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184日目 裏取引(最高の宝物)

184日目


 感じる。俺の体からとてつもないオーラが出ていることを。もう何も怖くない。


 まだ早い時間だったので、ギルを起こさずそのままクラスルームの厨房へ。ハゲプリン問題こそ解決しないものの、クッキーと煉獄ケーキの制作は出来る。クッキーはまだまだ足りないし、煉獄ケーキに至っては作るのに一晩はかかるから、作業の進捗としてはとても評価できたものではないだろう。


 が、今の俺にはそんなこと関係ない。そろっている材料だけでただただひたすら無心にクッキーを焼き、それと並行して煉獄ケーキを作っていく。


 作っている途中で気づく。


 集いし食材たちが、魂の輝きを放っていることに。


 わかるだろうか? 砂糖は煌めき、卵は喜びに震え、ミルクは歓喜の歌を唄っている。俺の腕でそっと抱いてやれば、嬉しそうに甘えてくるのだ。


 もう、そこからは早かったね。お菓子自体が、俺の意思に答えてくれるんだから。クッキーの焦げ目はバッチリだし、クリームの状態もエクセレント。スポンジはふんわりしているし、ジャムの練りこみ具合もマーベラス。つまみ食いに来たポポルとパレッタちゃんすら、あっという間に拘束魔法で仕留めることができた。


 とはいえ、お菓子作りは時間がかかるもの。朝から休みなく作っていたというのに、煉獄ケーキを後はデコるだけまで終わらせた時には、もうすでに昼を回っていた。


 しかも、いつのまにやらクーラス製の誘導連鎖罠魔法陣とジオルド製の深海のトラバサミ、あと女神ステラ先生の大魔導多重結界と天使ピアナ先生の大地のクレイドルが厨房を守っている。


 よくみたら、四人が必死につまみ食いをしようと突撃をかますクラスメイトと上級生相手に戦っていた。いったいどうなってやがる。


 試しに焼き立てクッキーを一枚暴徒の中に投げ込んだら、生徒をぶちのめしてシキラ先生が確保していた。文句を言う生徒には『てめえら問答無用で再履にするぞ!』と理不尽な言葉を浴びせる。が、『再履が怖くて魔系やれるか!』と上級生は反抗の意志を示す。


 こいつらマジでクレイジーだと思う。なぜクッキー一枚にそこまで真剣になれるのか。


 結局、どさくさに紛れてギルがクッキーを奪取し、ミーシャちゃんがジャガイモと交換していた。ギルのやつ、『うめえうめえ!』ってジャガイモを喰っていた。


 さて、なんやかんやした後に用件を聞くことに。『材料は確保できましたか?』と聞いたら、シキラ先生は超いい笑顔で『うん、無理!』とのたまった。


 一応、『コネというコネ、伝手という伝手を使ってこれだけ用意できた。バレないように集めるのがクソ面倒だった。あと俺のポケットマネーも使っている』……と、上級生が持ち込んだ材料よりかはワンランク落ちた材料を持ってきてくれたけど、やはり量が足りない。


 なので、『今回はクッキーと煉獄ケーキだけで……』と言ったら、無言で肩を組まれて部屋の隅に連れていかれた。さすがにビビる。


 で、こう、男同士熱く肩を組みながら(先生たち側から見れないように)ナイショ話が始まる。『……足りねえのはわかっている。が、そこはお前の腕で何とかしろ』と無茶ぶりが。


 しかし、俺とてその程度じゃ折れない。『無理なもんは無理です』とばっさり切り捨てたら、『……これでも同じことが言えるのか? ヘイ! プラン1発動だ!』とシキラ先生。


 途端にノエルノ先輩やこないだ試験片をくれたきれーなおねーさま他数名が俺の近くに寄ってきて、『お・ね・が・い・♪』と小悪魔的にほほ笑んでくる。恥ずかしがっている人も、ノリノリな人もいてなかなか壮観。いろんなタイプのきれーで可愛いおねーさまがいて、一瞬天国に迷い込んだかと思った。


 しかも、すっげぇぬくやわこくてふっかふか。腕も、肩も、背中からも感じる。女の子の甘いにおいに溺れそう。吐息が耳にかかって超ドキドキ。脇腹も突いてくるし、普通にぎゅってしてくれもした。幸せすぎて一瞬記憶が飛ぶ。


 ……が、ここでそのうちの一人が『ヒィッ!?』と悲鳴を上げる。プリティロザリィちゃんがにこにこガチ笑顔(目は笑っていない)で微笑んでいた。相変わらずプリティで心が蕩けそうになる。ぱちりとウィンクしておいた。


 もちろん、要求のほうは突っぱねる。彼女たちの気持ちはうれしいけど、俺には既にロザリィちゃんとステラ先生とピアナ先生がいるのだから。


 『意外と手ごわいな……』とシキラ先生。このままあきらめるかと思ったら、『こいつだけは使いたくなかったんだが……ファイナルプランだ』と、どこかで見た記録用魔導触媒を、俺だけに見えるように小さくこっそり展開した。


 そこに映っていたのは……恥ずかしそうな顔しながらせくしーえきぞちっくダンスを踊るステラ先生だったぁぁぁぁぁぁ!


 もうね、マジでね、めっちゃプリティだったの! とってもかわいくてステキで凛々しくてエクセレントキュートだったの! 美しすぎて一瞬何もかも忘れちゃったくらい! ステラ先生マジビューティフル!


 思わず見とれ、食い入るように見つめていたら、『これで手を打て。な?』と超いい笑顔のシキラ先生がそれを俺に握らせてきた。『最後のほうには超ロングヘアピアナ先生も収録されている』とステキな情報も。


 どうやらこの触媒、こないだのトイレの邪神さまのときのやつらしい。『ひゃっほおぉぉぉ!』と叫ぶのを抑えることに、どれだけ苦労したことか。


 なお、あの触媒には戦闘系褐色超巨乳美女も収録されているんだって。大地のスコップを振り回す凛々しい人らしいけど、『本人が意外と恥ずかしがりやだから顔は編集で隠しておいた』とのこと。ぜひともご尊顔を拝みたいものだ。


 んで、『お前ら! ちゃんと誠意を込めてお願いしたらやってくれるってよ!』とシキラ先生が叫ぶと、魔法材料研究室の人も属性処理研究室の人も再履の人も綺麗な土下座を決めてきた。上目遣いをしてくるノエルノ先輩にキュンと来た。


 さて、あれだけ素晴らしいものを今後いつでも見れるとなったら、限界以上の力が出せないわけがない。材料の質のバランスが取れなくても、そこは限界突破した俺の腕でカバーする。


 あまりにも嬉しかったので、作ったクッキーの半分を『ちょっとした誠意です。おやつにどうぞ!』と上級生たちに渡しておいた。ステラ先生からは『の、納品大丈夫なの?』と聞かれたので、『僕には先生がついていますから』と答える。こてんって首をかしげるステラ先生が本当にもう可愛すぎた。


 結局、夕飯の後くらいの時間にクッキーもハゲプリンも一応完成し、煉獄ケーキはデコるだけに。ハゲプリンのほうはガチなので、これから一晩寝かせて熟成させる。


 当然のことながら、明日は授業。『ケーキだけでも今食べますか?』と聞いたら、シキラ先生は意味ありげに『いや、ケーキもプリンもそのままでいい。明日おって連絡するから』と宣った。


 よくわからんけど、とりあえず言われたとおりにしておく。『てめえらはまだ仕事が残ってんぞ!』と上級生に声をかけ、シキラ先生たちは帰って行った。


 あと、寝る直前、ネグリジェ姿ロザリィちゃんが『──くんは私だけの──くんなんだからねっ!』って真っ赤になりながらちゅっ! ってしてくれたぁぁぁぁぁ! 柔らかい感触と甘い香りがすっげぇよかった! もちろんくちびるね! 


 幸せすぎて一日の疲れがふっとぶ。俺、ロザリィちゃんからもらった幸せを返しきれるのだろうか。一生かかっても、この一瞬の幸せな気持ちをロザリィちゃんに報いることができないかもしれない。だってすっげぇ幸せなんだもん。


 ギルは今日もうるせえイビキをかいている。こっそりちょろまかしておいたドラゴンエッグの殻でも鼻に詰めておこう。おやすみるくれーぷ。


※明日はファイアダストしちゃうゾ☆ マジック廃棄ゴミも一緒に呪っちゃうからネ☆

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