表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
184/368

183日目 材料大集合

183日目


 ギルが土臭い。こいつ、ホント人をおちょくっているのだろうか?


 ギルをたたき起こし、久しぶりに朝風呂へ。やっぱり誰もいない風呂って気持ちがいい。土臭いギルをポポル式連射魔法の応用で泡だらけにし、お湯をぶっかけておいた。妙にテカテカと輝く筋肉にわずかばかりの苛立ちを覚える。


 『朝から綺麗になって筋肉も喜んでるぜ!』とあいつはポージングを決めていた。上半身の勝気な筋肉が朝風呂を好むらしい。ちょっと何言ってるかわからない。


 ちなみに、夜の風呂を好むのは足の筋肉だそうだ。こっちは健気なやつが多いとのこと。


 で、なんともなしに風呂を出たら……朝から湯上りロザリィちゃんと遭遇しちゃったぁぁぁぁ! しっとり濡れる髪と赤いほっぺがマジプリティ! 『おそろいだねっ!』って普通に声かけてくれるところとか超キュート!


 どうやらロザリィちゃん、ちゃっぴぃと朝風呂に来ていたらしい。ちゃっぴぃはロザリィちゃんの後ろで腰に手を当てて『きゅーっ!』ってオレンジジュース飲んでた。あいつ、あれで結構おっさん臭いと思う。


 ちょうど都合がいいってことになったんで、朝からちゃっぴぃの乳しぼりに励む。風呂上がりで血行が良かったのか、こないだよりもたくさん取れた。


 最初、ちゃっぴぃは乳しぼりを嫌がったんだけど、『じゃあ、ギルに搾ってもらうぞ?』って声をかけたらすごく素直にロザリィちゃんの膝に乗った。しかも、『きゅぅ……ん♪』俺に媚を売ってくる始末。


 体はよくとも、中身がガキじゃうれしくもなんともない。せめてその乳臭さをどうにかしてからやってほしいものだ。


 なお、露骨に拒否されたギルは、今日も元気に『うめえうめえ!』と風呂上がりのジャガイモを楽しんでいた。たぶん、気にしていないんだろう。


 ただ、乳しぼりのリズムでスクワットを始めるのはちょっといただけない。すげぇ気が散るっていうか、訓練されたポポルやパレッタちゃんでさえヤバいものを見たかのような目で見てくるし。ロザリィちゃんも『いつも以上にはずかしぃ……っ!』って真っ赤になっていてエクセレントプリティだった。


 さて、今日は例の依頼をこなすために午前中からハゲプリンの制作にとりかかる。クラスメイトには各々材料集めに行ってもらい、俺は今ある材料でハゲプリンを作ることに。


 用意しなければならないハゲプリンは全部で2グロス。1グロスが12ダースだから、全部合わせて288個。改めて計算するとさすがに多い。が、ここは俺の宿屋の息子としての腕の見せ所だろう。


 現在手元にある材料はスノーシュガー、クリスタルシュガー、ごろごろエッグ婦人が産んだコーラスバードの卵、ちょびっとだけ残ったクレイジー・クレイジー・ソルトにちゃっぴぃの夢魔の乳。ついでにギル・シュガー。


 残念ながらエレメンタルエッセンスは在庫なし。あとは普通の砂糖や塩で、ハゲプリンに使うにはいささか不向き。


 材料を用意してから、全体のクオリティを均質に保つためには全部の材料を鑑みてからじゃないとダメだということに気づく。さすがにガチ材料をつかったハゲプリンとヘボい材料を使ったハゲプリンが混じっているのは店として問題だ。


 てなわけで、朝頑張ってくれたちゃっぴぃにスペシャルなホットケーキを焼いてあげつつ、俺とロザリィちゃんは製図の課題を片付ける。マジでキイラムがくれた資料をそのまま写すだけだから超らくちん。ちゃっぴぃもホットケーキをたいそう気に入ってくれたようだった。


 午後になると、『またせ、た、な……!』と死にそうな顔のキイラムほか数名の上級生がやってきた。どうやらこの一週間で寝る間も惜しんで材料集めに駆けずり回っていたらしい。


 あの野郎、よほど腹が減っていたのか、ちゃっぴぃがほおばるホットケーキをうらやましそうに見ていた……と思ったら、なんと、ちゃっぴぃが『きゃ!』とか言ってホットケーキを一口分け与えていた。


 『なんて馬鹿な真似するんだッ!?』と思わず怒鳴るももう遅い。キイラムのやつ、『ここに天使がいた……!』とか言ってトリップしてやがった。


 そこからはもうひどかった。キイラムはちゃっぴぃにずっとべたべたし、すっげぇ気持ち悪くニタニタ笑ってた。ちゃっぴぃは新しいおもちゃ(下僕ともいう)ができたのがうれしかったらしく、キイラムの髪をひっぱってケラケラ笑っていた。


 『あとでちょっと教育方針について真剣に話し合おう』とロザリィちゃんに言ったら、『うん……ちゃっぴぃの将来のためだもんね』とロザリィちゃんも真剣にうなずいてくれた。


 さすがにアレは教育上よろしくない。ロリコンをおもちゃに与える親がいったいどこにいるというのか。


 さて、ちゃっぴぃの相手を上級生に任せている間に持ち込まれた材料の検分をする。とりあえず、何があったか箇条書きで書いておく。



・シルクウィングの美卵

・皇帝ニワトリの剛卵

・ドラゴンエッグ

・慈愛の母鳥の卵

・ムーンワルツの月光卵


・至高の花砂糖

・オーロラシュガー

・幽玄の神秘砂糖

・蒼煌の結晶糖

・ミラ・シュガー


・深淵の輝塩

・オーロラソルト

・太陽の炎塩

・天空の夢塩


・木漏れ日の薫香

・ディープグリードエッセンス

・星精の忘れ香

・百獣のスパイス


・魅惑の魔乳

・豊穣富牛の濃縮乳

・エンジェルハート・スウィートミルク

・グランマナミルク

・夢魔の夢溺乳

・マッスルオーガの天然乳



 あまりにもガチすぎる品ぞろえに開いた口が塞がらなかった。マデラさんのところでも使ったことが無い素材がいっぱいある。夢魔の乳より上位どころか、エレメンタルエッセンスクラスのものがいっぱい。クレイジー・クレイジー・ソルトとかコーラスバードの卵なんて目じゃないくらい。


 さすがは上級生。ちょっと見直した。あれだけの短時間でここまでやるとか、実はけっこうすごい人たちなのかもしれない。


 が、せっかく感動していたのに、『いや、あいつらこれ出来ないと単位ヤバいんだよな』というキイラムの一言で現実に戻された。なんでも、再履の人は材料収集の際にシキラ先生に『てめえの単位と天秤にかけろ』と笑顔で言われたそうな。


 材料の検品を行っていたら、そのうち属性処理研究室の人もやってきた。彼らも彼らで発注する手前、材料集めを行っていたらしく、上記のものをごちゃっと持ち込んでくる。


 ぼちぼちウチのクラスのやつらも戻ってきたんだけど、机に広がっている材料を見て目を丸くしていた。クーラスなんか、『これ普通に魔法材料として使ったほうがいいんじゃないか……?』ってドラゴンエッグを見ていたし、パレッタちゃんは『ちょっとだけ! ちょっとだけでいいから!』ってグランマナミルクを舐めようとしていた。


 肝心の持ってきた材料はそれなりのやつ。スノーシュガーとかコーラスバードの卵とかそんなのばっか。材料の質は前回とそんなに変わらない。まぁ、上級生のものと比べろというのは可哀想だろう。


 しかし、みんなが材料を持ち込んだところで(あまりにもうるさいから上級生たちに簡易のクッキーを振る舞ってやった。わがクラスメイトと取り合いになっていた)、どうにも解決しがたい問題に気付く。


 で、そんな俺の不安を読み取ったのか、属性処理研究室の代表のノエルノってきれーなおねーさまと、(今回の件に限り)魔法材料研究室の代表のキイラムが『問題あったのか?』と聞いてきた。


 なので、正直に『材料の質はいいですが、全然量が足りません』と答えた。


 上級生が持ってきたやつ、気合を入れてのはわかるんだけど、量産できるほどないんだよね。単位がかかってるってのはわかるけど、作る側のことを全然考えていない証だ。


 どんなに頑張ったって1グロスギリギリ行けるか……ってところだろう。さすがに気まずかったのか、ノエルノ先輩は『そこをなんとか……ならないよね……』と苦笑いをしていた。キイラムに至っては『女子はダイエット中らしいから男子の分だけあれば事足りる』とかほざいてめちゃくちゃ呪われていた。


 その点、うちのクラスは『質はそれなりだけど量はいっぱい』を意識して集めてくれたからわかっていると思う。これのおかげで、最低限プリンとしての体裁は保つ。


 そのことを伝えると、キイラムからは『実際ちょっとくらい質が落ちてても問題ないから!』、ノエルノ先輩からは『すっごくおいしいプリンなんでしょ? もうおやつを我慢できないんだよ……!』と、多少劣化していてもいいから数を揃えてくれと懇願される。


 が、当然のことながら俺は頷かない。それを頷けるわけがない。


 そう、そんなのは決してハゲプリンとは呼べない代物なのだ。同ランクの素材を使ってこそ真にバランスの取れたハゲプリンができるわけで、どんなに材料の質がよかろうと、ただ数だけを揃えることを優先して材料同士のバランスを考えなければ、出来上がるそれは低ランクハゲプリンにも劣るのだ。


 そして、卸した商品に高ランクと低ランクのハゲプリンが混じるという、店としてやってはいけないことをやってしまったら、マデラさんに何をされるかわかったものじゃない。


 いや、たとえマデラさんが許してくれようと、俺の宿屋の息子としてのプライドがそれを許さない。俺の血肉は、全力をもってそれを拒否するだろう。


 結局、『俺はあなた方の注文に真摯に答えたいだけです』と何度も説き伏せたら、『じゃあ、先生と相談してまた明日来る。クッキーだけはこのままよろしく』ということになり、上級生は帰って行った。


 で、クッキー焼いて夕飯喰ってクッキー焼いて風呂入ってクッキー焼いて雑談してクッキー焼いて今に至る。ロザリィちゃんが手伝ってくれたとはいえ、クッキーセット4ダースもなかなかキツイ。


 しかも、俺ってばよせばいいのに無駄にバリエーションを増やしたスペシャルなセットにしちゃったから、余計にタチが悪い。宿屋の息子のプライドが恨めしいぜ。


 でも、ずっとロザリィちゃんと作業ができて幸せでした。ひゃっほう。


 ギルは今日も大きなイビキをかいている。こいつ、一番最後にミーシャちゃんと教室にやってきて、



・覇王天鳥の夢想卵

・極光の霊星糖

・メテオライトソルト

・ワルプルギス・スパイス

・堕天使の聖愛乳



 ……なんてものを大量に持ってきた。さすがに全部を賄いきれるほどではなかったとはいえ、これだけのものをあれだけ用意するのは非常識を通り越して不可能なレベル。上級生たちでさえ『それはプリンにするなぁっ!』って言ってたくらいだし。もちろんプリンにするけど。


 ちなみに、全部『筋肉が導いてくれたおかげだぜ!』とのこと。立ちふさがる敵は全部筋肉でぶっ飛ばしてきたらしい。ミーシャちゃんは『さすがに死を覚悟したの……』って憔悴しきってつぶやいてたけど、いったいどこに探索に行ってたのだろうか?


 予想以上に長くなった。文章もちょっとおかしいかもしれない。さっさと寝ないと。ギルの鼻にはちょろまかした太陽の炎塩を詰めてみた。グッナイ。

20151007 誤字修正

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ