表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
195/368

194日目 基礎魔法陣製図:陣表面精度の記入について(愛の腹パン)

194日目


 爆発音で目覚める。俺もギルも煤だらけ。なのに身体にはちょっとの火傷しかなく、部屋には一切異常なし。何がどうして爆発したのかイマイチよくわからん。


 食堂に行く前に朝風呂に。平日の朝だからか人がいなくて超すっきり。水魔法陣を多重展開し、朝からアクアカーニバルを楽しむ。暴れ狂うお湯の潮流に体を任せるってのも案外楽しい。ギルは俺の作ったお湯の龍を真っ向からぶん殴ってかき消していた。一応攻撃魔法のはずなんだけど。


 朝風呂後は食堂へ。風呂上がりの一杯としてハートフルピーチのジュース(果汁百パーセント)を楽しむ。とろりとした甘さが最高にデリシャスでついつい二杯も飲んでしまった。


 飲んでいる途中、やっぱりちゃっぴぃが『きゃーっ♪』って俺の膝に乗ってきて、底のめっちゃ濃いところをごくごくと飲み干してしまう。しかもあの野郎、俺のローブで口を拭いていきやがった。


 が、ロザリィちゃんが『私のとはんぶんこしよ!』って飲みかけ(ストロー付き)をくれて超幸せ。もちろん底のめっちゃ甘いほうが残ってるんだけど、感じたそれはそれ以上に甘い。ロザリィちゃんのキスの味がする。朝からこんなに幸せでいいのだろうか。


 もちろん、俺が飲んだ直後にロザリィちゃんもそのジュースを飲む。『えへへ……♪』って可愛らしく恥ずかしがった顔がエクセレントキュート。『おいしい?』って聞くと、『あっまぁ~い……っ♪』って耳まで真っ赤にして答える。


 これぞ恋人。これぞロザリィちゃん。俺、あのとき死を選ばなくて本当に良かった。俺はロザリィちゃんに会うために生まれてきたのだと実感する。


 なお、ギルは『うめえうめえ!』と風呂上がりのジャガイモを楽しんでいた。クラスメイトの連中は盛大な舌打ちをしていた。朝から嫌な事でもあったのだろうか。


 あと、舌打ちしたやつに『これ飲むと落ち着くぞ』ってミルクを進めたら、全員から容赦ないケツビンタをされた。解せぬ。


 しかも、通りがかりのゼクトが『ティキータ・ティキータの分もよろしく』ってあいつらに付与魔法をかけやがった。


 『他クラスとはいえ組長のお願いじゃ断れないよな!』、『私、お願いされると聞いてあげたくなっちゃう女なの』とか言うクラスメイトにより、地獄の二ラウンド目が始まる。超理不尽。


 さて、今日の授業はキート先生の基礎魔法陣製図。いつもの通りに課題の提出と返却があったんだけど、キート先生、風邪をひいているらしく顔が超真っ赤なうえ息も絶え絶え。足元もフラフラしているし見ていて危なっかしい。


 『今日くらい休んだほうがいんじゃないでしょうか』とクラスのみんなで提案したんだけど、『動ける……なら……休む……理由に、なりません』と死にそうな顔で微笑まれた。見ていてなんか心が苦しくなってくる。


 しかも、『私の、個人的、な都合でキミたちの、勉強時間を、削る……のは、心苦しいですし、ね。それに、体調管理ができ、なかった、私の責任、です、から』って俺たちと距離を取って拡声魔法で伝えてくれた。しかも、ちゃんと自身の体の表面に結界を張るという徹底っぷり。


 ついこの前、個人的な都合を優先して仮病を使ってお菓子パーティをやっていた先生がいると知ったら、いったいどんな顔をするのだろうか。


 あ、そうそう、いつもの落書きだけど、



『エルさん、情報提供感謝です。俺も一回はシエナちゃんを見てみたいけど、機会がなさそうなのが残念ですよ。ライラちゃんですけど、普段はツンツンしていて、たまに油断するとすごくかわいい表情を見せます。で、それを人に見られた時の表情がもう最高です。ところで、ロリコンはなんで書いてないんですかね? まさか……』


『うーん、実物見てないから何とも言えないが、俺のタイプって感じじゃないな。ちょっと我の強い感じの女っていねーの? ナターシャさんとか、割とそっち系で好みなんだよ。ロリコンはとうとう捕まったか。身内から性犯罪者が出るとは……』


『おまえらひどすぎだろ! 普通に先週は来なかっただけだよ! 俺はもう授業はとってないからな! お? どうだ? うらやましいか? ん? 

 エル、俺シエナちゃん知ってたわ。名前知らないだけで普通に何回も見ていた』


『ロリコン、お前マジでそれ言ってるのかよ!? 何年この学校にいるんだ!? つーか、普通に研究室単位でも結構つながりあるだろうが! なに? ガチで小さい子しか眼中にないのか!? 今まで冗談でロリコン扱いしてきたけど、さすがに驚きだぞ!』



 ……と書かれていた。なにやらロリコンについての話題がアツい。エルの反応を見る限り、エルはロリコンの正体を知っていて、かつそれなりに親交のある人間なのだろう。俺から話題がそれたのはラッキーだ。


 とりあえず、



『みなさん、エルとロリコンさん自身からアブナイ情報を提供してくれたので、ロリコンさんの正体を推理してみませんか? 「上級生」、「授業を取るのは自由」、「ロリコン」であるのがヒントみたいです。エルとクゼは引き続き情報を。ラドは好みのタイプを具体名で教えてくださいよ。あなただけまだ誰もオススメいってないですし』



 とだけ書いておいた。場合によってはギルを送り込んで粛清することも視野に入れたほうが良いかもしれない。


 さて、今日の内容は陣表面精度の記入法について。俺たちが普段実用で使っている魔法陣はともかく、ガチな精密魔法陣や魔道具の場合、その精度が性能に響いてくることが結構多い。


 設計図ってのは当然そのへんなんかも考慮しなくちゃいけないわけで、実際に製陣する人がどのくらいの精度で加工しなきゃいけないのかってのを指示する必要があるらしい。逆に、それがないと設計図をみた人が『表面精度書いてないぞコラァ!』って製図を突き返してくるそうな。


 で、その記入法を説明され、いつも通りに課題が出される。今までの要素がそれなりにちりばめられた魔法陣の寸法と条件を口頭で指示され、さらにそれに表面精度を記入して来いっていう復習も兼ねた内容。面倒といえば面倒だけど、キイラムの資料があるから何も怖くない。


 本当なら課題説明の後は自由に製図、質問があれば前にいるキート先生に聞きに行くっていうスタイルなんだけど、さすがに見てられなかったので、ギルに『隙を見てキート先生に腹パンしてこい』と命じる。


 ギルのやつ、『まかせろ!』と一瞬で先生に肉薄し、『すみません!』と超嬉しそうにそのたくましい拳を腹にぶちこんだ。


 『げふゥッ……!』と明らかヤバそげな声と同時にキート先生が倒れる。さっとミーシャちゃんがリボンで受け止める。ヴィヴィディナが歓喜の金切り声を上げてキート先生の体を這いずりまわった。


 さらに、クーラスが先生のローブのポケットに元気になるオリジナルハーブティーを詰め込み、ジオルドが秘蔵のクッキーのセットを突っ込み、フィルラドがこないだの蜘蛛を召還して治癒毒で応急処置をし、ポポルが『あんま金目の物もってないな……』って先生の懐を探っていた。何この無駄なコンビネーション。


 あ、俺もお子様エディション風邪薬とルマルマキャンディを突っ込んでおいた。


 午後のフリータイムになる前に、『先生が過労で倒れました!』とみんなでドクター・チートフルの元へキート先生を担ぎ込む。ちょうどドクター・チートフルは実習で片腕が炭になった上級生の治療をしており、『すまないがそこに寝かしておいてくれ』と言われる。


 なお、上級生は『あのクソドラゴンがァ……! いつか醸してやるぞコラァ……!』って炭になった腕を気にした風もなくぶつぶつ呟いていた。で、担ぎ込まれたキート先生を見て、『……この人、いつか過労で倒れると思ってたけど、意外と長かったな』ってしみじみとしていた。


 なんか言葉に表せないけどいろいろクレイジーだ。こんなの毎日相手しているドクター・チートフルって本当にすごいと思う。


 さて、肝心のキート先生だけど、『……なんかあらかた治療されたように見えるんだが』とドクター・チートフル。『治癒毒の形跡、そして詳細不明の浄化の形跡……いや、病気を極点的な呪で浸食吸収した感じか?』とこちらに疑いのまなざしを向けてくる。さらには『腹部の強烈な打撃痕が今のところ一番重傷なんだが』と衝撃の事実も。


 もちろん、『課題の説明を終えた後に倒れました。やりきった男の笑顔だったです』とだけ答えておいた。嘘は言ってないから別にいいよね。


 結局、キート先生はそのままドクター・チートフルがあずかることに。意識こそ戻っていなかったものの、ずいぶん表情が楽そうになっていて、このままいけば夕方過ぎくらいには目覚めるだろうとのこと。『おいしいものを食べてゆっくり休めばすぐによくなる』ってドクター・チートフルは言ってた。


 『せっかくだから明日明後日も療養するように診断書を書いておこうか』となかなか男前な発言も。その分課題の採点が大変なことになると思うけど、あのまま働くよりかはマシだろう。


 夕飯食って風呂入って雑談して今に至る。なんか妙に日記が長くなった。俺も一応病み上がり(?)なため、さっさと寝ることにする。


 イビキのうるせえギルの鼻には快癒の光石を詰めておいた。おやすみるくここあ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ