わり、当然のことながら魔力が強く、また触媒を多く用意してヒドルを活性化させるほど威力は高くなった。
あくまで触媒はブースター的役割を果たす為、大本である火の魔法そのものに指向性を持たせることで範囲を制御出来たり発射速度や貫通性能をあげることもできた。
ギルは調子に乗って触媒を使いすぎ、爆発させて煤だらけになってた。爆音でひゃって目をつぶったロザリィちゃんとステラ先生がダブルで可愛かった。もはやあれは罪のレベルだろう。
夕飯食って風呂入ってクラスルームでゆったりしてたらステラ先生が遊びに来てくれた。ひゃっほう。ステラ先生マジいい人。一生ついていきます。
で、なぜかカードゲームを挑まれた。しかも勝ったら何でも言うことを聞いてくれるって! ちゅーしてあげてもいいって! ふぉぉぉぉ!
調子に乗って全力を出したらケツの毛までむしり取られた。俺も自信あったけど、あの人はガチもんの手練れだ。どんなイカサマか一切わからなかったどころか、逆に俺のイカサマを利用してサマをかけられた。てへって舌を出す仕草が悪魔の笑みに見えた。そんなあなたもステキです。
おかげでフィルラドから巻き上げた金をまるまるもってかれた。しかもその金、貯金箱にぶち込まれた。
でもでも! 『遊ぶときはほどほどにね!』って言って帰り際におでこにちゅーしてくれた! いやっほぉぉぉぉぉぉぉ!
負け犬どもの嫉妬の視線が実に心地よかった。いい気分なので、今日は奮発して秘蔵のムーンフェアリーの涙をギルの鼻に垂らしておく。イビキがこんなに心地よく聞こえる日が来るとは。今日はいい夢が見れそうだ。




