177日目 襲来のキイラム
177日目
ギルの筋肉がいつにもまして立派に。どうやらあの善人茶、効果増幅剤が仕込まれていたらしい。キイラムは俺を何だと思っていたのだろうか。
ギルを起こして食堂へ。今日はちょっと趣向を変え、トーストにウィンナーとスクランブルエッグをはさんで食べてみた。ウィンナーのジューシー具合と卵の甘みがマッチしてなかなかにデリシャス。手作り感あふれるところも地味にポイントが高い。
朝からエクセレントプリティなロザリィちゃんが『私にも作って♪』と目をぱちぱちしてきたので気合を入れて作る。『おいしーっ!』ってほおばる姿がマジ最高。俺、ロザリィちゃんの愛の奴隷になりたい。ロザリィちゃんのそばにいられるならなんでもいいや。
ギルはいつも通りジャガイモ。『うめえうめえ!』って相変わらずうまそうに食っていた。これ、わざわざ書く必要があるのだろうか。
なお、ちゃっぴぃは今日も『きゃーっ♪』とか言って俺の膝に乗ってきて、ウィンナーとスクランブルエッグがたっぷり挟まっている柔らかくておいしいところを喰っちまいやがった。
なんであいつは一番おいしいところだけかっさらうのか。しかも、俺が食っているやつしか標的にしないっていうね。新しいのを一から作ってやっても興味を示さないし。胃袋の容量的な問題だろうか?
さて、朝食後にさっそくキイラムがテストの過去問、あと先代たちが今までためてきた実習レポートと製図の課題の資料を持ってきてくれた。昨日の今日でずいぶん仕事が早いなと思ったら、『やれることはやれるときにやっとかないとマジで死ぬから』と事もなげに言われる。
あいつ、ロリコンなことを除けば普通に優秀っぽい。仕事が早いやつって結構好きだ。あれだけまとめるの、なかなか大変だったろうに。上級生ってみんなこうなのだろうか。
肝心の資料だけど、実習レポートのほうは考察内容や全体構成についてが書かれていた。何も考えずに写す……ってのはさすがにだめだけど、考察の指針があるだけで面倒事の八割がたは片付いているようなもん。あとは独自にレイアウトを考え、文章の表現を変えるなどしてオリジナリティを出せばいいってかんじ。
製図のほうはお手本と書き方についてのアドヴァイスが載っていた。製図って書き方がわからなくて詰まることが多いから、これさえあればあとは全部作業と言っていいだろう。
要求しておいてなんだけど、ここまで有用なものをもらえるとは思わなかった。マジでこれからの宿題全部片づけたようなものと言っても過言じゃない。我ながらいい仕事をしたと思う。
さて、早速その資料を用いて製図課題を片付けていく。『なんか懐かしいなぁ……』とか言いながらキイラムはロフトでゴロゴロし始めた。なんで普通にくつろいでいるのかと尋ねたら、『宿題のサポート要員として派遣されたからに決まっているだろ?』と当たり前のように返される。
ありがたいっちゃありがたかったけど、ミーシャちゃんやちゃっぴぃを見てだらしなく笑うのはいただけない。もしかしなくても、あっちは建前で本音はこっちなのだろう。『変な真似したらギルぶつけんぞ』って言ったら一瞬でキリッとしてマジでビビった。
マジで恐ろしいことに、キイラムは普通に優秀だった。製図の宿題も実習レポートも質問したら流れるように答えを返してくれる。教え方もかなりわかりやすく、ギルにマギクロメータの使い方を完璧に覚えさせ、さらにはパレッタちゃんを『こやつ……やりおる……!』と感心させたといえば、そのすごさがわかるだろう。
で、クラス全員、おやつの時間までには完璧に宿題を片付けることに成功する。キイラムのやつ、出来上がった宿題のチェックまでしてくれた。『再提出って面倒じゃん? これくらいのサービスは当然だって』って普通に言ってたけど、全員分をあの短時間でチェックするって先生と同じくらい仕事量あるよな?
さすがにみんなキイラムを見直す。上級生マジすごい。が、『どうしてそんなに教えるのがうまいの?』とのポポルの問いに、『お兄ちゃんすごい! ってほめてもらうために勉強しまくったからだ』と答えたことで尊敬の念は消えうせた。
しかもその後、『で、夢魔の乳しぼりはいつやるんだ? 俺今日そのために来たんだけど』とだらしなく笑う。せっかく上がった好感度が一気にどん底に落ちた。ミーシャちゃんからの冷たい視線も、キイラムは普通に喜んでいた。やっぱ魔系ってクレイジーだ。
夕飯食って風呂入って雑談して今に至る。結局、おやつのハゲプリンだけ食わせてキイラムには帰ってもらった。あいつの前でちゃっぴぃの乳しぼりとか絶対に許さない。
『遠慮するなよ!』とか言って最後までしつこかったけど、わがクラスメイトは一致団結してちゃっぴぃを守ろうとしてくれて不覚にも泣きそうになった。
あ、最終的にキイラムを退散させたのはギルね。どんだけ女子が冷たいまなざしを送ってもピクリともしなかったのに、ギルが笑顔でポージングを取りつつ迫ったら、あいつは雷鳴を聞いたラットマンみたいに逃げ帰って行った。
大きなイビキをかくギルの鼻には、少しの感謝を込めて豊穣結晶を詰めておいた。来週のどこかでちゃっぴぃの乳しぼりを敢行したい。おやすみなさい。
※準備はできたか? 俺は出来てる。おっと、魔法廃棄物はおよびじゃねえ。乳臭さが抜けてから出直してきな!




