188日目 魔法構築学:構成魔刃先について
188日目
窓にへんな抜け殻がびっしりついている。もうやだ。
朝食はなんとなくガチガチなパンをチョイス。当然そのままでは食べられないので朝から贅沢にシチューも付けてみた。クリーミーな味わいと浸したパンの何とも言えない食感がなかなかにグッド。おばちゃんは『たまにはこういうのもいいだろう?』ってちょっと自慢げだった。
なお、朝からそれはちょっと多かったのか、ロザリィちゃんはちゃっぴぃとパンをはんぶんこして食べていた。『あーん♪』ってやる姿がマジプリティ。俺もしてもらいたかったけど、『ちゃっぴぃに食べさせてるから、ね?』と言われてしまうとどうしようもない。
ちゃっぴぃのやつ、すんげぇ勝ち誇った顔で『きゃ?』って俺を見下してきた。しかもロザリィちゃんの膝の上。ちゃっぴぃの癖にナマイキだ。
あ、もちろんギルはジャガイモを『うめえうめえ!』って食ってた。ミーシャちゃんが久しぶりにリボンにジャガイモを食わせていて、ポポルも面白がってギルの口にジャガイモを投げ込んでいた。俺の杖もピクピク反応していたから、エッグ婦人たちが突いていたやつをついでに与えておいた。
『異様な光景のはずなんだけどな……』ってクーラスがあきらめたようにつぶやいてたけど、いったいどうしたのだろうか?
授業はシューン先生の魔法構築学。ローブをズボンにインしているのはいつも通りなんだけど、ほっぺに盛大な手のひらの跡が。
『マニュアルを更新したからもうヘマはしないって言ったら有無を言わさずひっぱたかれた……』ってシューン先生は言ってた。どうやら未だに許してもらっていなかったらしい。しかも、原因をまるで理解していないと来た。よく結婚できたものだと思う。
なお、愚痴りながらだったため、いつも以上に出席取るのが遅かった。その間にクーラスとローブのデザイン談議に花が咲く。最終的に、ローブのフードは顔半分が隠れるくらいの長さが最高にエクセレントということで落ち着いた。顔が見えるフードって魔系舐めてるよね。
今日の内容は構成魔刃先について。裂造をすると魔塵が出るってのは当然なんだけど、この排出された魔塵が概念的、物理的魔法刃ともにその先端に付着し、凝固、堆積して事実上の魔法刃として作用することがあるらしい。こいつを構成魔刃先っていうんだって。
当然、想定された魔法刃と違うステータスを持っているため、裂造そのものにそれなりの影響を与えてくることになるから、その特徴をよく覚えましょうって話だった。
例によって例のごとく、メモを書いておく。こうして俺は日々復習しているのだと思うと、ちょっと得した気分……に一瞬なったけど、よく考えたらギルの筋肉に教えなおすから手間が増えるだけだった。
メリット
・裂造抵抗が少なくなり、裂造そのものにかかる魔力が少なくなる。これは魔塵(本来排出される魔力)を再利用している形をとっているほか、実際に裂造に使われる魔法刃がごく一部しか作用しないためだと考えられている。
・魔法刃先に安定した構成魔法刃先が形成された場合、これが刃先を保護することで魔法刃の寿命が長くなることがある。ただし、属性を考慮した場合はその限りではない(例:水属性が支配的な魔力塊に対し、火属性が支配的な魔法刃を使用した場合など)
デメリット
・魔法陣の仕上げ面形状が割とお粗末。
・過裂造が起こって寸法精度が悲惨になることも。
・仕上げ面の変質層が割と目立つ。
・構成魔法刃先が分裂、剥離する際に魔法刃や魔力塊にダメージを与えることも。下手すると魔法刃の寿命が縮むレベル。
『メリットにしろデメリットにしろ、魔塵の塊であることが特徴な故に引き起こされる現象だ』ってシューン先生は言ってた。デメリットの仕上げ面が悲惨になるのも、そもそも魔塵が流動的、かつ不安定に生長や分裂、結合に剥離を繰り返しているから起こるもので、その動向を予測、制御できないから問題なのだとか。
基本的にはメリットに対してデメリットが占める割合が大きいから、なるべく発生させないほうが良いんだけど、逆にいえば量産品で精度とかどうでもいい場合はあえてこれを発生させることもあるんだって。
ちなみに、こいつは裂造中の魔度の高低によって発生をある程度制御できるから、『利用するにしろしないにしろ、魔度の意識はきちんともつこと。それができないやつは三流だ』ってシューン先生は何度も言っていた。
もちろん、今日もザントマンの砂嵐。最近割と涼しくなってきたから、絶好のお昼寝日和。俺も結構うとうとして危なかった。
ロザリィちゃんの超かわいい寝顔を見られてすっげぇ幸せ。天使の寝顔がゴブリンの寝顔に思えるくらいに可愛いの。ちゃんとロザリィちゃんのぶんもノートを綺麗にとっておいたから、テスト前はいちゃいちゃしながら見せようと思う。
そうそう、今日は珍しくアルテアちゃんも寝ちゃってた。で、それを見たフィルラドが自分のローブをかけてあげていた。あいつ、こういうところで優しいから油断できない。
当然のように、俺もロザリィちゃんにローブをかけてあげた。なんか恋人って感じがしてすっごいドキドキしてくる。夢の中で存分にすーはーしてくれたのだろうか?
あと、ジオルドとクーラスが『俺も……誰かにかけてもらいたかった……』、『いつか……いつかきっと報われるはずだ……』って言いながら寝こけるポポルとパレッタちゃん(ポポルのローブを引っぺがして枕に使ってた)にローブをかけてあげていた。
ギルにローブをかけてあげるやつは誰もいなかったことを記しておく。あいつ元から半裸だしね。あいつのローブを使っているミーシャちゃん、ローブがデカすぎてなんかシーツでお化けゴッコする子供みたいだった。
夕飯食って風呂入って雑談して今に至る。『お昼寝のとき、寒くなかった?』ってロザリィちゃんに聞いたら、真っ赤な顔で『……堪能させてもらいました』とだけ返された。たった一言だけでささっと部屋に行っちゃったけど、そんな姿がマジプリティ。
あれだけ寝たというのにギルは今日も大きなイビキをかいている。クラスルームのガラクタ置き場にあった壊れた人形(の首部分)を鼻に詰めてみた。
ちゃっぴぃのおもちゃ用に直せるかなって思って持ってきたんだけど、俺でも修復不可能レベルだったんだよね。グッナイ。




