174日目 魔法構築学:強制魔導加工と侵圧魔導加工
174日目
怨念が部屋にこびりついている。『ウォォァァ……!』と悍ましいうなり声も。とりあえずハタキで叩いてキレイキレイしておいた。超スッキリ。
ギルを起こして朝食へ。今日はスクランブルエッグにたっぷりのケチャップをかけて楽しむ。元の素材がいいのか、酸味と甘みが程よく効いていてなかなかデリシャス。俺が思うに、隠し味として何かを入れている。今度ゆっくり探ってみよう。
もちろん、ギルは『うめえうめえ!』とジャガイモのケチャップかけをうまそうに食っていた。あいつ、本当に味がわかっているのだろうか?
気分よく食べていたら、やっぱりちゃっぴぃが『きゃーっ♪』とか言いながらケチャップだけを舐めだした。お口の周りが真っ赤でたいそうビビる。
しょうがないので口周りをふいてやり、栄養バランス的に考えてスクランブルエッグそのものも口にぶち込んでおいた。なぜか執拗にひっかかれたんだけど、なんでだろうね?
あと、ケチャップまみれになった六匹のヒナをみてフィルラドが『うぉぉぁぁ!?』と気絶しそうになっていた。ケガをしたと勘違いしたらしい。アルテアちゃんが『まさかここまでバカだとは……』ってぼやきながらヒナたちをキレイキレイしていた。
さて、今日の授業はシューン先生の魔法構築学。やっぱりローブはズボンにインで、出席取るのががめちゃくちゃ長い。出席の時間だけでジオルドと○×ゲームを七回もやってしまった。ちなみに俺の五勝二敗だった。
内容は強制魔導加工と浸圧魔導加工について。なんでも、魔法の加工法は魔法刃と対象の魔力塊をどのように干渉させるかで分類することができて、これがなんかいろいろ大事らしい。ぶっちゃけそうたいした意味もないと思うけど。
とりあえず、いつも通りにその概要をメモしておく。
・強制魔導加工
魔法刃の運動軌跡を制御し、魔力塊へ魔法刃を強制的に投入することで行う加工。このとき魔力塊は何らかの方法(多くは魔道具)により回転、あるいは運動をしていることが前提であり、それによって生じた相対速度を用いて加工は行われる。原理上、その仕上げ精度は加工に用いた魔道具の精度に依存する。
・浸圧魔導加工
魔法刃を魔力塊に押し付け、刃と魔力塊に干渉を起こさせることで行う加工。このとき魔道具は使用せず、使われる魔法刃は蝕造に用いられる砥粒であることが前提である。その性質上、現段階で浸圧魔導加工は砥粒を用いた加工しかない。
なんかすっげぇざっくりしているし、結局何が言いたかったのかよくわからん。しかも、たったこれだけのこと言うのにシューン先生はものすごく時間をかける。回りくどいってレベルじゃない。つーか、一つしか加工法が分類されていないのに、わざわざこんな風にジャンル分けする必要がどこにあるというのか。
が、『今日の講義じゃ意味ないように感じるけど、次回の原理の説明に不可欠だからよく覚えておきなさい』ってシューン先生は言っていた。魔法加工において知らなきゃいけない原理らしい。だったらそのまま今日やれよって思った。
なお、相変わらずザントマンの砂嵐が吹き荒れている。なんでも冗談抜きに去年と全く同じ内容、同じ板書らしく、再履の上級生たちは普通にスヤスヤしていた。それでいいのか。
ポポルとミーシャちゃんも仲良くギルに寄りかかってスヤスヤしていた。筋肉が固いからか、すごく寝づらそうだったけど。あと、ギルも俺の動きをトレースしたまま眠りこけていた。あいつ、なんで居眠りの時はイビキをかかないのだろうか。
そうそう、途中で教室にハチが入ってきたんだけど、誰も慌てることなくギルが神速のデコピンで遠距離攻撃して倒していた。眠りながらも的確に敵を倒すその様子に戦慄を隠せない。特別驚きもしない上級生たちはもっとヤバい。
夕飯食って風呂入って雑談して今に至る。寝る間際、ロザリィちゃんが『今日はあんまりしゃべれなかったね?』ってほっぺにちゅってしてくれて超幸せ。ぷるぷるの感覚がいまだに残っている。もうロザリィちゃんと出会う前の生活を思い出せない。
あれだけ寝ていたというのに、ギルは今日も大きなイビキをかいている。こっそり回収しておいたハチの死骸を鼻に詰めた。グッナイ。




