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189日目 魔法造成実習:フラウルの実践(聖母のHUG♡)

189日目


 人形の目が動いている。ヴィヴィディナが好きそうなので捧げてみた。直後に聞こえた悲鳴はどっちのものだったのか……。


 朝食はなんとなくココアをチョイス。いつもよりちょっと甘めにスウィートな仕上がりを目指してみた。深い香りと蕩けるような甘さがなかなかにグッド。ギルはココアとジャガイモを『うめえうめえ!』って食ってたけど、正直そのセンスはいただけない。


 いつものようにちゃっぴぃが『きゅーっ♪』って俺の膝に乗ってきたので、ちゃんとふうふうして冷ましてから飲ませてやった。朝からガキの面倒を見るのはなかなかつかれる。でも、ロザリィちゃんが『ありがとね!』ってポンポンしてくれたおかげでそんな疲れも吹っ飛んだ。


 授業は女神ステラ先生の魔法造成実習。『今日は本格的な作業に入るから、みんな気を引き締めるようにっ!』って杖をコンコンしながら出席を取る姿がマジ女神だった。出席取るだけで女神とか、本気を出したらどこまでいくのだろうか。


 内容は例によって例のごとくフラウルを使った陣造。ただし、今回は先生の監督の元、自分たちで指示されたものを作るってやつ。


 作るもの自体はそこまで複雑形状をしているわけじゃないんだけど、所定の寸法と精度に仕上げるのが大変。こないだやったとおり、魔力塊に回転する魔法刃をどう作用させるかで結構変わってくる。


 ノウハウとして、最初は大きくガーッと削って行って、仕上げの時はちゃんとした魔法刃で慎重にやったほうがいいかんじっぽい。このとき、表面の仕上げ精度を出すために最低限の余裕を持たせなきゃいけないんだけど、余裕を持たせすぎると時間がかかりすぎるからその辺の見極めも大事だった。


 アルテアちゃんが削りすぎたり、ポポルが飛び出る魔塵にビビったり、ロザリィちゃんがうっかりファンクションパターンを間違えて(リカバリー可能)涙目になったものの(もちろん超キュート!)、誰もケガすることなく無事に終了。


 で、『先週分と合わせてレポートでまとめてきてね!』と女神ヴォイスで課題が出されてしまった。とりあえず、最低限書くべきことをメモしておく。



・目的

→教科書を参考に。ぶっちゃけそのまま書き写してよし。


・使用魔道具

→フラウル以外の何があるというのか。


・加工材料

→『こっちで用意した魔力塊だから書かなくてもいいよ!』だって。


・実習方法

→超面倒。計算式を写すのが特に。


・結果と考察

→ギルに計算を教えるくらい面倒。



 とりあえずこんなもん。キイラムの資料がなければ結構危なかった。パッと見ると、『フラウルの送り速度と仕上がり精度の関係について述べればよし。結果から引用して論理的に記述。無駄な事やわからないこと、触れられて困ることは書く必要はない』って書いてある。


 夕飯食って風呂入って雑談中、『今日はお疲れさま!』って湯上りステラ先生がやってきた。ひゃっほう。


 で、いつも通り『カードゲームをしませんか?』と誘ったら、『……たまには泣いてもいいんだよ?』って慈愛の微笑みを浮かべながらぎゅってしてくれた。


 いや、あまりにも聖母過ぎてすっげぇ冷静になる。ほわほわで柔らかい。あと、髪の毛がしっとりしていていいにおいがする。暖かな気持ち。マジでやましい気持ちなんて起きなかった。でもステラ先生マジプリティだった。


 どうやら一昨日俺が食堂で泣いたのを誰かから聞いたらしい。たかが一生徒が泣いたってだけで、こうやって気にかけてくれるステラ先生は本当にすごいと思う。一生ついていきたい。俺、教師になるんだとしたらステラ先生みたいな先生になりたい。


 『──ばっかりずるいっすよ!』とポポルが抗議の声をあげたら、『じゃあ、今日はみんな特別にぎゅってしてあげる!』と衝撃発言が。


 それからはもうすごかった。男女構わずステラ先生はぎゅってしまくってた。一人一人の時間はそこまで長くなかったとはいえ、全部に愛がこもっていた。


 恥ずかしがるアルテアちゃんも問答無用でぎゅってしてたし、トロールみたいな笑顔を浮かべるギルにもぶら下がるようにしてぎゅってしてた。


 ぎゅってされたジオルドとクーラスは真っ赤になって泣きながら笑っていた。超怖い。


 『今日に限ってどうしたんですか?』って聞いたら、『みんなそろそろ寂しくなるころなのかなぁって……』とのこと。ステラ先生も在学時代にCampyTiqueキャンピィティークってクラスにいたらしいんだけど、ちょうどこのくらいの時期にすごく寂しくなったらしい。でも、誰にも言い出せずに一人クラスルームでぼんやりしていたそうな。


 が、その時の担任の先生(女)はそんなステラ先生を一目見るなり、何も言わずにぎゅってしてくれたんだって。


 『あのときは本当にうれしかったから……』ってはにかむステラ先生がマジ聖母だった。ロザリィちゃんとぎゅってしている姿はまさに絵画のようだった。


 その後はいつも通りカードゲームを始める。ごろごろ喉を鳴らすミーシャちゃんを膝枕しながら、ステラ先生は


サマの貴公子の俺

読みに定評のあるクーラス

堅実で手堅いジオルド

最近ヒナを使ったサマを覚えたフィルラド

たまに豪運を見せるポポル

俺のイカサマを完全コピーしたギル


 ……のケツの毛を完膚なきまでに毟り取って行った。先生の勝負強さとサマのテクニックに驚きを隠せない。あと、『てへっ♪』って可愛く舌を出すところが小悪魔プリティで最高。ちゃっぴぃにはできない芸当だ。


 ケツの毛までむしられたギルは今日もスヤスヤイビキをかいている。こいつの場合、俺の『親友銀行』があるから無一文になることだけは絶対にない。俺もいつか『マデラさん銀行』からお金をおろすんだ……。


 手ごろなものがなかったので、ギルの鼻にはなぜかポケットに入っていたココアパウダーを入れておいた。おやすみっくすべじたぶる。

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