2日目 ガイダンス
2日目
朝の目覚めは最悪だった。イビキがうるさいと思ったらあの野郎、ピクシーグラスを鼻から食っていやがった。確かに食えるけどさ、普通抜けなくなったからってそのまま吸って食うか? やっぱあいつはバカだ。警戒するべき大馬鹿だ。
そうそう、目覚めは最悪だったけど朝食は最高だった。スクランブルエッグもシリアルもパンもあった。しかもバイキング形式の食べ放題だった。マジでうまかった。なんでも、部屋の設備が質素な代りに食事だけは豪華にしているらしい。それなら許してやらんこともないと思った。フルーツとかも食べ放題だったし。つーか、学年別の食堂とはいえあれだけの人数が満足できる量ってすごくね?
でも、ジャガイモだけは全然減ってなかった。それを見たギルが『俺全部喰っちゃうよ!』って言ってマジで全部喰いやがった。『うめえうめえ!』って言ってたけどあれは全部ふかしただけのただのイモだ。それを丸々一山、水も飲まずに食いやがった。みんなのアイツを見る目が『ちょっと変わった面白いやつ』から『なんかヤバいやつ』にクラスチェンジしていた。
お世辞じゃないけど、スープはマデラさんが作るやつのほうがうまかった。先に言っとくけど、これホームシックじゃないからな。
朝食の後はクラスで授業に必要なものが配布された。教科書、授業表、製陣用具、魔操着、魔耕着、演算魔法触媒だ。教科書は『魔法演算学』、『魔法構築学』、『基礎魔法陣製図』、『魔力学』、『魔法倫理』、『基礎魔法学』、『基礎魔法概論』、『基礎魔法材料』、『魔法生物学』、『呪文総合』、『触媒反応学』……と無駄に豊富だった。 ぶっちゃけ違いがよくわからん。基礎魔法学と基礎魔法概論って一緒じゃねーの? しかもこれ全部必修だっていうから驚きだ。一年以内に取らないとケルピーの背中に乗ってしまうようなものらしい。
で、その事実に絶望的な表情をしているのがいっぱいいた。ステラ先生、あんなにロリっぽいのに達観した表情で『死ぬほどつらいかもしれないけど死にはしない。先輩たちにも死人は出なかったから』って言ってた。眼が死んでて怖かった。ギルは魔法生物学の表紙のフェアリーの胸を落書きして増量させてた。ギルにしては気が利いていた。
そんな感じで、あらかたの説明は終わった。ぶっちゃけ明日から授業が始まるから時間通りに教室へ向かえってだけだった。詳しい説明はそれぞれの最初の授業で行われるそうだ。
説明の後は自己紹介タイムになった。クラスは四十人くらいで男女混合。男はイモ臭いのが多いけど女子のレベルはそこそこ。素朴な子からちょっと派手な子まで種類が豊富でなかなか楽しめた。あと大きい子が多いのはうれしい誤算だ。特にロザリィって子がドンピシャで良かった。マジ可愛かった。
自己紹介はみんな出身と得意魔法と相部屋のパートナーを言うくらいだった。出身は結構ばらけてて、得意魔法はパッとしないのが多い。マンドラゴラを素手で笑わせられると発表したら微妙な目で見られた。ギルと相部屋だと言ったら同情の視線を向けられた。なぜだ。でもロザリィちゃんからの視線はマジでよかった。ひゃっほう。
眠くなってきたからそろそろ筆をおく。このままいい気分で寝たい。あと、ギルの鼻にノームの爪を詰めておこう。