195日目 魔法構築学:裂造における魔度の影響
195日目
クラスのみんながくしゃみしている。もうわけがわからない。
食堂ではあちこちでくしゃみの音が響いていた。ちゃっぴぃも『へっくち!』ってくしゃみしてるし、ティキータ・ティキータのゼクトも『いっくし!』ってくしゃみする。バルトラムイスのシャンテちゃんも『くちゅんっ!』って鼻を押さえていた。
あと、憎きアエルノチュッチュのラフォイドルのくしゃみを嘲笑ってやろうと思ったら、あの野郎、『くちゅっ!』って無駄に可愛らしい感じだった。妙にイラつくが、優しい俺は見逃すことにしてやった。
よくよく観察してみると、みんなくしゃみの仕方が違う。ミーシャちゃんは『へくちっ!』で、パレッタちゃんは『ひっくし!』だった。なお、パレッタちゃんはくしゃみの直後にポポルのローブで鼻を拭いていた。割といつも通りでコメントしづらい。
あと、アルテアちゃんは『なんでみんなそんなに可愛くくしゃみできるんだ……?』って不思議がっていた。なんでも、自分のくしゃみがおっさん臭くて人前でくしゃみするのが恥ずかしいらしい。フィルラドが『今更誰もそんなの気にしないって』ってヒナをけしかけ、アルテアちゃんのくしゃみを誘発させる。
が、アルテアちゃん、くしゃみの直前に自分の顔面をぶん殴って阻止してた。非常に男らしかった。しかも、『こんの、バカたれっくしょい!』って返す拳でフィルラドをぶん殴るのも忘れない。いろんな意味ですげえと思った。
ちなみに、ロザリィちゃんは『くしゅっ!』だった。くしゃみする姿もマジプリティで惚れ直す。恥ずかしそうに『見ちゃダメなんだからっ!』って俺の脇腹にぽかぽかパンチするところとか、もう最高すぎて何も言えない。
今更だけど、ギルは『うめえうめえっくしょぉぉぉぉぉい!』ってジャガイモを喰っていた。ジャガイモ食ってるからそのうちくしゃみも治るだろう。
授業はシューン先生の魔法構築学。先生もやっぱり鼻をずびずびしていて、ひっきりなしに鼻をかむ。こんなときでもローブはズボンにイン。あったかそう。くしゃみのしすぎで出欠を取るのがいつも以上に遅い。
さて、内容は裂造における魔度の高低の影響について。前回ちょろっと構成魔法刃先の生成条件で魔度について触れたわけだけど、俺たちは魔度が撃造に与える影響は学んでも裂造に与える影響は学んでない。じゃあ実際どうなの覚えましょってわけだ。
いつもどおり、メモをここに記しておく。いい加減このくだりを書くのもおっくうになってきた。
【高魔度裂造】
メリット
・構成魔法刃先が出来なくなる。
・裂造抵抗が減少するため、陣造能率が増大する。
・物体的、概念的ともに魔法刃の寿命が延びる。
デメリット
・高魔度を維持するための魔力が必要となる。
・例外を除き、対象の魔力塊、および物体の魔法的膨張が起こり精度が低下する。
・魔塵が千切れにくく、また排出されにくくなるため、その処理を考慮する必要がでてくる。
・高魔度維持と陣造の両方の作業を同時にこなす必要が出てくるため、単純に術者の力量が問われる。
【低魔度裂造】
メリット
・構成魔法刃先ができにくい。
・ほぼすべての魔法刃において、その寿命が延びる。
・魔塵の処理性が良好になる。
デメリット
・調子乗って陣造すると魔度が上がって低魔度のメリットが得られなくなる。
・ものによっては低魔度にするとかえってやりにくくなる。
・そこにロマンがない。
結局は撃造のときや構成魔法刃先のときとあんまり変わらない。ただ、対象となる触媒や材料、魔力塊の性質によって高魔度、低魔度ともに相性があるから、適宜使い分けろってだけ。
ぶっちゃけ寝ててもいいレベルだったけど、みんなくしゃみしているため寝るに寝られず。ザントマンの砂嵐もさすがにくしゃみには勝てなかったようだ。
夕飯食って風呂入って雑談して今に至る。かなりあっさりしているけど、妙に眠いし風邪気味だから今日はこの辺にしておこう。さりげなく短くまとめるのを意識してみたんだけどどうだろうか。
よくよく見返してみたら、半分近くがくしゃみについてだった。たまにはこういう日があってもいいのかもしれない。
ギルはスヤスヤと大きなイビキをかいている。特に詰め込むものを思いつかなかったので、久しぶりに魔法陣を鼻の穴に展開して結界を作ってみた。ちなみに属性は風。消音効果はそこそこ。明日がちょっと楽しみ。おやすみなさい。




