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187日目 基礎魔法陣製図:はめあいの記入について

187日目


 顔に引っ付く無数の羽で目覚める。ぶちのめすぞコラ。


 多少イライラしながら食堂へ。みんなが『お、おう』とぎこちない挨拶をしてくれた。で、ササッと距離を取って目を合わせない。なんか前にも似たようなことがあったよね?


 で、『また拗ねたのか……』とクーラス。『なんか拗ねることあったっけ?』とポポル。『どうせ昨日ロザリィちゃんと喋れなかったとかそんなんだろ』とフィルラド。『俺のイスつかえ俺のイス』とジオルド。


 どうやら俺、また拗ねてる顔をしていたっぽい。が、ロザリィちゃんは『……つらい時って誰でもあるよ』って慈愛の微笑みを浮かべてぎゅってしてくれた。しかも頭をポンポンしてくれた。


 もう、マジで泣いた。よくわからんけど涙が出まくった。ちゃっぴぃまで俺に抱き付いて慰めにかかったといえば、どれだけ泣いたか想像できるだろう。


 さりげなく、いつのまにやらギルが悪夢椅子をクラスルームから持ってきてくれたので、ロザリィちゃんと一緒にゆらゆらしながら朝食をとる。ロザリィちゃん、ずっと俺の肩を抱いててくれてマジでうれしかった。


 ちゃっぴぃも今日だけは『きゃ!』とか言って手づかみしたウィンナーを俺に食べさせようとしてくれた。鼻に入ったけどその気遣いがうれしかった。


 ちなみに、ギルは『うめえうめえ!』と何事もなかったようにジャガイモを喰っていた。ミーシャちゃんに『なんでいつも通りなの?』と聞かれ、『俺は親友のことを知り尽くしているからな!』と爽やかスマイルを浮かべていた。


 こいつの地味な気配りは本当にすごいと思う。ギルと親友で本当に良かった。


 さて、今日はキート先生の基礎魔法陣製図。授業開始前に例の落書きを確認したところ、



『そうですよ。僕らロザリィちゃんは知っているので、エルは早くシエナちゃんについて教えてください。教えてくれるまでライラちゃんの追加情報はなしです』


『↑に同じ。なんだかんだでエルは情報だしてないじゃないか。あ、ナターシャさんはスタイルがすごくよくて綺麗系のおねえさまって感じだった。ちょっと格好が派手すぎるきらいはあったが』


『』


『悪い悪い! 俺もちょうど機会があってロザリィちゃん見られたわ! すげえのな、可愛いのもそうだけど、お前らの言葉全部ホントだった! シエナちゃんだけど、ルギはたぶんもう見ただろ? やさしい系のやわらかい印象のかわいいおねえさんだ。彼氏はいないがデイビーの野郎がにらみを利かせているからな。あいつ、チキンで告白してもいないくせにシエナちゃんに近づくやつに牽制しているんだよ。心の中でチキンオブチキン、略してチキチキって呼んでる』



 ……と書かれていた。ロリコンの記述がないのがまず気にかかり、次にエルの発言内容に衝撃を受ける。


 この一週間でロザリィちゃんとあった上級生って、属性処理研究室と魔法材料研究室の人だけだ。で、たぶんエルは俺がルマルマだってことも気づいている。つまり、あのハゲプリンパーティーに参加していた誰かってことだ。


 よく考えてみればあのときの投げキッスのおねーさん、シエナ先輩だった。なんであの時気づかなかったのか。今後は発言内容を少し気を付けたほうが良いかもしれない。


 とりあえず、


『なんのことだかさっぱりですが、ロザリィちゃんを知っているってことはどこかですれ違っているかもしれませんね。とりあえず追加情報と、クゼはライラちゃんについて詳しくお願いします』



 とだけ書いておいた。来週の返事次第では少し考えたほうが良いかもしれない。


 さて、授業が始まった後は課題の提出&返却を受ける。キート先生、『なんかみんないきなりものすごく上手になってるんですが……』と不思議そうな顔をしていた。ルマルマだけほぼ全員完璧で、再提出喰らったやつもほんの軽微な、それこそキート先生でもなければ見落としてしまうくらいに小さなミスしかなかったらしい。


 『教えていない製図法についても考慮されていたんですが、これは……』と言われたので、『前回、前々回とあまりに出来が悪かったので、勉強会を開き、また、ステラ先生にも教えていただきました』って言ったら、『すばらしいですね! この調子で頑張ってください』ってみんな褒められた。


 アルテアちゃんとロザリィちゃんが若干居心地悪そうな顔をしていた。罪悪感でも感じているのだろう。そんな様子もマジプリティだった。


 授業ははめあいの記入法について学んだ。はめあいってのは、ちょっと言葉でうまく表現するのが難しいけど、要は組み合わせるパーツの結合部にどれだけの余裕があるのかってのを示すやつ。


 例えば、ファンクションパターンとベースパターンを組み合わせるとき、当然その結合部は特別な事情がない限りどちらも同じ寸法にならなきゃいけないんだけど、現実的に、まったく同じ寸法だと魔法的に組み合わないことが多い。


 てなわけで、実際には受ける側は想定寸法よりわずかに余裕を持たせた寸法になっている。また、あえて微妙に小さい寸法にすることで、無理やりはめ込んで取れなくするっていうやり方もある。


 要は、『すっと入るか無理やり入れるか』ってのを指示するのがはめあいの記入ってわけ。


 やっぱりいろんな規格やノウハウがあって、覚えるのがなかなか大変。『これを理解していない魔法陣の設計は絶対にありえません。そんな図面を作るやつは三流以下です。理論上は作れても実際には作れないのですから』ってキート先生は言っていた。


 で、やっぱり課題。はめあいを意識した要素がふんだんに含まれている魔法陣を書いて来いと言われる。不自然なくらいにはめあい記入箇所が多く、普通に製図するだけで一通りの基礎が学べるかんじ。


 キイラムの資料がなかったら絶望するところだった。みんな余裕の表情。『少し見ない間に頼もしくなりましたねぇ……私はここまで来るのに半年はかかったのに……』って乾いた笑みをキート先生は虚空に浮かべていた。超怖い。


 てなわけで、フリータイムはパパッと課題を済ませる。夕方ごろにはロザリィちゃんと一緒に悪夢椅子でゆらゆらした。『寂しい時はいつでもぎゅってしてあげるからね!』って微笑む姿がマジプリティ。もう一生ついていきます。


 夕飯食って風呂入って雑談して今に至る。なんかあっさりしているような気もするけど、妙に眠い。ギルの鼻には虫かごにあった何かの抜け殻を入れておいた。みすやお。

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