197日目 ちゃっぴぃみるくソフトクリーム
197日目
ギルがサイレント。どうやら声が体表でかき消えているらしい。が、あの野郎、こっちに声が伝わらないとわかると筋肉言語で語りだしてきた。もうなんか疲れた。
ちゃっぴぃとともに起床。ちゃんと寝ながら手で耳を押さえてやったおかげか、ちゃっぴぃの体に異常はなし。眠そうなとろんとした顔で足元がおぼつかなかったため、しょうがなく抱っこして運んでやる。朝から手間をかけさせる使い魔とかどうなってんだろうか。
あと、ちゃっぴぃの口の締りの悪さは許容範囲内。若干シーツや俺のパジャマにヨダレ跡が残ったものの、ちゃっぴぃの年を考えるなら割と普通のレベルだろう。寝顔だけはそれなりに可愛く、普段から黙って大人しくしていれば……と思わずにいられない。
さて、今日は休日。いつも通り食堂が空いていて開放的な気分。なんとなくそんな気分だったのでミートパイをチョイス。朝からガッツリ食べるって健康的だ。
ギルは『……! ……!』と、声にならない声をあげてジャガイモを貪る。筋肉が『うめえうめえ!』と文字を示して超不気味。あいつの体、ホントどうなってるんだろう。
午前中は製図の課題を進める。今日は属性処理研究室の人がサポーターとしてやってきてくれた。見た目がすごく地味な男でイマイチ記憶に残らない。俺も来たってことしか覚えていない。数少ないまともな人なのだろう。
特にこれと言って面白いことも起きないまま、製図課題を終わらせることに成功する。俺の腕がよかったのか、結構時間がかかったと思ったのにまだ昼前だった。なんだかちょっと得した気分。
午後はしばらくぶりにちゃっぴぃの乳搾りをやった。『きゅーっ♪』となぜかちゃっぴぃはご機嫌で、マイフェイバリットチェアーに腰かけた俺の膝に自分から乗ってくる。しかも、『きゃ!』とか言って自分から胸をずいっ! ってこっちに突き出してくる始末。
これにはロザリィちゃんも『ちゃっぴぃ……どうしたの!?』ってびっくり仰天。『熱でもあるのかなあ……?』っておでこをこつんってやる姿がマジプリティ。俺もこつんってしてほしかった。
結局、ちゃっぴぃは正常だということが分かったので今日は俺一人で乳搾りに挑戦することに。ロザリィちゃんといちゃいちゃしながら搾れないのは残念だったけど、効率だけは今までとダンチ。乳搾りなんて文字通り死ぬほどやったから目をつぶってたってできる。
ちゃっぴぃ、やっぱり妙に機嫌がよくて『きゅ♪ きゅ♪』とくすぐったそうにしていた。しかも尾っぽで俺の胸をぺちぺち叩いてくる。ホント、こいつが何を考えているのかまるでわからない。
健全に作業をしていたというのに、クーラスが『犯罪者……』、ジオルドが『犯罪者だな……』、フィルラドが『犯罪者かよ……』、ポポルが『犯罪者じゃん……』、その他男児が『犯罪者じゃねえか……』とか言ってきた。あいつらの目は腐っているのだろうか?
さて、健全な乳搾りが終わった後はせっかくなのでソフトクリームを作ることに。幸いにもこないだのハゲプリン騒動で入手した材料がどれも中途半端に余っていたので、それを使って進めていく。
まぁ、材料混ぜてあっためて混ぜて冷やすだけの簡単なお仕事なんだけどね。クーラスが氷の罠魔法陣を作ってくれたおかげで作業がだいぶ楽だった。ポポルや女子たちはすっかり腰を落ち着けて堪能モードに入っていた。手伝うそぶりくらいは見せてほしいものだ。
で、完成。女子たちだけにソフトクリームを運んでやったら、クーラスが『俺、実はお前のこと尊敬しているんだ』、ジオルドが『クラスで一番頼りになると思ってる』、フィルラドが『お前、よく見たらイケメンだよな!』、ポポルが『俺大きくなったら──みたいになりたい!』と目を逸らしながら言ってくる。こいつらの手のひら返し具合がすさまじくて泣けてきた。
やさしい俺は、『もっと褒めろ』って伝えたうえでやつらにも配ってやった。あいつら、『もう褒めるとこないわ』って配られたとたんに態度を豹変させる。マジ何なの?
全体にいきわたった後は早速実食。書くまでもないけど大好評。『とってもおいしーっ!』って喜ぶロザリィちゃんがステキすぎて抱き締めそうになった。しかも、ちゃっぴぃを抱っこしてソフトクリームを食べさせている俺に、『あーん♪』って自分の食べかけの奴を食べさせてくれた。
もうね、すっごく甘かった。使った覚えのないのにほんのりハートフルピーチの香りがした。これ、ロザリィちゃんがよく使うリップクリームの香りだって俺だけは知っている。なんかすっげぇ優越感。
『きゃ!』ってちゃっぴぃも真似して俺にソフトクリームを突き出してこなければまさに最高の時間だった。顔がべしゃべしゃになって超大変。でも、ロザリィちゃんが『しょうがないなあ♪』ってほっぺを拭いてくれてめっちゃうれしかった。
夕飯食って風呂入って雑談して今に至る。雑談中、湯上りステラ先生が遊びに来てくれたので『よかったらどうぞ』ってとっておいたソフトクリームを渡したら『やったぁ!』ってめっちゃ喜んでくれた。
本当は今日も一日クラスルームでゆっくりしたかったらしいんだけど(私室で作業するのは一人でさみしいんだって。そんなところがマジプリティ)、レポートの採点やその他雑事があったためこっちにこれなかったらしい。
ちなみに、『材料はどうしたの?』って聞かれたので『もちろん僕の手搾りです』って答えたら、超真っ赤になって『ええ、え、えっちなのはほどほどにするようにっ!』って言われてしまった。ステラ先生がステキすぎて気絶しそうになる。
ギルは空気を揺るがす大きなイビキをかいている。音は聞こえないのに体に響くという摩訶不思議な事態。全身がびりびりして寝難さが凄まじい。いつになったら俺は安眠できるのか。
が、今日は一日ギルが(聴覚的には)静かだったので良しとしよう。平和の証として、オステル魔鉱石に時限発動魔法陣(風)を施したものをギルの鼻に詰めておいた。
夜明けちょい前に自動発射されるというステキな仕組み。組むのにちょっと手間取ったけどがんばったかいがあった。当然、アエルノチュッチュ寮のほうに方向を補正しておいた。グッナイ。




